「あなたに3本のガーベラを捧げます」余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたに3本のガーベラを捧げます
内容はタイトル通り。純(ベタ)度100%の難病×純愛ストーリー。
三木孝浩監督作だから見たが、Netflix配信なのに驚くほどのレビュー数。と高評価。
そのほとんどが本作一本だけの絶賛レビュー。ああ、いつもの“アレ”ね。
主演は永瀬廉。未だ不滅の人気の某組織票。
病院の屋上で出会った秋人と春奈。
同じ高校の一年。絵を描く事が好き。
難病で余命を宣告されている…。
共通点や似た境遇から意気投合。気になり、密かに意識し始める…。
それらは似通っていても、しかし姿勢は違う。
秋人は余命一年。入院はしてないが、度々通院。
ショックで絵を描かなくようになり、目指していたコンクールや美術部にも行かなくようになる。
友人や家族とも距離を置くように…。
友人や出会った春奈にも自分の余命を話さない。
夢も目的も失い、失意の日々…。
春奈は余命半年。長らく入院しており、高校生になってからほとんど通ってもいない。
秋人よりずっと深刻なのに、それでもびっくりするほど明るい。
屋上で出会った時描いていた絵は、天国。天国に行くのが楽しみ。
驚く事を言う。死ぬのが怖くないのか…?
余命一年と言われ、絶望だった自分。
自分よりもっと余命が短い彼女。
明るさを失わない姿を前にして、感化される。影響される。何かをしてやりたいと思う。
それが、残り僅かな自分が今出来る事…。
ずっと入院しているので友達はいないが、前はいた。
学校のマドンナ的な綾香。近寄り難い雰囲気、あいつ告ろうとしてるよなんて周囲の白い目。
勇気を出して見舞いに行って欲しいとお願いするが、拒否される。訳ありの経緯が…。
家族が見舞いに来た所を見た事がない。こちらも何か訳あり…? が、父親に会いたいと言う。
事情を看護師長に。その看護師長が母親だった。
母親から聞いた父親との過去…。
それが天国に早く行きたい理由…。
明るく見えて、実は心には孤独と悲しみを抱えていた。
そんな彼女の為に…。
綾香を見舞いに。仲直り。
以来、毎日のように見舞いに。普通に学校に通ってたら全く縁の無さそうな秋人と綾香だが、これきっかけで親交を。そんな二人をからかう春奈。いやいや、ないから!
そんなやり取りすら楽しい春奈。天国に行くのが楽しみなら、“今”がもっと楽しい事を。
間もなく花火大会。春奈の病室は“特等席”。一緒に見よう。
そう約束していたある日、秋人が倒れる。
秋人も無理は出来ない身体なのだ。
倒れ、目を覚ましたのは一週間後。花火大会当日。
春奈からもLINEが…。
一瞬の楽しさで忘れていた。僕と彼女には、本当に時間と命が無い…。
一緒に見る事は出来なかった花火。それぞれの病室で、スマホ越しに…。
三木監督の真骨頂とも言えるその美しさ、儚さ…。
母親にお願いして、高校の学園祭へ。綾香が主演のユニークな『白雪姫』。
父親と行けなかった海へ。体調不調となった春奈をおんぶして、二人で砂浜を歩く。
今この瞬間を一生懸命生きる。今この瞬間を一生懸命楽しむ。今この瞬間を一緒にいる。
残された時間と命を…。
永瀬廉の好演。出口夏希の魅力。
二人がフレッシュに体現。
三木監督の青春映像美は健在。花火以外でも、何気ない日常の一コマ一コマが輝く。
周りのキャストでは横田真悠が思ってた以上にいい役所。
秋人の両親に仲村トオルと大塚寧々、春奈の母親に松雪泰子をせっかく配しながら、家族や秋人の友人らとの描写がちと勿体なかったかな…。
三木青春ラブストーリーとしてもいつもながらの好編。
だけど、絶賛組織票レビューの“メッチャ泣ける!”“メッチャ感動!”とまでは行かず。
同じ難病絡みなら、『ディア・ファミリー』の方が荒んだ私の感情を揺さぶった。
ピュアな若者純愛ストーリーより、家族愛や実話の違いかな…?
勿論、本作も悪くはない。ラストへの展開もただ悲しいだけじゃなく、温かな余韻が残る。
奇跡は起きず、遂にその時が…。
ロックが掛けられた春奈のスマホ。パスワードを探り当て、開くと、そこには春奈の一途な想いが…。
ずっと秋人の片想いだと思っていた。
そうではなかった。春奈も想っていた。
屋上で出会ったあの日。唯一“魔法の言葉”が効かなかったあの時から。
あの時、声を掛けてくれて、ありがとう。
たくさんの思い出を、ありがとう。
たくさんの幸せだった“今”を、ありがとう。
ガーベラの花もありがとう。本数の花言葉、知ってたよ。
手術を受けた秋人。
無事成功。再び絵を描くようになり、春奈の想いを胸にこれからの人生を…ではなかった。
転移。秋人にも“その時”が近付く…。
見舞う綾香。
こっそり秋人の爪に3本のガーベラをペイント。
亡き後秋人のスマホには、綾香は花言葉を知らないだろうから、後で教えてやろう。
知ってたよ。だから書いた。
私以上のもっともっと大きな“それ”も見たよ。
6本、5本、3本…。
本数によって違うガーベラの花言葉。
秋人から春奈へ、春奈から秋人へ、綾香から秋人へ。
一生懸命生きた証し。
相手を思った証し。
愛した証し。
この花を捧げます。