「とんでもない高技術」フォールガイ 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
とんでもない高技術
とんでもない高技術だ。
膨大な予算と準備日数が必要なクライマックス用のスタントを多用、
劇伴も有名曲を編曲、それも多用、
現場あるある、バイオニック・ジェミーの効果音、名作会話の数々、
コアターゲットは映画館を好む層、
または映画好きの人たちに絞っているのかもしれない。
シナリオは、メインプロット、サブプロットで、
100分くらいでまとめると上記のコアファンは満足しない。
凄すぎるスタントを増量するには映画3本分くらいのストーリーが必要だ。
どうするか?
主演トム・ライダーとコルトの「フォールガイ」のメインプロット、
監督ブリー・ラーソンとライアン・ゴスリングの「メタルストーム」のサブプロット
(サブプロットといってもメインにプロット並みに太くして全体で2時間以上にする昨今の良作品の流れ)、
このスタントマンとしてのフォールガイ、
恋人としてのフォールガイ、
ダブルミーニングで、
ダブルプロットで巧妙に展開、
細かなサブプロットの敷き詰め方も隙がない。
通常の魅せ方の限界を突破する為に、
フォールガイらしいタフなチャレンジが必要な破綻ギリギリの構成だ。
そんなチャレンジをエンターテインメントに昇華させる、
ライアン・ゴズリングとブリー・ラーソンの芝居含め、
すべてがプロの高技術だ。
【蛇足】
ブリー・ラーソンが前半で、
カメラオペレーターとして使用するピーウィードリーは、
近年復活しつつある老機種でありながら、
その低い位置での撮影が可能な特性や優れた操作性で、
一部のDOPやグリップチームに未だに支持されている。
老機種にもかかわらず、
この機種が何度も登場することで、
ラーソンが高い技術力を持つスタッフや、
機材を選択しているという設定が、
観客に対して明示されている。
パンサーなどの多機能機種に押されている中で、
この選択が象徴するものは、
まさにフィルムでの製作とともに、
映画製作における彼女の確固たるビジョンとこだわりに他ならない。
【蛇足の蛇足】
シナリオの構成が仮にあくまでも仮に、
【序破急】や【起承転結】を定型とするのであれば、
昨今の流行は【急急急】や【起転転結】
もっというとマルチバースで【急A急a急B急b】や【転1転2】で、
圧倒するパターンが増加している。
これはシナリオというよりも、
エンターテインメント産業における映画そのものの、
終わりの始まり、
延命治療のようなものだ。
セブンイレブンは看板を替えれば延命可能だが、
映画館は変える看板が尽きている、
映画館そのものも構造上、
転用が不可能だ。
そうならないように一本でも多くの作品、
世界中のスター、ヒロイン、フォールガイを観ていたい。
ちなみに、
「蒲田行進曲」の英題は、
「Fall Guy」
しらんけどって言いたいけど、、、、