劇場公開日 2024年7月12日

「演技未経験の5歳少女のみずみずしくも心に触れる表情に惹き込まれる」クレオの夏休み 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0演技未経験の5歳少女のみずみずしくも心に触れる表情に惹き込まれる

2024年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

83分の小品でありながら、少女クレオと島国出身の乳母グロリアが交わす深い絆に心奪われずにいられない。二人の間にはスクリーンで仰ぎ見るに値する特別な化学反応がある。それこそ眼科検診で見せるクレオの弾けるような天真爛漫な言動と、それを懐深く抱きしめるグロリアの愛情をはじめ、全ての場面が瑞々しく我々の体内へと伝わり、忘れがたい思い出となって蓄積されていくかのよう。人の死や故郷に残す子供のことなど、クレオにはまだ理解しづらい事情は多い。だが一方で、我々は本作を通じて、クレオの中でどんな感情が渦巻いているのかについて窺い知ることが可能だ。思えば本作では誰もが「母の不在」に直面している。その痛みを受け止め、寄り添いあい、またひとつ成長していく。幼いながらゆるやかな気づきに至る主演ルイーズの表情が素晴らしく、時折挟み込まれるアニメーションもまた、遠い記憶から聞こえる優しい呼び声のように温もり一杯に響く。

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牛津厚信