「この時代の事件は一般的に知られてはいないものの…」ランサム 非公式作戦 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
この時代の事件は一般的に知られてはいないものの…
今年319本目(合計1,411本目/今月(2024年9月度)5本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
一応、「史実に基づく」とはしている映画です。
この時期に同じような事件が起きたのは日本も韓国も、あるいは北朝鮮も同じで、同趣旨の映画がすでにあるので既視感がある方もいるかなぁ、といったところでう。
かつ、この事件は韓国国内の事情だけではなく外国ほかの軍事情報という非常に特異な情報をもとにするため、かなりの部分で推測に基づく部分がありますが、仕方がない部分と明確に配慮の足りない点があります(後述)。
日本ではこの事件は外務省のページでは1ページほど扱われているだけの扱いです。当時は日本ではいわゆる北朝鮮の拉致問題が、同じ「大使館を介した事件」の中で少しずつ明らかになってきた中で起きた事件で、後者の事件のほうが日本では連日報道されたため、本事件は外務省のサイトなどでもやっと存在するか程度の情報量だったりします。インターネット等もなかった時代ですし…。
一方でこのような事情であるため、かなりの部分が非開示となったこの映画では結局アクションものなどに寄せることしか実際にできず(私が指摘した「ボストン1947」等と違い、軍隊等を扱う映画では情報開示の観点で描くことに限界のある映画もある)、結果的にどういう視点で見るも何もがなくなってしまっているような気がします。
一方でこの映画で起きた「救出作戦」がなぜ「非公式作戦」であったのかは少しだけ描かれるところ、結局のところ「大統領選対策」と、「控えていたソウルオリンピックに傷をつけずにするため」という2点に大半がかかっており、韓国が真の意味で情報公開をはじめて諸外国に追いつくのは、この事件のあと、1990年ごろと少し後になります(この時期に、同じく済州4.3事件や麗水順天事件が問題視されていた)。
大きな意味でとらえればアクション映画で、詳細については諸般の事情で「開示できない」タイプの映画でありそれはもう仕方がないので、それでしか見ることはできないと思います。
採点は以下まで考慮しています。
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(減点0.3/一部の描写が史実にそっていない)
この映画では、韓国政府の象徴である「青瓦台」(大統領官邸)が何度か出ますが、この施設もまた何度か工事していたりと「存在していない時期」があります。この映画が参照する1987年がまさにそれで、青瓦台はこの当時存在していませんでした(1989年に着工開始、1991年に完成。この完成をもって、以後は小規模な工事はあっても「大統領官邸」として使われるよううになる)。
この部分はまぁ細かいところですが、史実に正確に描いてほしかったです。
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