「無自覚に傷つけられる女子たちは、乾いた世界の中だけ、本音をぶちまけられるのだろうか」水深ゼロメートルから Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
無自覚に傷つけられる女子たちは、乾いた世界の中だけ、本音をぶちまけられるのだろうか
2024.5.7 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(87分、G)
徳島県立徳島高校の同名舞台の映画化作品
プール掃除を任された女子高生たちの日常を描いた青春映画
監督は山下敦弘
脚本は中野夢花
物語の舞台は、徳島県にある徳島南高校
その日、水のないプールに、補習としてココロ(濱尾咲綺)とミク(仲吉玲亜)が呼び出されていた
体育のプールの授業に出なかったと、体育教師の山下(さとうほなみ)に呼び出されたのだが、なぜかインターハイに行っているはずの水泳部員・チヅル(清田みくり)までそこに来てしまう
さらに、彼女を心配する元部長のユイ(花岡すみれ)までやってきてしまい、4人でプール掃除をすることになった
ココロは阿波踊りが好きで「男踊り」を平気で踊り、ミクは「メイク」が大好きで、校則違反を承知で濃いめの化粧をしていた
チヅルは野球部員の楠(井手亮太)に負けたことで自信をなくし、インターハイを見にいくことに抵抗があった
それぞれは日常に不満を抱えながら、水のないプールにて、心情をぶちまけ始めるのである
映画は、ほぼワンシチュエーションになっていて、プール以外には野球部のグラウンドと、プールの外側が少し映る程度だった
男子は4人登場するが顔は映っておらず、顔が映るのは4人と山下先生だけになっている
その他にも声だけの出演(山本の友人とインターハイの実況)ぐらいしか登場せず、見事なまでの集中的な会話劇になっていた
パンフレットにはシナリオが載っているので、聞き逃した人は購入しても良いと思う
ちょっと際どい制服での動きなどがあるので、どこからどう見てもフェチ映画の域を出ない
それでも、語られる内容は「男子が聞きたくない女子のリアル」になっていて、特にプールに入れない理由は生々しい
山本先生とミクの校則に関する会話もリアルで、ガチで言葉が詰まって激昂する先生というところもツボになっていた
言葉を選ぶ大人と、直情的な子どもという構図になっているが、「誰のための校則なのか」という芯を食ったような言葉も飛び出すので、結構ハラハラしてしまう
いずれにせよ、女子に幻想を抱いている人は見たらダメな映画で、抱えている闇を知りたい人ならOKだと思う
前半のぐだぐだトークも、後半には若者の主張みたいに転換するので、ほのぼの日常パートだけを眺めたいんや!という人にとっては後半は地獄かもしれない
若さゆえに疑問も、大人になればわかることが多いのだが、それを現時点で理解しろと言っても無理だと思う
なので「騙されたと思って」というテイストになるのだが、それが通じる関係性なら、若者の主張みたいな論戦にはならないのかな、と思った