劇場公開日 2024年6月28日

「声の演技が下手」ルックバック Melonさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0声の演技が下手

2024年6月29日
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鑑賞方法:映画館

良かったところ: 作画

悪かったところ: 藤野役の演技

作画が良かったのに、藤野役の声の演技が好きではありませんでした。
滑舌や感情表現などの基本的なことはできていたとは思いますが、年齢を演じ分けられていませんでした。
普段の河合優実さんの声にしか聞こえず、すっと物語の中から現実へと意識が引き戻されてしまいました。
最近になって飛びついた業界人も世間も、河合優実さんなら何でもかんでも無条件に大絶賛しますが、彼女をキャリア初期から見てきた者からすると、彼女は良い役者ですが完全無欠ではなく不得意分野はあります。その一つが、声の使い方です。

素人っぽい自然な演技が欲しいのはわかりますが、声優さんにもちゃんとオーダーして指示を出せば、自然な演技はできるはずです。特に、この作品は、小学生から社会人までを演じなければならない。その技術を持つのはプロの声優です。それなのに、プロとして研鑽を積んで来た人の技術を軽視して、訓練を受けたこともない未経験者に仕事をさせてしまった...その姿勢がとても残念です。
頑張ったであろうことは認めますが、未経験者はやはり能力が低いなと実感しましたし、その未熟な能力で観客から料金を取ろうという魂胆が不快でした。このキャスティングをした人は、お客さんからお金を貰っていることの意味を分かっているんでしょうか。未経験者を使わず、きちんと研鑽を積んで確かな技術を身につけているプロの仕事を提供して下さい。

アニメーターは、自分の仕事はプロフェッショナルで未経験者にはできない崇高な仕事だと主張するのに、共にものづくりをして来た声優の仕事はプロフェッショナルとして認めず軽視して未経験者に割り振るのは何故なのでしょう。アニメーターの描く動画はわざとらしいから不要だと言われ、自然な絵が欲しいからと、動画の仕事が未経験の洋画家や漫画家やイラストレーターに動画を描かせることが横行したら、アニメーターたちは文句を言うのではないでしょうか。何故声の演技だけは他分野の者にさせるのか。その姿勢に不信感を抱きました。

俳優は、オファーされたら、やったことがないから出来ないとは言えず、チャレンジしてみたいので引き受けるでしょう。だから、俳優のせいではなく、制作者の意向なのだと思います。
原作者も制作陣も観客も、皆演技を絶賛していますが、私の感性が間違っている訳でもありません。河合優実さんの演技は良くなかった。作品の質を落としていた。これが私の感想です。いくら変声期の無い性別とはいえ、小学生、中学生、高校生、社会人、その声が同じ訳はないので、私は残念だなと感じました。ちゃんとした声優さんの演技で見たかったです。

河合さんの実写俳優としての演技力は否定しません。この人はデビュー以来何をしても必ず絶賛される人なので、今後はありとあらゆるものに携わって来るでしょう。そして、その全てにおいて出来不出来に関わらず必ず絶賛されてしまうでしょう。アニメにもこれをきっかけにまたキャスティングされてしまうかもしれません。しかし、声の演技の訓練を積んでいない人なんです。過去にナレーションや朗読などもしていますが、いずれも拙く、作品本来の趣旨や魅力が阻害されるような出来栄えでした。この人は、外見や動作に魅力のある役者で、実写でこそ才能が発揮される人です。それなのに、人気にあやかって声優に配役されてしまい、ルックバックの藤野に彼女の色が付いてしまったことが、原作が好きだった私は観ていてとても悲しかったです。本当に残念でたまりませんでした。人気や話題性ではなく、きちんと声の演技に真摯に向き合って鍛錬して来たプロフェッショナルな方を起用すべきでした。
藤野の大人時代を河合さんが演じる実写なら、似合うと思うので、観てみたいです。

Melon