朽ちないサクラのレビュー・感想・評価
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杉咲花さんが演じた日本の超ハードボイルド!!
ハードボイルド…hard boiled(卵の固ゆで)。転じて、感情を交えず、客観的な態度で描写すること。また、そのような小説や映画。
杉咲花さんはどちらかというと小柄で華奢、どうみても暴力・バイオレンスとは無縁な人なのに、フィリップ・マーロウのような凄味と優しさを見事に表現しています。
日本の男優さんが演じてきたハードボイルドなキャラクターについて詳しいわけではありませんが、この映画の杉咲花さんは内面から滲み出る迫力でそれらを凌駕したといっても過言ではない、そう思うほどの演技でした。
そして特筆すべきは、脇を固める俳優さんの誰もが、キャリア最高に脂ののった演技だったのでは?といいたくなるほど、成り切っていたこと。
安田顕さんといえば、「私はいったい、何と闘っているのか」が記憶に新しいのですが、そのタイトルはこの映画での役柄にこそふさわしい!
刑事・梶山を演じる豊原功補さん。警察内部で不祥事件が発生したとしても、こんな人がいるのなら日本の警察も捨てたもんじゃない、と思えるようなプロ。
真実に迫ったがゆえに無念の死を遂げることになった津村千佳、それを演じた森田想さん。
映画の中の話なのに、本気で彼女に帰ってきて欲しいと思った人は私だけでないはず。
日本のインテリジェンス(公安)の実態は何も知らないのですが、「正義」についての思想やその在り方は別にして、この映画で描かれているようなことが本当にできる組織や人材がいるのならば、それはそれで頼もしくもあります。間違っても監視対象になるようなことだけは絶対に回避したいですが。
究極のトロッコ問題
ストーカー被害に遭っていた女性が殺害され、
犯人は逮捕されたものの、
従前から相談を受けていた警察は
被害届の受理を先延ばしにしていたと非難される。
更にその間に、署の慰安旅行に行っていたことが地元紙にスクープされ、
世間からの指弾はより高まる。
愛知県警に勤務している『森口泉(杉咲花)』は
交際している刑事の『磯川俊一(萩原利久)』からの何気ないメールの内容を
親友で新聞記者の『津村千佳(森田想)』に話したことが
スクープの元ネタになったのではないかと疑うが、
『千佳』はきっぱりと否定し、身の潔白を証明しようとするが
その一週間後に変死体で発見される。
自分が疑いを掛けたことが親友を死に追いやったと自責の念に駆られた『泉』は、
(刑事でもないにもかかわらず)犯人を捕まえるために『磯川』と共に動き出す。
原作の功だろう、
良く出来た一本に仕上がっている。
何よりも、間抜けな警察が出て来ないのが一番の手柄。
ありふれた作品が、警察の手抜かりが前提で成立するストーリーが多いなか、
ここでは常に科学捜査に基づき、先走った単独行動をする者もいない。
警察が気づかなかった些細な証拠を主人公が見つけるのは前段があるからで、
それをリードするためのエピソードが
真相が明らかになる最後の場面で大きく効いて来る。
小道具の使い方、伏線の張り方も共に巧み。
また、BGMや画面の陰影も、
王道の表現ではあるものの、
サスペンスを盛り上げる装置として上手く機能する。
『泉』の所属部署の上司『富樫(安田顕)』が
なにくれとなく彼女をサポートするのは
腹に一物がありそうにも見え。
彼は元「公安」の立場を利用し
更に(刑事でもない)部下を自由に動かすことで
犯人逮捕という目的を果たそうとしているようにも見える。
とは言え、本作でも「公安」との相克は
物語の重要なカギとなるテーマ。
最初は純粋にストーカー殺人と見えていた事件は、
他にも何人かが犠牲になることで
異なる側面を見せ始める。
とりわけ、一人を救ったことで百人の死傷者を出した過去と
一人を犠牲にすることで多くを救うかもしれない未来を天秤にかける独善が
ラストで交差、
本作の主題が鮮やかに浮かび上がる。
見事なストーリーテリングだ。
最大幸福のためには多少の犠牲はやむを得ぬとの思考は
はたして正しいのか。
贖罪のために振りかざした正義は
視野狭窄に陥り、独善的になる。
それを咎める存在がいないことが恐ろしい結末に繋がる。
他にとる術は本当に無かったのかと。
各々が信じる正義のぶつかり合いは
次の新しい物語を生むのだ。
杉咲花
セリフはいらない
視線の動きだけ、表情だけで演技のできる役者は少ないと思います
杉咲花、最高です
彼女の作品をずっと
追い続けていこうと思える作品でした
シナリオもよかったし、なかなかリピートしたい映画がない中でレアな作品でした
脇を固める俳優陣も素晴らしかったです
是非とも続編をと希望します
この作品に非を唱える人がいるなら、あなたに人間の感情はありますかと問いたい
この世界ではない機構
いわゆる警察モノなのだが観てると、そんなことある?という疑問が次から次へと出てくる。途中から、あ、これはファンタジーだと思えば多少は眼を瞑ることもできるが、それでも看過できない重大行動を選択する。だったらその団体のチカラを削ぐことはもっとあるだろ、と。それに加え演出が古臭い。そこで音楽入れるとか、一昔前なの?そこも首を傾げる。まあ、思えば柚月裕子原作の弧狼の血もファンタジーだったけど、見応えはだいぶ違いました
霧の中の闇
警察の広報で働く職員の女性が、親友の記者が殺された事件を追う話。
警察が起こした不祥事の情報を親友に話していた主人公が、それが記事になったことで友人と揉める中、自分ではないことを証明すると調べに出かけた友人が殺されて巻き起こっていくストーリーだけど、殺された親友は超有能ってことですよね。
序盤から警察がペラペラと殺人事件の情報流し過ぎていて、なんだかチャラいサスペンスだな〜と。
これが一課長の狙いだとしたら大したものだけど。
事故死に見せかけるのに車の指紋全部拭いちゃうのは玄人ですか?
話しの流れ的には何とか繋げていたけれど、広報課長の昔語りもなかなか唐突だったしね。
主人公的には色々動いていたし、刑事のポンコツっぷりを課長は嘆いていたけれど、なんだかそんなんで迫れるほどの真相って…という感じで、やり切れなさは良かったけれどイマイチ没入出来なかったかな。
戦術と戦略
演出にややベタなところはあるもののサスペンスとしての見応えは充分。
ラスト近くで泉が富樫に「そんな歪んだ正義は許さない」と言い放つのだが、これに賛同するか否かでリベラルか保守かが分かれるみたいな感じが面白かった。
原作(者)を知らず、予告を観て面白そうと思い鑑賞。警察物はTVド...
原作(者)を知らず、予告を観て面白そうと思い鑑賞。警察物はTVドラマもあまり見ない方ですが、役者さんの演技、音楽、画と、さすがの映画クオリティで楽しめました。
ストーリーは私の頭ではついていくのにギリギリ、たぶん、話の辻褄に矛盾や突っ込みどころは無いと思われますが、もう一度観に行っておさらいしたくなりました。
多様性が叫ばれる時代の中、様々な「正義」が遂行される物語です。主人公・森口泉の行動が我々が普通に考える「正義」であり、警察機関もその「正義」を実行することが望ましいのですが、違う観念の「正義」も存在し、それが闇となります。どこまでが事実(現実?)かわかりませんが、市井の民としては少しの怖さと、正義にまで多様性が許されるべきかを考えされられた次第。エンディングに流れる森優太さんの音楽は、この物語全体を通してのそんな観た側の心象を表現してくれたかのようにマッチし、良かったです。
仮にですが「公安警察官・泉」なる大ヒット映画が既にあり、この映画は若き頃の泉の前日談の立ち位置にあったらすごく良いのになと思いました。
100人を救う為に1人を殺してもいいってか?
原作も予告編も知らなかったけど、大好きな花ちゃんが主役なので、それなりにハードル上げて着席。
えっ!杉咲花演じる森口泉、県警で働いてるのに警察官じゃないなんて珍しいな。広報広聴課なんてあるの考えた事無かったわ。
まず、ちょっとした事件が起きて、警察の良くない動きが新聞のスクープに。泉は新聞記者で親友の千佳が記事に関係しているんじゃないかと疑っていたら、1週間後に最初のシーン。ふむふむ、刑事じゃないのに犯人を見つける泉のサスペンスだなって予想。当たってたけどテーマはそれじゃなかったかな。泉の操作に協力してくれる元公安の上司、安田顕演じる富樫、優しすぎるぐらいに感じちゃった。操作に関わるもう1人の刑事、豊原功補演じる梶山も正統派の刑事で迫力あってとても良かった。
あらあら、次々に死者が。ちょっと苦手な関係者多数の展開だった。後半に出てきた怪しげな宗教集団、ちょっとヤバすぎでしょ。で、まさかの富樫。罪にはならないの?
泉は納得できなくて最後の決心。いいね。
ずっと花ちゃん、ヤスケン、豊原のやり取りが楽しかった。特に良かったのが花ちゃんの表情。ずっとハマってました。
原作の続編が気になる
ストーカー被害を受けていた女性が殺害された。地元新聞にスクープ記事を掲載されたことで事態は悪化していき…。
柚月裕子原作映画。分かりやすい伏線が多くて黒幕が誰かは検討がつきやすい。終盤の安田顕の演技と物語が随分遠くまで来たなと言う感覚は好きでした。
原作に無い部分と映画だからこその部分
杉咲花 ぴったり。
原作を読んでいるときから、花さんに演じてほしいと思っていました。
ほかは微妙に違うなぁと思いつつ、
映画の展開に引き込まれていました。
原作の中であえてはっきりとせず、読み手に任せられるような部分が合ったのが、一つの答えに向かわせられてる
それが分かりやすいし、ハズレでもなく。
原作でモヤがかかっていたのが、絵と言葉になって示された感じです。
よく出来た脚本。原作でモヤモヤしているところがスッキリします。
宣伝ポスターのコピーは「主演 杉咲花✕原作 柚月裕子」。じゃあその掛け算がイコール映画の価値なのか、演出とか脚本とか映画スタッフの貢献はないのか。と、やや疑問を持ちながら観たのですがよく練られた脚本で面白かったです。
原作は、森口泉シリーズの一作目で、まだ、彼女は警察官でなく県警本部勤務の事務職です。泉の性格付けもそれほどクリアでなく、泉の視点と、準主役ともいうべき磯川俊一の視点が交錯するところがあります。原作者自身が泉でシリーズ化すべきかどうか迷っているような感じさえします。結末もあまり明確ではなく、公安の関与は強く疑われるのですが、そのあたりは何かモヤっとしています。
対して、映画は、犯人にしても、黒幕にしても、彼らの背景、犯行や動機が実にキチンと描き込まれており、原作を読んだ者としては、ああそういうことだったんだと納得できるところがあります。
タイトルの「サクラ」はもちろん公安を指す隠語であるわけですが、刑事として(先に触れたように本作の時点では泉は警察官ですらないので正確に言うと犯罪捜査者としてということになるのでしょうが)スタートした泉の人生の始まりを象徴する意味合いもあると思います。事件が始まったときはまだ蕾だった桜が、映画の最後では満開になっているところ、時間の経過と泉の成長を物語っている感じがしました。良い演出だと思います。
最後に、津村千佳役の森田想さんについて。「朽ちないサクラ」の次の作品「月下のサクラ」を読むと森口泉が実はかなり猪突猛進型のヒロインであることが分かります。私は泉役はむしろ森田さんの方がイメージなのですが。それはともかくこの映画では「辰巳」ではバディだった遠藤雄弥さんと全く異なる役回りで共演しておりちょっと面白かったです。
色々と
90本目。
序盤の構成に期待が高まる。
背負ってきたもの、これから背負うもの。
生かすもの、生かされないもの。
一筋縄ではいかない展開に、点と点、裏表と見応え十分。
でもその中で、ある役者さんの演技がそれじゃない感があるのは、個人的意見。
作品とは関係ないけど、暗い作品、芝居続きだから、明るい杉咲花の作品が観たい。
帰ってきたあぶない刑事とは真逆のシリアスな警察ドラマ。真逆ではある...
帰ってきたあぶない刑事とは真逆のシリアスな警察ドラマ。真逆ではあるもののカーチェイスの場面では迫力のある映像で楽しめました。
サスペンスとミステリー、伏線回収と存分に楽しめる作品で、終盤の杉咲花と安田顕が対峙するシーンでの杉咲花に圧倒しました。
あれこれ考えないで楽しく鑑賞出来て良かったです。
各キャストの方々の圧巻過ぎる演技!!
各シーンのキャストの方々の圧巻過ぎる演技から生まれる空気が、スクリーン越しなことを忘れてしまうくらいに引き込む力が強くて面白かったです
。
「サクラ」の奥深さの描かれ方、見せ方が印象的でもありました!
ストーリーを知ったでもまた観たい作品。
題名から想像したものとは違っていました。
原作未読、情報は劇場で流れる予告編と作品名だけから想像して、「サクラ」という女性警察職員が主人公として活躍するお話かと思っていました(昔のテレビドラマ「同期のサクラ」と類似のパターンね)。
実際は主人公の名前は「泉」、本作の「サクラ」は一般でつかう「偽客」とは異なり公安警察で〇〇を示す言葉とか。
題名は主人公の最後の決意を示したんでしょうけど・・・
肝心の話についていえば、うーん、しっくりこない。
いろいろありえない描写が重なってイマイチという感じ。
お好みでどうぞといったところでしょうか。
安定の配役でじっくり愉しむサスペンス
作品ごとに役に入り込み、時を経ての心情の機微な変化が見事な主役の杉咲花、清濁併せ呑む人物をやらせたら安定の上長役の安田顕。
物語としては、主人公が前半のショックから立ち直り、弔いと真実追求の意図を持ち、観察眼と論理思考を駆使して徐々に真の首謀者に、多くの回り道をしながらも近づき、そして到達する見ごたえある内容だった。
淡々と抑えめの進行で若干盛り上がりに欠ける印象もあったが、その分じっくりと作品に向き合え、自分なりに考察もしながら楽しめたように思う。
派手なアクションや演出に依らずとも、俳優たちの演技だけで此処まで上質なものになると云う事を目撃できたのが良かった。
後日談も原作にあるようなので、そちらも映像化されると良いなと感じた。
おっと誰かが来たようだ
『帰ってきたあぶない刑事』の監督とは思えないほどに真逆の骨太映画で見応えがあった。
キャストも安定感があって良かった。
悪条件が重なってしまったとはいえ、親友を疑って和解できないままになってしまったのは、後悔してもしきれないだろうな。
小出しの点と点が繋がっていくたびに鳥肌が。
どこからどこまでがグルで、誰がどこまで知ってるのか、そもそも事件のスタート地点はどこなのかハラハラ。
真相に辿り着いたはいいけど、知りすぎ喋りすぎは危険だから、その辺でもうやめて、早く逃げて、とホラー映画でもないのに縮こまって観てしまった。
よく幽霊よりも生身の人間の方が怖いというけど、まさにその通りの結末。
タイトルの意味を知り、まあ朽ちないわなと腑に落ちた。
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