「LOSER」ソウルの春 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
LOSER
韓国で実際に起こったクーデターを基に作られた作品で、韓国映画はこういうジャンルを手掛けるのがうまいなと改めて思いました。
時系列的には「KCIA 南山の部長たち」の後の出来事らしいので違う作品でもこうして繋がるのはちょっと面白かったです。
チャン・ドゥグァン(のちの韓国大統領)があの手この手を使ってクーデターを企てるのをイ・テシン将軍が阻止しようと奮起する情報戦がメインです。
ドゥグァンは頭が良いというよりかは、手段を問わない脳筋寄りに見えて、結構失敗しそうなものでさえもアイデアでゴリ押すという型にハマらないタイプでとっても厄介そうでした。
対立していない陣営をどうやって自分たちの味方に取り込めるかの攻防はとても見応えがあり、うまいこと行っていたのに権力に叩き潰され、成功目前まで行ったのに味方が足を引っ張ったりと思った通りに行かずにモヤモヤさせられるのも当時を体験しているかのようでした。
立場によって抱える責任に葛藤するものもいれば、自分の立場に甘えた判断を下すものもおり、緊迫した状況で人間がどんな行動を取るのかというのが事細かく描かれていて面白かったです。
かつての友人を任務とはいえ殺してしまったり、判断は間違っていないのに締められてしまったりととにかく無念無念の連続でした。
結末こそ見えていたのに、テシン側の勝利を願っていましたし、そこが叶わないとポキっと折れてしまった瞬間は中々に絶望ものでした。
バリケードをくぐっていくけれどドゥグァンには全く歯が立たず、テジン側は高みの見物。
そこから勝利を確信したテジンの高笑いにはとてつもない狂気が宿っておりゾクゾクさせられました。
その後の写真でクーデターの首謀者たちは全員国に関わる役職についており、長らく国を支配する事になったというのが現実の話なんですから戦々恐々としてしまいました。
エンドロールも仰々しい曲なので観終わった後に全くスッキリできないのも新鮮な体験でした。
胸糞と言われていた割にはまだマシかなとは思いましたが、現実でこれがあったとなると相当にキツいよなと底知れない罪悪感にも襲われました。
韓国の歴史を知れば知るほど今作の良さが分かるんだろうなとは思いました。
大々的な人間ドラマで盛り上がりを作る訳ではなく、最小限の脚色でリアルを魅せる作りが凄かったです。
こういうタイプの作品を見るたびに毎回思ってるのでいい加減書籍の一つや二つくらい触れるべきだろうと自分にメスを刺しておきます。
鑑賞日 9/12
鑑賞時間 12:05〜14:40
座席 C-4