「声の演技が下手」ルックバック かおるさんの映画レビュー(感想・評価)
声の演技が下手
良かったところ: 作画
悪かったところ: 藤野役の演技
作画が良かったのに、藤野役の声の演技が好きではありませんでした。
滑舌や感情表現などの基本的なことはできていたとは思いますが、年齢を演じ分けられていませんでした。
普段の河合優実さんの声にしか聞こえず、すっと物語の中から現実へと意識が引き戻されてしまいました。
素人っぽい自然な演技が欲しいのはわかりますが、声優さんにもちゃんとオーダーして指示を出せば、自然な演技はできるはずです。特に、この作品は、小学生から社会人までを演じなければならない。その技術を持つのはプロの声優です。それなのに、プロとして研鑽を積んで来た人の技術を軽視して、訓練を受けたこともない未経験者に仕事をさせてしまった...その姿勢がとても残念です。
アニメーターは、自分の仕事はプロフェッショナルで未経験者にはできない崇高な仕事だと主張するのに、共にものづくりをして来た声優の仕事はプロフェッショナルとして認めず軽視して未経験者に割り振るのは何故なのでしょう。アニメーターの描く動画はわざとらしいから不要だと言われ、動画の仕事が未経験の洋画家や漫画家やイラストレーターに動画を描かせることが横行したら、アニメーターたちは文句を言うのではないでしょうか。何故声の演技だけは他分野の者にさせるのか。その姿勢に不信感を抱きました。
俳優は、オファーされたら、やったことがないから出来ないとは言えず、チャレンジしてみたいので引き受けるでしょう。だから、俳優のせいではなく、制作者の意向なのだと思います。
原作者も制作陣も観客も、皆演技を絶賛しているので、私の感性が間違っているのかもしれません。それでも、いくら変声期の無い性別とはいえ、小学生、中学生、高校生、社会人、その声が同じ訳はないので、私は残念だなと感じました。ちゃんとした声優さんの演技で見たかったです。
河合さんの実写俳優としての演技力は否定しません。この人はデビュー以来何をしても必ず絶賛される人なので、今後はあらゆるものに携わって来るでしょう。しかし、声の演技はまだ上手くない人です。過去にナレーションや朗読などもしていますが、いずれも拙く、作品本来の趣旨や魅力が阻害されるような出来栄えでした。この人は、外見や動作に魅力のある役者で、実写でこそ才能が発揮される人です。それなのに、人気にあやかって声優に配役されてしまい、ルックバックの藤野に彼女の色が付いてしまったことが、原作が好きだった私は観ていてとても悲しかったです。藤野の大人時代を河合さんが演じる実写なら、似合うと思うので、観てみたいです。