「単純化された戦闘が軽薄に感じる」沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
単純化された戦闘が軽薄に感じる
総合:60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
原作は読んでいた。たまたまテレビをつけると放送していたので2日連続で鑑賞。果たしてこの「沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦」で合っているのかどうかは自信がないが、作品内ではとりあえず東京湾では戦っていた。テレビ版では「特別編」という副題がついているので、色々と違うところもあるのだろう。
しかしこの原作は冷戦が終わる前の1980年代後半に連載が開始されたという古いもので、そこから現実の世界は冷戦が終了し中国が台頭と、劇的に変わってしまった。中国がその当時から軍事費を数十倍以上増額して軍事増強し、太平洋の西半分を中国の支配とすると主張し、台湾は中国の領土で核心的利益だと譲らなくなった。日米を始めとする太平洋の各国がそんな中国からの軍事的圧力を受けて、中国の武力攻撃に連携しながら備えているという状況である。
今更この日米対立という主題で映画を作ってもなあとも思う。この原作で映画を作るのが遅すぎるのではないか。
それはそれとしても、原作の時から物語はぶっ飛びすぎて現実感はない。それがやたらと急かして物語が速く進むので忙しない。しかも数分間の時間の経過と数日間の時間の経過が同じように描かれるのは、混乱してしまって良くない。
潜水艦を始めとする戦闘の軍事技術的な考証も、細かな技術的な部分が大幅に単純化されていて良さが出ていない。Captainを大尉ではなく大佐と訳していたし、軍事的知識を監修する専門家が映画にはついていなかったのだろうか。戦闘では単純な撃ち合いになっていて、撃った、迎撃した、外れた、当たったというだけなのはつまらないし、自分が吹き飛ばされて死ぬかもしれないという緊張感が薄い。兵器が当たるかもしれないという恐怖に竦み怯える兵士も描写されない演出にも満足できない。だから指揮官たちの背負っている責任が軽く見えてしまう。原作にあったこのあたりの描写が、映画では消え失せているのは残念だった。
