「やはり観念の映像化はむずかしい?」箱男 オプンチアさんの映画レビュー(感想・評価)
やはり観念の映像化はむずかしい?
『友達』のアレンジでポン・ジュノ監督のパラサイトが成功したように石井監督にも期待していたのだが、どうもいけない。原作の“解釈“に拘泥していてかなり息苦しい。いかにも再現された箱ではなくヴィジュアル的にもっと奇抜な箱でもよかったのでは?これが監督として極めた箱だみたいな。所詮、映像は観念に勝てない。例えば、世界一の美人と言えば話の“読者”なら個々の想像で成立するが、映像ではどんな女優やAIでも異論が噴出するだろう。作家から”娯楽にしてくれ”と言われたらしいので思い切ってSFにしちゃうとか…
ただ劇中の女優が山口果林とダブって好印象。この作品は君へのラブレターだよの言葉を安部公房から貰った山口果林(当時不倫 のちに同棲)安部のどの作品にも共通する謎めいていて主人公につれない女性像は山口や安部夫人の影響かも。
山口果林著『安部公房とわたし』(2013)。安部公房没後20年にあたる年、「人生の後始末を考える年代に突入」した彼女は「透明人間にされた自分の人生を再確認できれば」、そして「いつまでも過去の亡霊に取りつかれていないで、自分の人生を取り戻しなさいと、ある人が言った。そうなりたいと心から願っている」とエピローグに記しています。愛する人を亡くして再出発を考えるのに20年かかるのか、安部が亡くなってずっと片付けられなかったキングサイズベッドを処分する決心がつくのに20年かかったのか。数少ない理解者だった出版社のある人は最後まで、安部と(山口を)結婚させてあげなかったことを後悔していたらしい。彼女は手帳になんでも書くメモ魔。頭がよくて手作業が好きで(安部も同様)。私生活暴露みたいな本では全くない。彼女は今70代の真ん中位かな
コメントありがとうございます。キーンさんはそんなけつの穴の狭い人ではないですよね~ 山口果林さんのことは全然知りませんでした。真面目そうな女優さんであんまし印象になかったので、余計に気になります。ありがとうございます😊
追記
安部の不倫に業を煮やし嫉妬に狂った夫人とのドロドロ愛憎劇が20年続く、その始まりに書かれた本作。本当は箱の中からただ葉子を見たいだけの男の話だとしたら?原稿用紙3000枚を書き潰し苦心しながら理論武装した安部の目論見をズルリとはぎ取つてしまえばそんな結論になる。だから小説の哲学的考察などすべて虚しい。難解でも何でもない。箱男は安部の実像に最も近い。映画化によって恥部をさらしたくないので“娯楽に…”と言ったのかも
(安部の大ファンです)