ジェシカ・アルバのアクションを期待している観客、
アクション少なめで新境地を期待している観客も多いだろう。
アクション映画としての完成度と、
社会派ドラマとしての深みが、
いずれも中途半端な印象が残った。
地方都市の閉鎖性を背景にした、
「スリー・ビルボード」や「オザークへようこそ」のような、
社会派ドラマの要素を取り入れつつ、
ジェシカ・アルバのアクションも見せたいという構造が、
作品のバランスを崩している。
アクションシーン自体はまずまずの出来だが、
物語全体のテンポを遅くし、
ドラマ部分との整合性が取れていない。
特に、主人公の特殊な機関の設定や、
メインプロットになるべき父親の死の真相など、
丁寧に描かれるべき要素が多数存在する中で、
アクションシーンが挿入されることで、
物語の焦点がぼやけてしまう。
社会派ドラマとしての側面も、
十分に活かされていない。
悪党の選挙資金が違法行為によって賄われているという、
現代社会にも通じる問題提起は興味深い。
しかし、この設定が物語の核となり、
主人公の行動原理を深く掘り下げるには約100分では困難だし、
アクション作品なので、省略すべき部分は省略しないと成立しない。
また、主人公の旧友である保安官やその家族など、
登場人物たちの関係性も複雑に絡み合い、
ドラマとしての奥行きを期待させるが、
それぞれのキャラクターが持つ背景や葛藤が十分に描かれていないため、
感情移入の期待もRPGも不発。
【蛇足】
翻訳に関して。
日本語吹き替えだと、献杯、
字幕だと乾杯。
正しくは献杯だが、
前後の意味、状況、
日本独特の言い回し、
等々、
検討すると、
どちらも間違いではない。
その他にも試行錯誤してくれている感が、
みえてくる作品は、
観ていて素直にうれしい。
私自身も、自作や担当作品の外国語のスポット作成において、
言葉の選択や訳のパターン、文字数で色々と話し合いをした経験がある。
特に、文化や習慣が異なる言語間での翻訳は、
意見が食い違いやすく、
最終的な決定に至るまでには多くの議論を重ねる必要がある。
が、
そんな時間が無い場合も多い。
本編を見ないでテキストだけを翻訳してるのでは?
という作品もあれば、
検討、修正、いろいろと試行錯誤をしているんだろうな、
という作品も多い。
昨今は1カットの長さが5秒以下の作品が多い、
そういう部分の難易度も上がっている。