劇場公開日 2024年6月21日

「タイトルの意味」朽ちないサクラ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5タイトルの意味

2024年6月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

原作未読ながら予告に惹かれ、鑑賞を決めていた本作。劇場内のポスターとロケ地マップから、地元愛知が舞台であり、特に東三河中心にロケが行われたことを知り、さらに期待を高めて公開2日目に鑑賞してきました。同様の地元サポーターが多かったのか、田舎の劇場にしては珍しくかなりの客入りでした。

ストーリーは、ストーカー被害を訴えていた女性が殺害された事件をめぐり、被害届を受理しなかった警察が当時慰安旅行に行っていたと地元新聞がスクープ報道したことで警察へのバッシングが高まり、県警広報広聴課の森口泉は、自身がうっかり情報を漏らしてしまった親友の新聞記者・津村千佳が記事を書いたのではないかと疑い、千佳は自らの潔白を証明しようと情報源を追うなかで殺害されてしまい、責任を感じた泉は事件を独自に調べ始め、背後に大きな陰謀があることに気づくというもの。

開幕直後の事件から話を起こしつつ、失態をさらした警察の現状と県警に勤める泉の立ち位置を描くとともに、以降の泉の行動動機を観客にしっかり理解させます。コンパクトに無駄なくまとめられた立ち上がりが、実にお見事です

以降は、登場人物を増やしながら、残された手がかりを手繰るように少しずつ真相に迫っていきます。単純そうに見えた事件が、予想以上に複雑な背景をもっていることがしだいに明らかになっていき、ぐいぐい引き込まれます。正直言って理解が追いつかなかったり、腑に落ちなかったりするところもありますが、テンポのよさと迫真の演技に押し切られてしまいます。

そうして事件が決着を見せたかに思えたところで、真の闇が明かされる展開にぞくぞくします。その真相の意外性もさることながら、その場面での息を飲むような演技のぶつかり合いに魅了されます。高ぶる感情を抑え、努めて冷静に振る舞いながら、相手に鋭く切り込むような言葉の応酬がたまりません。

ラストは、事務職を辞し、改めて警察官を目指す泉の姿が清々しく描かれます。タイトルの「朽ちないサクラ」とは、その歪みさえ正義と自負して突き進む公安、組織の中にあっても矜持を忘れぬ一人一人の警察官、この二つの意味が込められているのではないかと感じます。ただ、よくできた予告とタイトルをあわせて考えると、真相が透けて見えてしまうのは、ちょっともったいないところです。

ちなみに、地元民にとっては土地勘がありすぎて、場面転換時に謎の瞬間移動が起きたように見えるところが何度もあって笑えました。とはいえ、テレビドラマ「TOKYO MER」「VIVANT」「ブルーモーメント」、映画「ディア・ファミリー」、アニメ「負けヒロインが多すぎる」、バラエティ「有吉の壁」など、近年地元ロケが盛んに行われているのはうれしい限りです。これからも地元フィルムコミッションに頑張ってほしいです。

主演は杉咲花さんで、本作でも安定感抜群です。脇を固めるのは、安田顕さん、萩原利久さん、豊原功補さん、森田想さん、藤田朋子さんら。中でも、表情ひとつで心情を醸す安田顕さんの演技が秀逸です。

おじゃる
あんちゃんさんのコメント
2024年6月24日

共感ありがとうございます。原作では舞台は東北地方の架空の県なのですが映画は何故か愛知県にしています。桜の咲くタイミングとかかな、と思っていたんですが、大規模なロケ地タイアップがあったようなのであえてそのようにしたのかなとレビューを読んでいて感じました。

あんちゃん