「結末は衝撃的だが、説得力に欠けるところが惜しまれる」朽ちないサクラ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
結末は衝撃的だが、説得力に欠けるところが惜しまれる
ストーカー殺人事件が警察の不祥事に結びついたかと思えば、それを追う女性ジャーナリストの殺人事件が発生したり、マスコミに情報をリークした女性の死亡が明らかになったり、ストーカー殺人の犯人がカルト教団の信者であることが判明したりと、畳み掛けるような展開に引き込まれる。
終盤で、女性ジャーナリストを殺した犯人が、警察に追われて死亡しても、それで一件落着となるはずがなく、「実は意外な人物がカルト教団の信者で、主人公の命を狙うのではないか」くらいのことは考えたのだが、そうした予想を上回るような結末が用意されていて驚いた。
主人公と彼女の上司が、料亭の一室で酒を酌み交わしながら対峙する場面は、見応えのあるクライマックスになっているのだが、登場人物の名前と顔が完全に頭に入っていないため、会話だけでは、「誰が何をしたのか」をすんなりとは理解することができず、残念ながら、頭の整理が追いつかなかった。
主人公が、神社の「おみくじ」に、事件の真相を解明する鍵があると考えた経緯にも説得力がなく、せめて、女性ジャーナリストの遺体と一緒に発見された「おみくじ」がどうなっていて、何が書かれていたのかを、分かるようにしてもらいたかったと思う。
そもそも、ストーカーの被害届を受理しなかった警察職員は、カルト教団とは関わりがないはずなのに、どういう経緯で、あの神社の「おみくじ」を引いたのかもよく分からない。もしかしたら、ストーカーをしていた宮司に会いに行った時に、「おみくじ」を引いたということなのだろうか?
そして、最後に明らかになる「本当の黒幕は公安だった」というオチは、確かに衝撃的ではあるのだが、その一方で、いくら大義のためとはいえ、警察組織の一部てある公安が、殺人にまで手を染めるものだろうかという疑問も湧き上がってくる。
「100人の命を救うために、1人の命を犠牲にする」という考え方には、必ずしも同意できないものの、主人公の上司が、警察官として貫いた「正義」であったということだけは理解することができる。そうであるならば、もっとリアリティーが感じられるやり方で、彼なりの「正義」を描いてもらいたかったと思えてならないのである。
さらに、ラストで、事務官だった主人公が、警察官になろうと決意する理由もよく分からない。
まさか、「お前は刑事に向いている」と言われたことを真に受けたからではないだろうが、普通だったら、大きな闇を抱えている警察という組織に嫌気が差して、辞めてしまうのではないだろうか?
おそらく、警察の内部から公安を変えたいと思ってのことなのだろうが、そうなると、彼女は、あれだけ「許せない」と言っていた公安に身を投じなければならない訳で、そこに、大きな矛盾を感じてしまうのである。