「期待していただけに残念。」バティモン5 望まれざる者 yurimaripapaさんの映画レビュー(感想・評価)
期待していただけに残念。
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主演の女優は魅力的で演技もよかった。映像も美しい。
ただ、ストーリー展開についていけなかった。
いくつかの点で無理があると感じた。
まず、重要な役どころである市長代理の心理描写だ。
行きがかり上の義理と、加えて単純な名誉欲から市長代理を請け負ったノンポリ男が、最後には、非人道的で強引なスラム潰しを指示するに至るまでの内面の変容、葛藤などに説得力がない。取ってつけたようないくつかのエピソードはあるが、いかにも弱い。
また、主人公の女性が市長選に立候補するくだりも、その後の展開が全くなく意味不明だった。選挙戦で争うはずの市長代理と敵対して、それが前述の彼によるスラム潰しの動機に結びつくというのなら、あまりに単純だ(そうした非人道的な施策が票に結びつくとも思えないから、単なる私怨レベルの感情的な行動ということになる)。
そして何と言っても、スラムアパートメントの強制退去シーンが無茶苦茶だ。
いくら老朽化による崩壊の危険性を理由にしたとしても、事前に何の通達もなく突然住民を追い出すことなど出来るはずもない。
一応、舞台はフランス国内なのだ。
話の展開としては、その無慈悲な行政のやり方に感情を抑えきれなくなった主人公の1人が、最後に市長宅を襲うことになるわけだけれど、そもそも強制退去自体にリアリティがないから、結果的にクライマックスへの展開にも感情がついていかなかった。
この手の社会的テーマを扱う映画なら、リアリティは命のはず。
どうしてこうなってしまうのか、よくわからなかった。
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