劇場公開日 2024年6月28日

「良い作品だったが、違和感も残る」ルックバック タブローさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良い作品だったが、違和感も残る

2024年6月30日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

原作未読だったが、予告を前に見てからずっと楽しみにしていた。
そして、予想通りすごく良い作品だった。
漫画の絵がそのまま動いている感じがして、序盤から作品の世界に引き込まれた。
そして何よりも、儚い二人のエピソードが1時間の中に凝縮されていたように思う。
藤野が描き続ける理由に涙する映画。

雨の中で妙な走り方をするシーンは、いつか真似してみたい。
ずっとライバルだと思ってた京本にあんなこと言われたら、そりゃスキップしちゃうよね。
ひたすら京本に会いたくなる映画だった。

良い作品だった、良かったけど…、おそらく京アニの放火事件をモチーフにしている感じだけはどうしてもしっくりこなかった。
犯人の動機を聞く限り、間違いなく京アニの事件を元ネタにしているはず。
わざわざ、その設定を使う必要があっただろうか?
普通に京本が不慮の事故で他界する形で足りなかったのだろうか?
わざわざ京アニの事件を引っ張ってくる必要はないと思った。
というか、京本を殺す必要もなかったのではないかとすら思う。
この映画で泣くというのはほとんどの人が、かつて世界の中心で愛を叫ぶを観て泣いた、と言っている現象と同じである。
つまり、主要人物の理不尽な死によって感動するというものだ。
この楽しみ方を、私は決して否定はしない。
その話がフィクションである限り、悲劇を観た後のカタルシスによって快感を得られるのは昔から使われている手法だし、人の死というのはそれだけ他人の心を動揺させる大きなものがあるからだ。
劇的なフィクションと相性がよいのだ、それは否定しない。
しかし、それは物語が完全にフィクションだから許される。
しかし、これは実在の事件をモチーフにして、それを消費されるエンタメにしている感じがどうしてもしてしまったのだ。
変に実在の事件をモチーフにする必要性が感じられなかったので、星四以上はつけられない。
前半の青春描写が秀逸だっただけに、大変惜しい作品である。

タブロー