「原作への無理解」箱男 MoveDeckさんの映画レビュー(感想・評価)
原作への無理解
あの名作『砂の女』(勅使河原宏監督)に並ぼうというのはずいぶん図々しい人だと思いながらも好奇心は黙しがたく、映画館に行ったのだが噴飯ものだった。
石井監督は箱男をコスプレの一種くらいにしか考えてない。だからつまらないバトルシーン(しかも画面が暗くて迫力なし)を延々と撮っているのだろうと思う。箱男は変身ヒーローものでもないし、戦隊ものでもない。
そもそも箱男というのは都会の中で孤独でありたい、自分のテリトリーには誰にも入ってきてほしくない、という欲望と同時に、誰かとつながっていたいという願望とを併せ持った矛盾そのものの存在である。そして、この矛盾は現代にもそのままつながっているし、世界中の人が理解出来るテーマだ。
なのに、何だろう、この無理解さは。
頭を使って生きてこなかった人間の、底の浅さが100%表われた作品である。
しかも、原作にない「軍医」どの(佐藤浩市)は途中から出てこなくなるし。
だったら、最初から出してくるなと言いたい。
またこれは日本映画全体の問題だが、とにかくセットがしょぼい。
しょぼすぎるから暗くして誤魔化そうとしているのだろうが、そんなのは観客にとっては迷惑以外の何ものでもないし、予算がなくてもきちんとセットやロケをやっている監督はいくらでもいる。
とにかく増上慢というか、自己肥大というか、こんなものを安部公房原作とか言ったらダメですよ。
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