「さらばMCU」デッドプール&ウルヴァリン がばちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
さらばMCU
1作目の『アイアンマン』に出会って16年。
ここまでMCU作品は全て観て来た。原作を知らずとも、それなりに知識や伏線も蓄積したし、それらが後作で回収、昇華された時の快感を散々味わった。
リアタイで気付けなかった要素を、後日有識者の考察サイトで穴埋めして行く作業は、『三国志』の演義と正史を読み比べているような楽しさだった。
非マーベルファンなりのMCUとの蜜月。
ところが最近、手放しで楽しめなくなって来ている。
膨大になって来た過去作、マルチバース化による物語の立体化、サブスクドラマによる多岐化、そしてアラフィフに差し掛かる我が脳の記憶容量。
逆にそんなお年頃だからこそ、今作『デッドプール&ウルヴァリン』はとても楽しめた。いわゆる「過去の人」になり、それでもクセのある生き方しかできない登場人物達が、己と向き合い、時に力を合わせて事態を打開する。ある種の自己肯定の物語。あるはずのない「上」や「下」を創作して勝手に板挟みになって苦しんでいる身には、とても眩しく、そして癒しの作品だった。
その流れから、終盤で主人公と敵のやり取りの中でマルチバースについての言及があった。自虐混じりではあったけど、個人的には中々うなづける所もあって、なんとなく己のMCU遍歴の総括にも感じて、心の中に大きな「区切り」が打ち込まれた気分だった。また、エンドロール後の件に関する考察も、識者のサイトを見るにつけて自分が置いてけぼりになったように感じてしまい、その気持ちに拍車がかかってしまった。
勿論、このシリーズを今後一切見ないというわけではないけれど、『シャン・チー』や『モービウス』クラスはスルーする位に肩の力を抜いて、気軽に楽しんで行けたらと思うし、その一区切りが、シリーズ屈指に心に響き楽しめたこの作品だった事は、とても感慨深いのでした。
それにしても、メタ的なジョークや、下ネタなど、面白いと感じられるかどうか本当にスレスレのラインで踏みとどまっている感じ。一歩踏み間違えると「やり過ぎ感」が先に立ってしまう、そのギリギリを攻める塩梅が絶妙。過去作を知らずとも、制作側のセンスとバランス感覚を味わうだけでも十分楽しめる作品だと思います。