「見たか、MCU! これがデップーと20世紀フォックスの仲間たちだ!」デッドプール&ウルヴァリン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
見たか、MCU! これがデップーと20世紀フォックスの仲間たちだ!
やれやれ。困っちゃうぜ。
俺ちゃんがちょっと居ない間に、ヒーロー映画の人気がダダ下がり。こんなんで俺ちゃんの新作コケたらどうしてくれんだよ?
大体、ヒーロー映画作り過ぎなんだよ。MCUだかDCだかごっちゃになって、ドラマシリーズも見ないと話についていけないなんて、そんなの見てぇ?
俺ちゃんみたいにたまにテキトーにやってりゃいいんだよ。
そしたら、ネズミの国のハッピーランドが金に物を言わせて俺ちゃんと組みたいって言ってきたわけ。
最初はその気は無かったけどさ、俺ちゃんスタイルで好き勝手やっていいし(ネズミの国のハッピーランドでお子ちゃま見ちゃダメ!)、ギャランティーもいいし。
何より、ヒーロー映画危機の中、それを救えるのは俺ちゃんしかいないっしょ。
アンチヒーローがヒーロー映画を救う。最高の筋書きってもん。
…って事で、皆、待たせたね。いよいよ俺ちゃんがMCUに殴り込み! 仲良しこよしのあのワイルド爪ヒーローとバディ。ド派手にやったるぜ!
待望のデップー3。色々あった製作の経緯は上記の通りで、始まってすぐデップーがサクッと紹介もしてくれるので、割愛。
もうとにかく、ネタの宝庫! 見所や話題満載!
その最たるはあのヒーローとの遂にの“共演”だが、順を追って。
前作で“サノス”が使っていた小型タイムマシンで好き勝手に歴史を変えたデップーことウェイド。
今もお気楽&ハッピーにやっているかと思いきや…、
デッドプールを引退。歴史を変えて生き返った元X-フォースの普通のおっさん、ピーターと車販売員。
友人や仲間の“家族”に囲まれての誕生日。
一見幸せそうに見えるが…、ヴァネッサとは破局。彼女を生き返らす為に頑張ったのに、驚き…。
ある就職活動を。アベンジャーズの面接。
ハッピーが面接官。“あの人”は来なかったけど。
これまでの活躍は評価されたものの、失格。真のヒーローは自分の為ではなく、他人の為に犠牲にもなれる。その点、君は…。ヒーローじゃないハッピーに苦言される。
平穏でいつもと変わらぬ調子。が、本当の胸中は…。
そんな彼の前に現れたのは…
TVA。MCUのドラマシリーズ『ロキ』に登場するマルチバースを監視する時間変異取締局。
上級局員ミスター・パラドックスからある仕事が。
MCUを救う!…じゃなくて、世界を救う。
ウェイドが居る時間軸の世界に終わりが近付いている。ウェイドが歴史を変えたから…?
いや、あらゆる時間軸には“アンカー”と呼ばれるなくてはならない存在がいる。この時間軸のアンカーこそ、ウルヴァリンことローガンだった。
ご存知の通りローガンは壮絶な最期を遂げた。自らを犠牲に、他人を救う為に。THEヒーロー!
そのローガンの死により時間軸の力が弱まり、行く行く終わりが…。
不要な時間軸を処分するのがパラドックス。その仕事ぶりで出世も…。その通り、コイツ嫌な奴。
消されてたまるか! “ここ”には大切な家族がいる。
世界を救う為に何とかすればいいんだろ? それなら話が早い。どっかの時間軸からウルヴァリンを連れてくればいい。
これが今回の“共演”の話の発端。
ウルヴァリンを探してマルチバースを幾千里。
時空移動装置であらゆるマルチバースを行き来して、しっちゃかめっちゃかにして、
TVAに追われて、ディズニーになって早々血みどろアクションで返り討ちして、
ローガンの墓を掘り返したりもして…
様々なマルチバースのウルヴァリンが登場。
やっとまともなウルヴァリンを見つけた。飲んだくれだけど…。
ところがパラドックス曰く、このウルヴァリンは全マルチバースの中でも最もダメなウルヴァリン。
本人も話したがらない落ちぶれた理由。その過去…。
パラドックスによって二人は時間軸から弾き出されてしまう。行き着いた先は…
前2作で散々ネタにしていたウルヴァリン。遂に本当に登場! 演じるは勿論、ヒュー・ジャックマン。
でも、『LOGAN/ローガン』で…。
今は何でもかんでもマルチバース。あの感動を返せ!…って声もあるだろうけど、まあマルチバースのウルヴァリンって事で。
何よりヒューのカムバックが嬉しい。
共演や共闘は勿論、誰もが見たかったガチンコバトルも。
デップーは刀や銃で、ウルヴァリンはアダマンチウム製の爪で。片や過激、片やワイルド。しかも両者不死身。
新戦場ディズニーで繰り広げられるバイオレンスバトル!
様々なシチュエーションやユニークな趣向を凝らして。時にはカーセッ…じゃなくて、車の中でも。
減らず口や皮肉、ぶっきらぼうな物言い。掛け合いも。
喧嘩するほど仲がいい。…いや、デップーはフレンドリーに接するけど、ウルヴァリンは明らかに呆れうんざり。
そんな二人で窮地を…大丈夫?!
二人が飛ばされたのは、世界が荒廃したような世界。
『マッドマックス』…? 『猿の惑星』…?
でも何か、ちょっと感じが違う。あちこちにある残骸は建造物ではなく、何かのメカニック。“20世紀フォックス”のロゴ…。
『マッドマックス』みたいな奴らがやって来たと思ったら、あれ、『X-MEN』で見た事ある連中だぞ…?
そこに“クリス・エヴァンス”が颯爽と登場。彼だ! あの台詞を言うぞ!
ところが、クリス・エヴァンスの“ヒーロー”でも、もはや忘れ去られた“あっち”だった。
旧『ファンタスティック・フォー』で演じたジョニー/ヒューマン・トーチをまさかの再演。
今彼ならあのヒーローなのに…? ここはどういう世界…?
マルチバースに不必要もしくは20世紀フォックス版マーベルの“失敗作”が捨てられた掃き溜めのような世界。
こんな世界にも支配者はいる。エモータン…ではないが、カサンドラ・ノヴァ。あのチャールズの妹…!
超能力は兄並み。しかし性格は冷徹で残忍。手や指で相手の頭の中に入り、心の中や奥底を見る。
スキンヘッドや超能力は確かに“チャールズの妹”だけど、似て非なる今回のヴィラン。
彼女の下から生きて返った奴はいないけど、この二人は例外。ま、ジョニーとはえげつない最期でオサラバだけど…。
逃げ延びまた仲良くバトって、バテバテ…。
そこを助けたのは…
今回カムバックしたのはヒューのウルヴァリン(とクリスのジョニー)だけじゃなかった…!
これは事前に聞いていた。ジェニファー・ガーナーのエレクトラ。
これにはテンション上がった。ウェズリー・スナイプスのブレイド!
製作の話は聞いていたけど、いつの間にやら消滅…。単独デビューの機会を失った『X-MEN』キャラのガンビット。チャニング・テイタムの悲願。
そして、どうしてここに…? 『LOGAN/ローガン』でダフネ・キーンが演じたローラ。
それぞれ20世紀フォックス版マーベルで失敗もしくはディズニーによる20世紀フォックス買収で行き場を無くしたヒーローたち。
それにしてもよく再演してくれたもんだ。人によっては自虐であり、ある意味キャリアの分岐。
スナイプスのブレイドは好きだったけど、『3』は…。その『3』に出ていた“彼”と再会。
ジェニファーのエレクトラなんて一番有名な役かもしれないけど、黒歴史級の酷評…。
ローラはディズニーによる20世紀フォックス買収で行き場を失った口。にしても大きくなったね…!
ガンビットは企画そのものが消滅。消滅して良かったのかな…? だってあの発音の悪さでは…。笑いを堪えるのに必死なくらい笑ったけど。テイタム、グッジョブ!
そんな彼らと即席チームを結成。
ダメンジャーズ? コケンジャーズ?
いやいや、彼らだってれっきとした20世紀フォックス版アベンジャーズだ!…多分。
カサンドラの力を使って元の世界に戻る。
パラドックスの悪巧みを潰し、世界を救う。
でもそれで救われるのはデップーだけであって、ウルヴァリンや他のヒーローたちは…。
過去を修正や元の時間軸に戻れるかは、保障出来ない。強いて言うなら、希望的観測。
最もデップーはまた口からでまかせで言いくるめるけど。
でも、各ヒーローたちもそれに躍らされてまた闘うのか…?
最初はそうだったろう。希望的観測を信じて。
が、俺たち/私たちはヒーローだ。今や忘れ去られても。
命を落とすかもしれない。が、誰かの為に自分を犠牲に。
例え忘れ去られても、その精神まで失っていない。
旧ファンタスティック・フォー、エレクトラ、ブレイド、ガンビット、ローラ…。
20世紀フォックス製作やMCU以外のマーベル作品への讃歌。
ウルヴァリンも再び目覚める時が。
カサンドラが入り込み、明らかになった過去…。
自分のせいでX-MEN=“家族”が…。人間たちに復讐。さらにそのせいで人間のミュータントへの憎悪を増長させ…。
全て自分のせい。こんな俺がX-MENな訳ない。ましてやヒーローだなんて…。
俺はヒーローのウルヴァリンじゃない。でも、熱い闘志と不屈の精神、正しき心は完全に消えた訳じゃない。
チャールズが信じてくれたように。
ウルヴァリンはウルヴァリンだ。ローガンはローガンだ。
今再び目覚める。立ち上がる。
このスーツ。X-MENの証。
黄色スーツはコミックを踏襲。クライマックスはコミックの画像で見た事あるマスクも装着。これこそ真のウルヴァリンかもしれない。ファン感涙。
本当にコミックファン、映画ファンにはネタやお楽しみが尽きない。
前2作、『X-MEN』シリーズ、フォックス版マーベル、MCUと予備知識は必須。見てない人にはおふざけが過ぎるかもしれないし、またまた一見さんお断り。愉快なレギュラーメンバーの出番も今回ほぼ無いが、個人的にはメチャメチャ楽しませて貰った。
アクション、笑い、ディープなネタ…。昨今のヒーロー映画疲れや停滞を吹き飛ばしてもくれた。
今後のMCUの活力剤と期待されている本作。『~エンドゲーム』みたいに大作ぶらず、あくまでいつものデップースタイルなのも好感。
ウルヴァリンと共演しても、MCU参加しても、ディズニーになっても、デップーはデップー。
これもライアン・レイノルズの魅了か。
ヒーローたちの再演もライアンの人望か。
これだけの話題やネタに囲まれても、自分もしっかり仕事してるのが見事。
その最たるは、“デッドプールズ”。キュートなドッグプール、マスク不必要のナイスプール(ライアン、自分で遊び過ぎ(笑))、その他マルチバースのデッドプールたち!
デップー&ウルヴァリンvsデッドプールたち。これぞマルチバースの正しい使い方…?
この時間軸を救うには犠牲が…。
デップーには“家族”との再会があるから彼を犠牲にする事は出来ない。
再びウルヴァリンが華々しい最期を…。
が…。
ここは自分の世界。それを救うのは…。
この時無意識でがむしゃらだったろう。そして気付いていなかった。自分を犠牲にして他者や世界を救う。今自分が取っている行動が、ヒーロー以外の何者でもない事を。
一人では無理だ。そこへ…。
まさしく、デッドプール&ウルヴァリン!
さて、これからデップーは…? ウルヴァリンは…?
また会える…?
EDお馴染みのあのクレジットは無かったけど、我々は信じている。
デッドプールは帰ってくる。
ウルヴァリンもまたいつか必ず帰ってくる。
これを機にまたカッコ良く面白く頼むぜ、MCU!