「帰ってきたでとろいと刑事」ビバリーヒルズ・コップ アクセル・フォーリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
帰ってきたでとろいと刑事
今年は名物刑事映画の現場復帰が続く。『あぶない刑事』に『バッドボーイズ』…。
この刑事も。こちらは何と、30年ぶり!
『ビバリーヒルズ・コップ』に新作が作られる。そう聞いたのはもう何年前の事だったか。
本当に作られるのか、にわかに信じ難かった。と言うのも、エディ・マーフィの近年のキャリア。
山あり谷ありの繰り返し。一時映画から離れた事も。
ラジー賞を受賞した事が大きかったようだ。不名誉な称号を当てられ、うんざり…。
映画に出る意欲を無くしたという。このまま家のソファに座って引退すら…。
ある時思った。最後に出たのが駄作でいいのか…?
そして重い腰を上げた。
配信だが、『ルディ・レイ・ムーア』が絶賛。『星の王子ニューヨークへ行く2』も好評。再びキャリア上向き。
エディ自身、最大の当たり役を忘れる事はなかった。『3』に不満を残し、あれで終わりにしたくない。何より、またあの世界に戻りたい。
それこそ企画は『3』の直後から。紆余曲折あって、やっと。
アクセル・フォーリー、カムバック!
開幕早々、80年代のあの頃に戻ったかのよう。
音楽といい、デトロイトの街中を行くアクセル・スマイルといい、変わらぬ姿。
そう。変わらず、お馴染みなのだ。
相変わらずのお騒がせ無鉄砲捜査。追っていた事件を解決させるものの…
『2』以来の復帰。尻拭いしてくれたジェフリーも引退。
もう若くはないし、時代も違う。
そう心配し、さらに付け加える。
娘と話し合え。
娘~ッ!?
アクセルに娘が…! いつの間に…?
まあ、30年もブランクあったんだもの。そこはご想像にお任せ。
年甲斐もなく無茶する父親と娘の関係は容易に想像付く。
ずっと疎遠。絶縁状態。
娘は性も変えた。響きのいい“フォーリー”から響きの悪い“ソーンダース”に。
その娘ジェーンは、数奇な事にビバリーヒルズで弁護士をしている。
今担当している案件が難題。
ビバリーヒルズ署の警官殺し。ジェーンは容疑者の弁護を担当。
どうもきな臭い一件。容疑者は濡れ衣を着せられたようで、殺された警官やその周りも何か怪しい。
ジェーン自身も何者かに命を狙われる。手を引け、と脅迫。
ジェーンにこの件を依頼したのが、アクセルの旧友で、訳あって警察を辞め探偵をしているビリー。刑事を辞めた後の探偵は日米刑事共通なのね。
アクセルと電話で話した直後、音信不通に。
旧友の安否、何より娘の危険を案じ、アクセルはまたまたまたビバリーヒルズへ。
着いて早々、トラブル。婦警に逮捕されて、ビバリーヒルズ署へ。まあ、手間が省けた。
若い刑事アボットから事情聴取。
署長から呼び出し。『2』以来の復帰。『3』では引退したタガートが、家に居場所が無くて署長となって帰ってきた。
この時、一人の警部グラントを紹介される。
見たらすぐ分かるぅ。ケヴィン・ベーコン、絶対悪い奴やん!
アクセルはジェーンに連絡。何度も電話を切られるが、久し振りの対面。ビミョーな関係…。
さらにジェーンとアボットは訳あり…? さてはお前ら…! こちらもこちらでビミョーな関係…。
かつては共に捜査したタガートだったが、署長になったからか年を取ったからか警察魂を失い、厳重お達し。
それで引き下がるアクセルじゃない。
ジェーンやアボットと捜査開始。
やはり思った通り浮かび上がってきた。タガートが信頼するグラントは汚職刑事。それも真っ黒な。
ビリーはその事をタガートに訴えるが、聞いて貰えず。それがビリーが警察を辞めた理由。
以来探偵として独自に調査。遂に掴んだ容疑者の無実とグラントらの犯罪の証拠。
それが収められたSDカードを隠したビリー。躍起になって探すグラント。
音信不通になったビリーは何処に…? ビリーとSDカードを探せ。
その過程で娘との関係も修復出来るか。
持ち前の大胆行動、勘、正義感。そして父親として。アクセル全開!
設定やら展開やらカムバック刑事映画のド定番てんこ盛り。年を取っても無鉄砲、娘との確執、若い奴らとのやり取り、時代とのギャップ…。
グラントが悪玉ボスと見せ掛けて、主犯が…なんて捻りもナシ。びっくりするほどドストレート。
なのでストーリーには斬新さは期待出来ない。
ジョゼフ・ゴードン=レビットが新相棒。気の強い娘。かつてのビリーやタガートと比べるとちとキャラが弱かったかな。ケヴィン・ベーコンの悪役もステレオタイプ。
そのビリーやタガートともかつてのような掛け合いをもっと見たかった。最もタガートは署長になり、ビリーは音信不通だから致し方ないか…。
30年ぶりの新作で秀でた傑作!…にはならず。『3』より遥かにマシだが、やはり刑事アクション・コメディの金字塔『1』には及ばず。
待ちに待って、物足りなさや期待外れの声もあるだろうが、これでいいのだ。
『あぶない刑事』がそうなら、『ビバリーヒルズ・コップ』だって。このお馴染み感、分かり易さが。
年を取り、かつてほどキレは無くなったが、それでも久々に当たり役に復帰したエディが本領発揮。
口からでまかせやマシンガン・トークは健在。
開幕のトラック・チェイス、圧巻は中盤の街中ヘリ・チェイス、クライマックスの銃撃戦。アクションも要所要所に。
『3』で外れたジェリー・ブラッカイマーPと音楽のハロルド・フォルターメイヤーのカムバックが嬉しい。お馴染みのテーマ曲を聞くだけで高揚。
シリーズ皆勤賞のビリー。『2』以来のタガートやジェフリー。『1』『3』に続いてのセルジュも相変わらず“アクセル”の発音がおかしい。
懐かしい顔が懐かしい。ネタバレになるが、ビリー&タガートも最後には老体に鞭打って。
ビリーの探偵事務所には変わらずスタローンのコレクション。ランボーナイフ、要チェック!
キャラが弱かったとは言え、新キャストだって奮闘。
ベタではあるが、アクセルとジェーン。父娘の確執と、和解。
娘に手錠の外し方を教える父。そりゃ娘は幻滅。ここ、後々に。
デトロイトに居たら危害が及ぶからと、妻子を遠くへ。父が距離を置き、拒んだ。しかし娘も距離を置き、拒んだ。
父が犯罪者を逮捕する。娘はその犯罪者を弁護する。グラントも指摘したが、確かに皮肉。そこまで相反しない親子…?
不仲とは言え、度胸やしつこさは似た者同士。
親はいつまでも親。子はいつまでも子。子供の年齢だけ親歴。
長らくその務めを果たせなかったが、ふとした事をきっかけに、また距離を縮める事は不可能じゃない。
ラストの“一緒に歩く”シーンにほっこり。
事件は無事解決し、親子の仲も。
そのまま終わっても良かったが、本作は『ビバリーヒルズ・コップ』。
車内で張り込むビリー&タガートに、アクセルが乗り込んで来て…。
これこれ! これがあっての『ビバリーヒルズ・コップ』。
今回はカムバック。変わらぬ楽しさがある限り。
まだまだ面白くなりそうな更なる新作に、やっぱり期待しちゃうのだ。
やはりあのテーマ曲が鳴り響き、あの三人が揃うと「ビバリーヒルズ・コップ」ですよね‼️エディのマシンガントークも健在で嬉しくなりました‼️エディ曰く「あと一本作る!!」‼️