「いつのまにか自分も水のないプールに立たされていた」水深ゼロメートルから ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
いつのまにか自分も水のないプールに立たされていた
野球部はちやほやされてみんなが応援してくれる。青春している。でも私たちは見向きもされない夏休みのはぐれ者。青春の隅っこに追いやられた気分の女の子4人が、水のないプールで掃除をしている。野球部の練習で、グランドから飛んできてプールの底にたまった砂をきれいにするために。
なんとなくではあるが、「桐島部活やめるってよ」や「アルプススタンドのはしの方」に通じるものがある。
「桐島―」では、桐島の存在は完全に封印され、「アルプス―」では、応援席の風景のみで、野球の試合の模様は完全に封印され、本作もまた、野球部の練習風景は完全に封印された。運動部と文化部、帰宅部との間の無意識なひずみ、そして壁。
ただ、自己肯定と否定の間を右往左往する女の子たちの会話を聞いていると、そんなものはどうでもよくなってくる。ただ、所在なげて、宙ぶらりんだったほろ苦い青春。炎天下の夏休みの学校の屋外で、得体の知れない疎外感にさいなまれた自分。あの忘れかけていた肌感覚がよみがえる。だから、水のないプールの中、盆踊り、メイク、エアースイミングで、疎外感をまぎらわす彼女らに、自然と寄り添ってしまうのである。
いつのまにか自分も水のないプールに立たされていた。
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