劇場公開日 2024年6月28日

「創作の原風景へ切り込む」ルックバック N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0創作の原風景へ切り込む

2025年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

原作の漫画が公開されたさいは一読するも、ピンとはこなかった。
映画化されることで第3者の内臓を通し再編されることとなり、ようやく腑に落ちる。

本作のキモは間違いなく、藤本が起きた事件に対して「自分のせいだ」と吐露するところだろう。失って初めて相当に頼っていたことを思い知る。技術的にも、漫画家という藤本を作り、その存在を無条件に肯定する、信じる存在としてもなくてはならない相手だった。

だがこの物語は、二人だけの狭い関係の話に終始してはいないと思える。
だれだろうとどんなものでも創作は究極、一人で完結できず、逆に言えば究極、たった一人の存在が、何者かしらん人間が生み出し続けるための源になり得る、と語っているように思えてならない。
数え切れないファンの後押しではなく、最初たった一人、その一人が何者でもないお絵描き好きを「作家」とみなした瞬間より。

それを原風景というなら本作は、
あまりモチーフにされない創作の原風景に迫った作品だと感じている。

また邪推ながら某放火事件を彷彿とさせるくだりがあることから、この原風景は犠牲者を弔うための花束、そんな意味もあったのだろうかと遠くを見つめる。

作画の丁寧さが凄まじかった。セリフなしでも見続けられそう。

N.river