「猫映画とはつゆ知らず…」クワイエット・プレイス DAY 1 ほりもぐさんの映画レビュー(感想・評価)
猫映画とはつゆ知らず…
猫は確かに可愛いです。私も家に5匹いて、毎日癒やされています。
それゆえ、この作品に登場するフロドくんの一挙手一投足が気になって仕方なく、物語に集中しきれませんでした。
気になるので早々にどこかへ逃げて行ってほしい…内心そう思いながら鑑賞していたわけですが、このフロドくん、なかなかのキーマンならぬキーニャンでした。
リード外れない? 劇場に連れて入っていいの? 鳴かない!? 逃げた! また戻ってきた! 水に濡れた! ピザだめ! 顔が大きいな! などなど…。
設定上、音を立ててはいけない緊張感の上に、猫のことが気になり、楽しめた反面、めちゃくちゃ疲れました。
こんなに猫に大事な役を負わせなくても、猫は家で寝ているだけでいいよ…とぐったりしながら映画館を後にしたのです。
それにしても、この猫たち(ダブルキャストのようですね)、すごい芸達者。
我が家は保護猫ばかりで、抱っこすらまともにできないため、驚きました。
さて物語の方は、空から突然クリーチャーが飛来するというパニック展開の中に、主人公たちの成長物語が含まれており、予想外に感動する作品となっていました。
サミラは最初、不治の病ということから心がすさみ、他者に対するあたたかい気持ちを失っています。
そんな彼女のワガママにも見えたピザへのこだわりが、実は父親への思いにつながっているという仕立て方は上手でした。
こんな非常事態にピザピザって何だ〜!?と思いますよね。
エリックもまた、恐怖に負けそうな中、サミラと行動を共にして次第に強くなっていくという彼自身のストーリーがあり、感動的でした。
生きている限り他者貢献、そして成長し続けることができるというテーマを感じ、満足のいく作品となりました。
ただラストはあれで良かったのかな…サミラが自滅する行為に出て良かったのだろうか、病で命を終えるまで生き続ける方が、物語に沿っているのではないだろうか? という気もしましたね。
サミラ役のルピタ・ニョンゴの顔芸とも言えそうな豊かな表情で、足りない情報が補われていたところ、クリーチャーが早くてそこそこ怖いこと、廃墟の雰囲気もなかなか良かったです。
音を立てるなという設定は、戦時中の防空壕の「赤ちゃんを泣かせるな」という話を想起させられ、ちょっと暗い気持ちになりましたが、面白い作品でした。