劇場公開日 2024年8月23日

「圧倒的緊張感で描く一夜の攻防!」ソウルの春 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0圧倒的緊張感で描く一夜の攻防!

2024年8月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

予告を目にしなかったのでノーマークの作品だったのですが、初日のレビュー高評価につられて鑑賞してきました。みなさんの評価どおり、かなり見応えのある作品で、とても勉強になりました。主にたった一夜の出来事を描いているのですが、軍内部の動きをリアルタイムで詳細に追うような展開から目が離せませんでした。

ストーリーは、1979年に韓国で大統領が側近に暗殺され、暗殺事件の合同捜査本部長で保安司令官でもあるチョン・ドゥグァンは、この機に乗じて国の実権を握るべく、陸軍内で自分の息のかかった将校で組織された「ハナ会」を使ってクーデターを決行するが、正義感あふれる軍人として知られ、首都警備司令官に就任したイ・テシンは、いち早くドゥグァンの野心を感じ取り、命を賭してその前に立ちはだかるというもの。

本作は実在の事件をもとにしたフィクションであるとのことなので、おそらく大筋は史実どおりなのでしょう。しかし、恥ずかしながら韓国史に疎く、わずか45年前にこれほどの軍事クーデターが起こっていたとは全く知りませんでした。内乱や戦争は、遠く地球の裏側で起きているものばかりではないと感じ、ぞっとします。

大枠はクーデターにより独裁支配を狙うドゥグァンとそれを全力で阻止するテシンという構図にまとめ、それぞれに野心家と清廉軍人という対極となる性格づけを行なっているため、全体像は比較的とらえやすくなっています。そして、この二人の思惑、その妨げとなる大統領や上官の意向、そこで繰り出す形勢逆転のための一手など、目まぐるしく攻防が入れ替わる展開で最後まで予断を許しません。中でも、侵攻する軍をめぐる橋での攻防、ラストでバリケードを挟んで対峙する両軍の駆け引きには、手に汗握る緊張感が味わえます。

ただ、中心となる二人以外にもけっこうな数の軍人が登場するのですが、名前も顔も覚えられず、ほとんど区別がつかないのには参ります。加えて、その肩書きからおおよその職務内容は推察できても、軍部内での立場や上下関係がわかりにくかったのも残念です。とはいえ、地図上で進軍ルートを表示したり、盗聴員を挟んだ画面構成で見せたりといった工夫のおかげで、情勢の把握に困ることはなく、作品世界に浸ることができます。特に、韓国史を何も知らない自分は、結果が見えずに最後までずっとハラハラしていました。と同時に、結末を目の当たりにして、これが史実に基づいたものであることを改めて実感しました。そして、韓国国民はこれをどう受け止めているのか、関係者はその後どのような人生を送ったのか、ちょっと気になりました。

主演はファン・ジョンミンとチョン・ウソンで、作品全体を牽引する圧倒的な演技が光ります。脇を固めるのは、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、イ・ジュニョクら。

おじゃる
Mさんのコメント
2024年9月4日

韓国の保守派からはこの映画を見せることに反対の意見が上がっているそうです。

M