「韓国人のフランスコンプレックスを題材にした喜劇的映画。あんまり深刻に捉えない方が良いよ。」旅人の必需品 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国人のフランスコンプレックスを題材にした喜劇的映画。あんまり深刻に捉えない方が良いよ。
「月間ホン・サンス」と銘打って来年5月まで新作5本が上映される。同時に「別冊」として旧作5本も再上映。全10本観ると何かプレゼントがもらえるそうだ。
私は「ソニはご機嫌ななめ」の頃からの観客なので、もう少し叙情的だったと聞く初期作品はあまり観ていない。ただ反物語としてのスタンスはあまり変わっていないのだろう。ホン・サンスの作品では概ね、あるひとつの事情や、あるひとつの感情が、日常風景の中に切り取られて繰り返し繰り返し表現される。それは例えば「ある女は高飛車だ」とか「ある男はクズだ」といった単純な事実であり、それらがモチーフとして組み合わさった物語に発展することはない。まあ簡単に定義すると寓話的映画というか。
本作も、イザベル・ユペール演じるイリスという謎めいた(というかなんかフワフワした)フランス人旅行者を巡るエピソードが繰り返し繰り返し紹介されるだけの映画である。
他の方のレビューで、イザベル・ユペールが美しい、40歳代にしか見えない、といった書き込みがあったがいかがなものか。1953年生まれの72歳。私には年相応にしか見えなかった。セザール賞を十数回受賞した大女優らしいが、本国以外での公開が少ないため私はホン・サンス作品の他は観た記憶がない。日本でいうと吉行和子さんみたいなものか。ただ、妖精的な外見(歩き方をみて!)もあって、いかにもフランス女優という感じは強くする。そこが監督の狙いなんでしょう。
ところでタイトルの「needs」だが、配給会社は「必需品」と訳していて、ポスター等でもイリスの必需品として「詩と、マッコリと、韓国人のボーイフレンド」などとコピー展開をしている。私はこれは間違いだと思うのですね。
マーケティング用語のニーズ=需要という風に捉えたほうが良い。つまり、韓国人がフランス人、それも女性の旅行者、エトランゼに求めているもののことを言っているのでしょう。これは日本人もそうだけど、韓国人はフランスという国を文化大国、詩的な霊感に満ちた国だと思っている。だからフランス語を習いたいし(特に余裕のある金持ちほど)男子はフランス女性と付き合いたい(女子もそうかもしれないけど)
それともう一つ、大事なポイントは、韓国人はおそらくは自分たちの国の詩人の書いた詩をフランス人にこそ認めてもらいたいと思っているんですね。だからこの作品の中にはユン・ドンジュ(尹東柱:国民的詩人)の詩にイリスが接する機会が繰り返し登場する。閉まっている図書館の前で、イリスが女の子に頼まれてユン・ドンジュの詩をフランス語で朗読してやるシーンがあったでしょう。女の子はほとんどイキそうになっているじゃないですか。あれがニーズが満たされた状態ですね。
つまり、イリスは韓国人のフランス人に対するニーズを満たしていることになる。このタイトルはそういう意味だと思う。変な英語だけどね。
