不思議の国のシドニのレビュー・感想・評価
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ヘンテコJAPONの苦笑をかき消す人間ドラマ
イザベル・ユペールを最初に観たのは「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」でした。かの作品で無茶苦茶美しい女優さんだなと思ったのですが、年齢を知ってビックリ。1953年3月生まれというのだから、今年で御年71。流石一流女優は古希を迎えても美しいものだなと感じたのでしたが、本作はそんな魅力あふれるイザベル・ユペールが、日本を舞台にした作品に出演するというので、取るものも取りあえず観に行きました。
彼女が演じたのはフランスの作家・シドニ。夫の死などをきっかけに新作を執筆できないスランプに陥っていましたが、デビュー作「影」が日本で再販されるというのでそのキャンペーンで来日。そんなシドニをエスコートするのが伊原剛志演ずる編集者の溝口健三でした。小津安二郎、黒澤明と並ぶ昭和の名監督・溝口健二を想起させる名前であり、本筋とは直接関係のない設定でしたが中々お洒落でした。ネーミングはさておき、伊原扮する溝口は、本作中シドニとの会話は全てフランス語で通しており、「蛇の道」の柴咲コウ同様、作品のためにフランス語を習得するという伊原の役者魂に恐れ入りました。
一方序盤の日本の描き方は洋画によくあるヘンテコJAPONで、到着した空港の係員などはかなりカリカチュアライズされているし、またお馴染みの過度の「お辞儀」も登場。この辺りは苦笑するするしかありませんでしたが、溝口の描き方は全くヘンテコではなく、むしろ非常にカッコ良く描かれていました。また京都を中心に、奈良や直島といった日本の美しい風景が綺麗に撮られており、しかもコロナ期間中の撮影だったようで、今現在と違って人出も少なくていい雰囲気を醸し出しており、この辺りの描き方は、ヘンテコJAPONの苦笑をかき消して余りあるものでした。
本作の最大の見せ場はタクシーでのシドニと溝口の会話と距離感でした。桜並木を走りながらお互いの身の上を語り、意外な共通点を知ったのをきっかけに徐々に近づいて行く2人の心。決して動的な作品ではないのですが、終盤に向けて生きる活力を失いかけていた2人に徐々に力がみなぎって行くのが感じられ、こちらも勇気づけられた感がありました。
そんな訳で、イザベル・ユペールと伊原剛志の共演を存分に楽しめた本作の評価は★4.4とします。
ときめく猫図鑑
フランス人女性小説家シドニが日本でスピリチュアル体験をし自身と向き合う話。
夫を亡くして新作を書けなくなって久しい作家のデビュー作「影」が日本で再販されることになり、出版社に招かれて来日し巻き起こっていくストーリー。
日本の雰囲気や人物の感じは、結構それらしかったけれど、リアクションがもうちょい自然体だったらね。
取材やサイン会を通し、両親と弟を交通事故で亡くした喪失感を切っ掛けとして執筆したものの自伝ではないという「影」を手がけた背景の話しをしつつ、出版社の溝口健二ならぬ溝口健三との共通点や、夫の幽霊との遭遇をみせていく展開で、話しも映像もチープだけれど堅苦しくなくて、むしろそのおかげでみやすかったし、それなりに面白くはあったけれど…確かにそうなりそうな雰囲気醸していたけらど、終盤やっぱりそっちの方向?何歳の設定だよ!で台無し。
日本でもそういう扱いの女優さんいらっしゃいますがね…(-_-)
イザベルは
24-144
静かな
大人のラブストーリーが展開されます。あんな短い時間で、恋愛関係に移行したのは、やはり旦那さんの霊が現れて消えたことがあるのでしょうか?途中のシーンで東京のホテルに入ったと思ったのに、関西方面で買い物をしているシーンがあったのは何故でしょう?
不思議の国ニッポン
故人がそばで見守っているということ
あいという字は、すぐ壊れてしまうのか?
オープニングクレジット...
二羽の鶴のふすま絵
その意味を汲み取れば
本作の思い入れの他
包括的意味合いも自ずと分かってくるかもしれません。
最初のショットが、映画製作に関わった人たちの思い入れがあると個人的には勝手に想ってもしまう。
シドニ、彼女の旅経つ前の自室... 鏡には景色が映り、彼女の背面の窓にも景色が映る。そのアンバランスな光景こそが映画製作者の想いれとともに日本の耽美的で美意識を凝縮した借景となり、そのアンバランスな構図こそが、以外にも何故か?視覚的にバランスを保っている。
溝口健三って?
初めて、彼のバイオを拝見したけど気にも留めないワンシーンが貴重であり大切であることを... フランスのヌーヴェルヴァーグの監督などにも影響を与えている。その名声とは裏腹に当時としては医療技術や薬物学の遅れに加えて、撮影スケジュールなどから、彼自身、身近に支えることのできなかった彼の近親者への "心残り" が本作にも多少、反映されているのかもしれない。だから
「溝口健三」って、許せてもしまう。 でも後からこんな会話が
Sidonie: That guy is called Kenzo Mizoguchi.
Antoine: Is he related to the famous filmmaker?
Sidonie: No, I already asked. It's a very common name
in Japan
そして、至極あたりまえな存在が、無 = Zero であることを...
Interviewer: Have you always want to write?
Sidonie: No. Writing is what happens when
you've nothing left. There's just
despair. But sometimes, there isn't
even that. There's just nothing.
健三がシドニにこんな事を語る... この事が本作のモチーフだと個人的には捉えている。
We all have a some kind of relationship with the decease.
Some see them, others feel them. The visible and invisible
world coexist. It's like that for us Japanese.
"Ghosts help us live. "
そして、後半には返歌のように思えるシドニの言葉
"The country we live in,
does not exist."
漠然とした幽霊をモチーフに日本を美しく描き、二人の関係の変遷を緩やかに描いたロード・フィルムには細かなところに悲しい事に多くのソゴがあり、ラストシーンを含めて、多少の違和感がある。それを取り上げることのできない程、取り上げるのをチュウチョさせる程、また映画の善し悪しに関係ない程、あたし個人の強い思い入れがあり、再度、大切な "何か?" を分かり始めてもいた。だから、この作品を傷つけたくもなく、これ以上のネタバレはやめます。
悪しからず
アンバランスな邦題のむなしさ!?
ただ、一言...
シドニの幻視という形で現れたアントニーをありふれた映画のように使い古されたホログラムで描いている。そうではなくて、足音が聞こえるほど"生々しく" 亡霊たちを描いた先人のように、中国怪奇小説や日本の幽霊物語に出てくるような子供までも授かる生身の人として、この世に存在しないものを敢えて描いてほしかったと...
手を繋ぐことを忘れた人たちへの
シドニのような可愛らしい心を忘れない女性は...今は、いないのかも!?
稚拙な考えの者より...
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