劇場公開日 2024年11月22日

「妻との成り行き」ドリーム・シナリオ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5妻との成り行き

2024年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

劇場でトレーラーを観て、その奇抜な設定と異様な雰囲気に期待いっぱいで楽しみにしていた本作品。リピータークーポンを使い、公開初日の丸の内ピカデリーへ。平日午前中ですがそこそこの客入りで、A24は日本にも固定ファンを着実に増やしているようです。
と言うことで、本作を観た私の感想は「予想に違わず面白かった」ですが、やはり万人受けというわけではなく「A24らしい」カルトムービー。正直、一度観ただけでは理解しきれませんでしたが、それでも不思議と納得度は高い。「夢」と言う身近だけど謎の多い現象を利用したギミックは、想像しやすいからこそゾッとします。そして、唐突な場面転換や不意に入り込むサブリミナルを狙っているような映像など編集も独特で、時折「今観ているのは夢か現実か」迷わせるシーンも、なかなかに巧妙で安心できません。とは言え、ギミックはあくまで要素の一つであり、一番の見所は「人間」そのもの。そこはやはりA24作品として裏切りません。
大きく3部に分けられる構成ですが、「様々な距離感の他者たち」の反応を、その状況の変化に応じて丁寧、且つ絶妙に表していて全く違和感を感じません。当然、一番近しい存在である妻・ジャネットとの成り行きは目が離せません。平凡なくせに妙に見栄っ張りで、ついつい状況に流されがちなポール(ニコラス・ケイジ)。前半、そんな夫・ポールをとても愛しているジャネットの気持ちがこれ以上なく伝わってくる夫婦のやり取りがあるからこそ、中盤以降の急展開に二人の関係性も変化していき、そして最後のシーンに至るまで印象深く観続けることが出来ます。ジャネットを演じるジュリアンヌ・ニコルソン、正直今まであまり印象に残っていない俳優でしたが、参りました。とても素晴らしいです。
なお、それぞれは短いシーンとは言え、直接的な暴力シーンや血飛沫などゴア描写もあるため、その手が苦手な方は要注意。ただ、その観点については目を覆うほどの怖さはありません。前述したようにむしろ怖いのは「普通の人たち」のふるまい。そして、それに応じてあの手この手でリアクションするポールを演じるニコラス・ケイジがめちゃくちゃ巧くて面白い。一時期はB級映画に出まくっていましたが、それは多額の借金を返済するためだったそうで今は無事に完済。確かに最近はユニークなアイディアの作品を選び、自ら製作の立場でも加わっていて本気を感じます。もし、どこかの時点で止まったまま彼に諦めてしまった方、本作は必見ですよ。

TWDera