劇場公開日 2024年2月16日

「漫画チックだが普遍的本質があった」コーヒーはホワイトで R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 漫画チックだが普遍的本質があった

2025年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

冒頭からティーンズ向け漫画の実写版かと思ったら、オリジナルが脚本だとわかって驚いた。
つまり、よくできていた。
秀逸なのは「入口」で、かなり若い世代にも受け入れられる入り口だが、徐々にミステリーの謎が深まってゆく。
伏線もなかなか良く、ある程度限られた登場人物の中だけで話が進むのも、若い世代に見せたい思惑を感じる。
また、
ミステリーを解き明かすのは、刑事コロンボのようでもあり、名探偵コナンのようでもあり、響のようでもある、絶対的な推理。
証拠そのものよりも、まったくブレない推理で犯人をぎゃふんと言わせる。
ある種の爽快感とヒーロー的要素を持つ。
逆に、
依頼者ユウナの人間性に考察する、すべき箇所があるように思った。
彼女は美人で仕事もできるが、人の気持ちがわからないという欠点があるのではないか?
だから犬嫌いの大貫に対し、勝手な自身の気持ちを押し付けるように犬のキーホルダーや写真を送り付けてきた。
大貫は犬が嫌いで、彼女の勝手な言動にフラストレーションが溜まっていた。
これが彼女を見かけた際にでた行動だった。
大貫がユウナに何をしたかったのかわからないが、犬がいち早く嚙みついた。
そして、ユウナは自身ではなく犬のストーカーなどという頓珍漢な依頼でやってきたのだろう。
しかし、それこそが本丸である連続通り魔殺人事件の解決へとつながった。
さて、
この変な物語の設定には、もう一つ大きな背景がある。
主人公モナコを助けてくれたミチルの死という過去
モナコは、自分の所為でミチルを死なせたと思っている。
この背景があり、事件を解決していくにつれ、「人の心」に触れると同時に、「変わらないものなどない」という普遍的なことに気が付いて行く。
最後のシーンでモナコは、どこかの丘でコーヒーを飲んでいる。
彼女はきっと、当時自分を攻め続けたことを思い、次第にミチルが今の自分を指導してくれたことに対する感謝が湧き、深い心の傷が徐々にコーヒーによって和らいでいくことを実感していたのだろう。
過去の辛い想いでも、やがてゆっくりと変化していく。
この過程の中で成長があり、赦しがあり、そして感謝があるのだろう。
この事件の設定は漫画チックにぶっ飛んでいた。
推理も「そんな馬鹿な」と突っ込みたくなるような感じだった。
しかしこの物語は、モナコの心の傷が事件の解決に沿うようにゆっくりと解きほぐされていく様子を描いている。
若い世代であっても、他人には言えない心の傷はあるだろう。
今感じるその「傷」は、自身の成長と共に変化することを説いている。
この部分が良かったと思う。

R41
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