「作品内容をスタッフが体現した稀有な作品」ルックバック あげ玉さんの映画レビュー(感想・評価)
作品内容をスタッフが体現した稀有な作品
作画が本当に素晴らしい。人の手が感じられる線で、人物も背景も(!)軽やかに自在に緻密に動く。
藤野と京本が出会うシーン、そこから藤野が雨の中をスキップするシーン。大きな多幸感となぜかとめどもなく溢れてくる涙。なんとか叫び出したくなるのをこらえたが、自分の感情がコントロール不能になる。
後半も作画のクオリティーは衰えるどころかさらに深みを増して、主人公たちが運命にあらがう姿を丹念に描く。
河合優実と吉田美月喜の演技も本当に素晴らしい。セリフは少ないがひとつひとつが磨き抜かれて繊細。2人の成長と立場の変化、喪失と再生、すべて見事に表現していた。
音楽が画面のクオリティーに追いついていなかったのが唯一残念だったところ。
押山清高、井上俊之をはじめとするスタッフは、作中の藤野と京本のように「とにかく描く」を体現し、見事に原作コミックをさらに深化させた作品を創造した。まがうことなき傑作だと思う。
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