「現代の軍事作戦における「椅子の男」の活躍ぶりは興味深いが、疑問を抱かざるを得ない場面も多い」ランド・オブ・バッド tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
現代の軍事作戦における「椅子の男」の活躍ぶりは興味深いが、疑問を抱かざるを得ない場面も多い
現場での活躍を「椅子の男」が後方から支援するというパターンは、スーパーヒーローものやスパイ映画ではよくあるものの、それを、現代の軍事作戦として描いているところが目新しいと言えるだろうか?
実際、MQ-9無人攻撃機は、敵地に潜入した特殊部隊の周囲を警戒するだけでなく、強力なミサイルによって近接航空支援を行い、あるいは孤立無援となった兵士を救出地点に誘導するなど、現場の人間にとって、実に頼もしい存在として描かれている。
生死をかけた激しい戦闘を繰り広げ、敵から酷い拷問を受ける最前線の兵士達の切羽詰まった状況と、バスケットボールのテレビ中継にうつつを抜かし、労働時間の制限を気にかけ、帰宅途中にスーパーマーケットでのんびりと買い物をする無人機のオペレーター達の呑気な様子との対比も面白い。
その一方で、MQ-9が、ヘリによる救出地点に多数の敵兵(トラックも!)が現れるのを見落としたり、追尾していた兵士が敵に捕らえられるのを認識できなかったりと、その性能やオペレーターの技量に疑問を感じるような場面があったのは気になった。
ラストの敵施設に対する爆撃にしても、1回目の爆撃の混乱に乗じて捕らえられている仲間を捜索する作戦だと思っていたら、爆撃の前に施設内に乗り込んで行ってしまって、「えっ、どうなってるの?」と驚いた。
激しい銃撃戦や格闘戦を見せ場にしたかったのかもしれないが、これでは、無謀な「突撃」にしか見えないし、結果的に、2回目の爆撃の後に地下に捜索に行っていれば、仲間やCIAの「アセット」を無事に救出できた上に、特殊部隊のリーダーも死なずに済んだのではないだろうか?
無人機を運用する空軍基地にしても、外部からの電話が設置されている場所が、電話番が待機している当直室や作戦室ではなく、非番の隊員達がテレビを観ている休憩室か娯楽室であったのは、いくら何でも非現実的で、おかげで、爆撃中止の要請が伝わるのかどうかで大いにハラハラさせられたものの、余りにもお粗末な描写に対して、空軍からクレームが寄せられはしなかったかと心配になってしまった。
冒頭で出てきたフルーツ味のコーンフレークや出産間近という状況(電話での連絡)も、てっきり何かの伏線だと思っていたのだが、結局、回収されずじまいで終わってしまったのも、物足りないと言わざるを得ない。
何よりも、せっかく世代や立場を超えて友情と信頼を育んだ兵士と無人機のオペレーターが、直接、対面して、感謝の気持ちを伝えたり、労いの言葉を掛けたりするシーンが無かったことは、バディ・ムービーのエンディングとして、不完全燃焼に思えてならなかった。
ご指摘、ありがとうございます。
出産間近のはずだったのに、呑気に買い物の指示を出している奥さんや、せっかく捕虜の安全に配慮して、地上の施設だけを破壊してくれた1回目の爆撃を「無駄」にしてしまった主人公達には、敢えてスリルとサスペンスやアクションを楽しませてくれたんだと、感謝したくなってしまいますね!
電話の伏線回収は出来てますよ。オペレーター婦人の出産連絡云々は基地待機兵のスポーツ観戦中のずさんな対応を見せたので有って、爆撃中止が伝わるのかに繋がるので出産についての回収が目的では有りません。アメリカはアメフト、バスケ、野球には熱狂する国民性なので基地待機兵には良いリクリエーションだで通用しているのでしょう。多々の作品で学生時代にスポーツをした経歴を持つ兵が出てきますし。ただ、試合に集中する為に受話器を外すのはやり過ぎですが。爆撃を先にと言うのはテロリスト以外の救助者までも無差別に殺してしまいかねないからですね。先に潜入しないと何処に居るか分からない捕虜は助けられないです。