「【冒頭のヴァカンスのシーンからドンドン不穏な空気が漂い始め、後半に向かってその想いが更に増幅していく作品。再後半は悪夢に出て来そうな、不条理で理不尽で無慈悲極まりない”おもてなし”作品でもある。】」胸騒ぎ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【冒頭のヴァカンスのシーンからドンドン不穏な空気が漂い始め、後半に向かってその想いが更に増幅していく作品。再後半は悪夢に出て来そうな、不条理で理不尽で無慈悲極まりない”おもてなし”作品でもある。】
■デンマーク人夫婦のビャアン(モルテン・ブリアン)とルイーセ(スィセル・スィーム・コク)、娘のアウネス家族はイタリア旅行中にオランダ人一家のパトリックとカリン夫婦、”生まれつき舌の無い”アーベルの家族と仲良くなる。
そして、デンマーク人の家族は、誘われるままオランダ人一家の家で終末じゃなかった週末を送る事になる。
◆感想
・率直に申し上げるが、今作、面白怖かったです。
デンマーク人家族がオランダ人家族の家に招かれ、最初は歓待されるが、徐々にオランダ人一家のパトリックとカリン夫婦の異常性が見えて来るシーン。
例えば、レストランに一緒に行き曲に合わせて踊り出すパトリックとカリン夫婦が子供が観ている前で濃厚なキスを交わすシーン。一緒に踊っていたビャアンとルイーセの嫌悪感を隠せない表情。更には会計時に、パトリックが”随分、いったな。”と言ってビャアンに支払いを任せるシーン。
ー あれは、今にして思えばパトリックとカリン夫婦の”獲物が掛かったぞ!”と言う喜びの姿ではなかったか?そして、酩酊して爆音でロックを流して運転するパトリック。ー
・更にルイーセがシャワー中に無遠慮に入って来て歯を磨く(多分)パトリック。更には、パトリックはデンマーク人夫婦の姿を部屋の窓から覗き、アウネスを自分達のベッドで寝かせる。(パトリックは全裸である。)
ー ルイーセは”もう帰りましょう!”と言ってデンマーク人家族はオランダ人家族に挨拶もなしに夜出発するが、アウネスが”大事なウサギのぬいぐるみがない!”とごね始め、Uターンするビャアン。嗚呼。そして、オランダ人家族との気まずい再会。
で、この件からデンマーク人家族はオランダ人家族に愛想笑いをしながら、過ごすはめに・・。-
■ちょっと怖かったシーン
1.アウネスとアーベルが両家族の前で踊るシーン。
アーベルの踊りが駄目だと言って激昂し、カップまで叩き割るパトリック。
- 再後半の展開を見れば、納得。一番怖いのはそれを笑顔で観ているカリンである。-
2.イタリアでは医者だと言っていたパトリックが、実は無職だという事が分かるシーン。
- ”指図されて、働くなんてまっぴらだ!”ー
3.ビャアンがオランダ人一家の屋根裏で観たモノ。
- 多数のカメラと、キャリーケース。そして、貼られていた無数のオランダ人一家と見知らぬ一家の写真。オランダ人一家の子供はアーベルではなく、どの写真でも別の子が映っているシーン。ここで、大体オランダ人一家の正体と生業が分かるよね。-
■物凄く怖くて、悪夢に出て来そうな、理不尽で、無慈悲極まりないシーン
・激しい罵声の後、浴槽に俯せで浮かぶアーベルの姿を見たビャアンが、オランダ人夫婦の家を再び逃げ出すシーン。
だが、車はスタックし、見えた家にビャアンが掛けこむも無人。
そこにやって来たパトリックの車の中にいるルイーセとアウネスと、無表情のカリン。
そして、ビャアンもパトリックの助手席に乗せられ、激しく殴打されルイーセが抱きしめていたアウネスの舌を・・。そして、最初、歓待してくれた手伝いの男はアウネスを連れて行く。
更には、ビャアンとルイーセを車外に出し、パトリックが冷たい声で言った言葉。”服を脱げ。”二人は、観念したのか諦観したのか言われるままに全裸になり、石が転がる窪地に下りていく。
そして、二人が身体を寄せている所に投げられる多数の岩。
ー 岩が頭にぶつかり地に斃れる全裸の二人。人間の尊厳迄奪い取るような無慈悲極まりない殺し方である。-
<今作は、冒頭の幸せなヴァカンスシーンから、雪崩のようにデンマーク人の家族が辿る終末迄の過程を、不穏感が尋常でない雰囲気の中描き出した不条理で理不尽で無慈悲極まりないオランダ人夫婦の”おもてなし”作品である。>