「Light song」ルックバック ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Light song
タツキ先生の短編のアニメ映画化ということで、そりゃ観にいかにゃならんと初日に向かいました。
特典はルックバックのネーム本です。貴重すぎるんですがこれ、本当に良いんですか?と受け取った時思いました笑
原作の雰囲気、タツキ先生の唯一無二の絵柄をここまでアニメーションに仕上げてくれるなんて…。
余分なものは一切ない、原作の濃さをそのままに1時間満たずの時間で表現しきるというアニメーションもとい映画の極限を体現しているようで、映画ヲタクとしても歓喜ものでした。
作中の4コマ漫画のアニメ化もこれまた藤野の絵柄を反映して動かしているのが本当にお見事で、隕石の4コマの世界をここまで広げられるのかとアニメーションの強みをマシマシに感じられました。
漫画を描いている時のアクションはそこまで大きくないのもあって、反動で藤野が帰り道の水溜りを踏みながらスキップするシーンだったり、京本と藤野の2人のお出かけで走りまくるシーンだったり、殺人犯を思いっきりカラテキックしたりするシーンだったり、"動"の部分はガツンと動くもんですから、そっちの表現もこのチームは上手いのかと舌が唸りました。
ルックバックの劇中作のシャークキックの掲載順位の推移がこれまた面白く、チェンソーマンもこんな感じで浮き沈み激しかったけど、後半になるに連れて上位に君臨していった流れがフラッシュバックして、あの頃のジャンプに思いを馳せてしまいました。
改めてクセの強い作品とはいえど、ジャンプの一番後ろに載ってた時期があったのは今考えても想像できないくらい大きい作品になったなぁって思いました。
原作は読んでいたので、衝撃の展開自体は知っていたはずなのに、それでも突然世界が真っ暗になったような感覚になる大学の襲撃シーンはやはり衝撃的でした。
そこから描かれるifのお話への持っていき方も素晴らしく、扉越しに伝う4コマで影響され、京本は絵の世界に飛び込むために外の世界へ向かうという世界線ではまた違う物語になり、そこでも2人はすれ違っているという偶然のような奇跡のような出会いの様子は、劇伴の良さも相まって感極まってしまいました。
タイトル回収の仕方もやはり粋で、それすらも始まりの4コマで回収していっちゃうもんですから、何から何まで緻密に作られていましたし、それに応える映像やシナリオを練った製作陣には頭が上がりません。
そこから再び漫画家として歩み出す様子をエンドロールでじっくりと見せてくれるのも良すぎて、こんなに優しく包み込んでくれるのかと何度目かの感動を食らいました。
河合優実さんと吉田美月喜さん、お二人とも声優初挑戦ということらしいんですが、これまた表現とキャラクターがリンクしまくっていて凄かったです。
悲しみに明け暮れる様子だったり、中身のヤンチャさが滲み出てるところだったり、タツキ先生のキャラクターがそのまま飛び出してきたんじゃないかってくらい自然で、役者としての生き様も同時に味わえて幸せでした。
60分とは思えない濃密な映画体験でした。
自分も藤野が4コマを描いていた時期に漫画家を目指していて、スケッチブックに書いてあった虫と人間の融合漫画を久々に見返して懐かしい気持ちになりました(なぜかツギハギだらけのキャラが多いのはご愛嬌)。
全ての創作に感謝しながらこれからも共に生きていくんだろうなと嬉しくてスキップしちゃったりしたり。
鑑賞日 6/28
鑑賞時間 12:20〜13:30
座席 G-2