「ブルーがかわいくないのよ…」ブルー きみは大丈夫 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ブルーがかわいくないのよ…
それほど期待はしていなかったのですが、「ディア・ファミリー」鑑賞後に時間があったので、ついでに観てきました。仕事帰りのハシゴ鑑賞で集中力が落ちていたのか、おもしろくないこともないですが、それほど引き込まれることもなかったです。
ストーリーは、母を亡くし、父も手術のために入院したことで、祖母宅に世話になることになった少女・ビーが、マンションの上階に住む男・ビルが紫色のもふもふの生き物・ブルーを連れている場面に出くわし、彼が創造主から忘れ去られたイマジナリーフレンドの新たなマッチング相手を探していることを知り、その手伝いをすることになるというもの。
イマジナリーフレンドを扱った作品で、創造主から忘れられると消えてしまうという設定は、昨年観た「屋根裏のラジャー」を思い出します。イマジナリーフレンドの消滅を避けるための解決策は異なりますが、そのための奮闘を通して主人公の変容を描くという点は共通しているように思います。本作においては、自身の置かれた状況を前に、「もう子どもじゃない」と強がるビーが、自分の心を素直に見つめ直し、本当の意味で大人への一歩を踏み出した姿が鮮やかに描かれていると感じます。
また、さまざまなイマジナリーフレンドと俳優の共演は、実写ならではの映像美を感じさせます。中でも、イマジナリーワールドに誘われたビーが創造する世界は、ファンタジー色全開の映像で楽しませてくれます。忘れ去られていたイマジナリーフレンドたちが、かつての相棒に思い出されて心通わせるシーンも、両者の思いがしっかり伝わってきて、観ているこちらも自然と温かい気持ちになります。大人になっても豊かな創造性は持ち続けていたいものだと感じます。
ただ、いまいちテンポが上がらず、ストーリーに乗れなかったのは残念です。そのため、最後までなんとなく物語に入り込めず、感動シーンもイマイチ響いてこなかったです。あと、これをいうと身もふたもないのですが、ブルーがかわいくない!しかも、さほど物語の中心ともなっていないです。それなのに、この邦題はどうしたものでしょう。どうやら原題はイマジナリーフレンドの頭文字を取って「IF」のようですが、その方が断然しっくりきます。そこに「もしも」という意味をかけていると思えばなおさらです。
とはいえ、終盤の展開はとてもおもしろく、そのためのミスリードもうまく機能しています。世界観に浸れれば、子どもでも十分に楽しめる作品に仕上がっていると思います。
主演はケイリー・フレミングとライアン・レイノルズで、二人の掛け合いが微笑ましいです。脇を固めるのは、ジョン・クラシンスキー、フィオナ・ショウら。他に声の出演として、スティーブ・カレル、マット・デイモン、エミリー・ブラント、サム・ロックウェル、ブラッドリー・クーパー、ジョージ・クルーニーら豪華キャストが顔を並べます。