「緊張感がすごい」ソウルの春 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
緊張感がすごい
手に汗握って観ました。
緊張感がすごかった。
モデルになった全斗煥と盧泰愚らによって引き起こされた軍事クーデターにより、このあと悪夢のような恐怖政治時代を迎えることを、のちの世に活きる自分は知っているので、結果がわからないはずはないのだが……
知っていてもなお怖かったし、画面から目が離せなかった。
また、出演者すべての演技力が高いと思いました。
特にファン・ジョンミン演じるチョン・ドゥグァン(=全斗煥/チョン・ドゥファン)の権力に妄執を抱く醜悪さと、当時の政治家(特に国防長官と国防次官)の我が身可愛さだけな無能さが強調されていたのが、演出演技両面ですごいと感心することしきり。
詳細が記録に残っていない事件であり、多くは想像で補った創作部分もあるだろうが、リアリティはすさまじく。
そしてこれがヒットしたということは、韓国にとっては「こうだったのだ」と納得するくらいひどい時代で、忘れてはならない歴史と受け取られているのであろう。
今まで私の観た同時代映画の発端である、韓国の「粛軍クーデター」をエンタメとして極めて優秀な映画化に成功していたと思います。
朴大統領暗殺の『KCIA 南山の部長たち』、
光州事件の『光州5・18』『タクシー運転手 約束は海を越えて』、
軍事政権下の「華城連続殺人事件」を扱い、杜撰な捜査の挙句の冤罪裁判を公権力で正当化しようとした警察の無能を描いた『追憶の殺人』などなど。
本作を面白いと思って、まだこれらの映画を観ていない方には、本作の鑑賞後に観ることをお勧めいたします。
(私自身も、未見の『弁護人』『ペパーミント・キャンディ』などを観てみようと思います)
また、私が韓国に初めて行ったのは1990年代だったから平和なものでしたが、1970~80年代に企業進出のため韓国に渡った当時の日本人たちは、よく無事で生き残ったなぁと思うことしきりでした。