レクイエム

劇場公開日:2025年10月4日

レクイエム

解説・あらすじ

1970年代にドイツで実際に起きた悪魔祓い事件をモチーフにしたドラマ。のちに「落下の解剖学」「関心領域」などに出演するザンドラ・ヒュラーが信仰と精神疾患の狭間で揺れる主人公を演じ、長編映画初主演作にして2006年・第56回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞した。

1970年代、ドイツの田舎町。てんかんを抱えるミヒャエラ・クリングラーは、敬虔なキリスト教徒の母の反対を押し切り、教育学を学ぶため大学に進学する。新たな生活を始めた彼女は、そこで旧友ハンナと再会し、医療的な助けを受けるよう勧められる。しかしミヒャエラは発作の再発をきっかけに薬の服用をやめ、自分が悪魔に取り憑かれたと信じるようになる。心の闇を深めていくミヒャエラの前に、信仰を揺るがす2人の神父が現れ……。

共演は「グッバイ、レーニン!」のブルクハルト・クラウスナー。日本では、ザンドラ・ヒュラーの出演作を集めた特集上映企画「特集 ザンドラ・ヒュラー 変幻する<わたし>のかたち」(2025年10月3日~、YEBISU GARDEN CINEMA)にて劇場初公開。

2006年製作/93分/ドイツ
原題または英題:Requiem
劇場公開日:2025年10月4日

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(C)2006 Hans‑Christian Schmid/23/5 Filmproduktion GmbH

映画レビュー

4.0 ザンドラ、27~28才の頃

2025年10月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

驚く

主演のザンドラ・ヒュラーの出発点は今も続けている舞台演劇、この映画は彼女にとって初めての長編映画だ。撮影当時の年齢は27~8歳辺りだったろうザンドラが、この映画でベルリン国際映画祭の主演女優賞受賞(銀熊賞;審査員長はシャーロット・ランプリング!)というのは本人も驚いたかも知れない。彼女の演技は素晴らしい。

強さと学びへの熱い思いがありながら、田舎町でカトリックの力が強い地域と家庭に育ち、母親との関係が非常に悪い21才の女性、ミヒャエラ(ザンドラ)。あんな抑圧的な母親がいるのかと思った(が、理由があったにせよ、気分の浮き沈みが激しかった母親に私達三人姉妹も翻弄された、過去の話だが)。父親は優しく励ましてくれるが最後には「もう限界だ」、ボーイフレンドにも「もう限界だ」と言われてしまうミヒャエラ。辛うじて理解してくれて安心できるのは、年の離れた妹とギムナジウムの同級でテュービンゲン大学で偶然に再会した女友達のハンナだけだ。田舎の閉鎖性と病苦への偏見ゆえに彼女の純な信仰心がかえって仇になった。宗教がカルトになった瞬間だ。ミヒャエラは有り得ない「悪魔払い」を何度も受け衰弱死した、という文が最後にスクリーンに映りショックを受けた。70年代に!

ミヒャエラにはキラキラと輝く時もあった。学生寮の自分の部屋に初めて足を踏み入れた時。パパがタイプライターをプレゼントしてくれた時。ハンナに髪をカットしてもらってすっきりした時。学生仲間と大音量の中で踊った時。友達と湖まで出かけて水の中に下着姿で入ってずぶ濡れになった時。男子学生とだんだんと仲良くなっていく幸福感。おしゃれな服を買ってハンナに褒められた時。ザンドラ・ヒュラーの笑顔と解放感に私も解放された。

精神の病に対する偏見がまだまだ大きかった時代。今でもまだ残っているだろう。「宗教」(実はカルト)の名のもとで苦しむ「宗教二世」だってまだまだいて何も解決していない。

40才になった途端に仕事がなくなるハリウッドの女優達。外見命、ルッキズムと男性中心のエンタテイメント世界からなるべく距離をとるザンドラ・ヒュラーのこれからがますます楽しみだ。彼女の映画をもっともっと日本で上映して欲しい。

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talisman

3.0 ドラマ性を廃して、メンタルヘルスの闇を淡々と綴った作品

2025年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

科学(医療)にも宗教にも限界があり、家族や恋人・友人さえも救うことができない。よるべなき不安の増幅に、ずっと居心地の悪さを感じた。ただ悪魔祓いは出てくるがホラーではない。

実話に基づいた内容でもあってか、ドラマチックな掘り下げを極力廃していて、観る側は感情移入のしどころが見出しにくい。

暗い画質に70年代のドイツの田舎町の閉塞的な雰囲気はよく出ていた。

そしてサンドラ・ヒュラーが若い!(28歳の映画デビュー作)。彼女の圧倒的な存在感と入魂の演技から目が離せない。

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sugar bread