劇場公開日 2024年11月8日

「立派すぎるお父さん」ネネ エトワールに憧れて regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0立派すぎるお父さん

2024年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

人種差別や才能への嫉妬に苦悩しながらもパリ・オペラ座の最高位エトワールを目指すアフリカ系少女ネネの奮闘。現実のバレエ団には黒人のエトワールがすでに存在しており、特定の実在人物がモデルでないものの、彼らがこれまで受けてきた人種差別問題を公にした事が作劇の発端になっていると思われる。
人種差別や身体的差別、身分差別などを描く映画は、アメリカと並ぶ移民大国フランスの十八番だが、フランス映画のそうした描写はアメリカのそれよりも露骨で分かりやすいものが多い気が。貧困層のアルジェリア系少女がディオールのお針子を目指す『オートクチュール』も、周囲の彼女への虐め描写が呆れるほど『ガラスの仮面』チックだった。
正直本作もクラスメートの嫌がらせや、学校長マリアンヌのネチネチした態度が少女漫画レベル。奔放で協調性に欠けるネネの性格も反発を受ける一因かもしれないが、にしても…な展開。まあそうした虐めは現実にあったという裏返しなのだろうけど、転結パートでのマリアンヌの秘密を含めた虐めた側の変化も唐突すぎて、無理やり話を畳んだとしか思えず。
救いは「黒人に生まれなければよかった」と出自を恨む娘を窘める事なく、ひたすら応援する両親。特にお父さんは立派。そして何よりもネネ役の少女の身体能力が素晴らしい。ただあれだけのダンススキルがあるのなら、そんなにバレリーナにこだわらなくてもいいのではと思わなくもない。そもそも、彼女のマリアンヌへの憧憬があんまり感じられなかったのが本作最大のツッコミどころかと。
ま、それでも主人公の少女にまるで感情移入できなかった『オートクチュール』よりはマシだったかな。

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