「他人事とは思わせない丹念でリアルな描写の先にある地獄」胸騒ぎ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
他人事とは思わせない丹念でリアルな描写の先にある地獄
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根拠があるんだかないんだか(いや、あるんだけど必死で好意的に解釈することもできなくもない)胸騒ぎがするイヤ~な空気がずっと持続していて、最後の最後でその寸止め状態をかなぐり捨てて超胸くそ悪いサイテーな状況になだれ込む。
どんな嫌な話でも、大抵は映画だし、フィクションだしで距離感を持って観られるつもりだったが、これは本当に気分が悪くなるレベルでひどい。
いや、単に目を覆うようなひどい描写ならほかの映画にもある。この映画は全体の9割くらいまでは、ありえなさそうでありえそうな、共感はしたくないけどあるよねあるよねわかるよと言いたくなるような、日常からほんの少しズレただけの「知ってる感覚」が続くのだ。
その途方もなく居心地の悪いリアルさの先に、常識を突き抜けた理解不能な残虐さを突きつけてくるので、そのときにはもはや自分とこの映画とを切り離せなくなっていて、大変なダメージを受けたのだと思う。
とはいえ世の中にはいわれのない悪意が存在していることは頭ではわかっているからこそ、この映画を頭ごなしに否定できないのではなかろうか。しかも役者たちが上手すぎて、どのシーンも演出を含めてクオリティがやたらと高い。観たくなかったけど観てよかった。ブラムハウスのリメイクはアイデアを借りた別物であり、人に薦めるならやはり、オリジナルであるこちらの底なしの悪意を味わってほしいと思う。
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