劇場公開日 2024年7月12日

「師曰わく」キングダム 大将軍の帰還 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0師曰わく

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

前の三作とは、趣を大きく異にしている。

もちろん『信(山﨑賢人)』の成長の物語という大きな枠組みは踏襲しつつ、
本作では師の『王騎(大沢たかお)』にスポットライトを当て、
それが結果的に主人公の今後の人生に繋がる筋立て。

前作のラストで突然現れた趙の将軍『龐煖(吉川晃司)』は
『信』や『羌瘣(清野菜名)』すらも難なく蹴散らす偉丈夫。

しかし彼と秦の大将軍『王騎』との間には浅からぬ過去があるよう。

今回は二人の関係性を軸に戦場での激しい攻防と
人間ドラマが並行して語られる。

戦闘場面の迫力は変わらず。

先ずは、中国の広範な大地と、
数十万規模の兵士たちのスケールを存分に印象付ける。

また個別の戦闘シーンも、
今までがライト級だったとすれば今回はヘビー級。
『王騎』と『龐煖』の重厚な殺陣を
ワイヤーアクションを存分に活用して見せつける。

その迫力たるや洋画でもそうは観られないほど。

ドラマの部分も胸が熱くなる。

二人の関係性の背景は戦場ではありがちとは言え、
単に世の理と済ますにはあまりに因縁めいている。

常には冷静な『王騎』が、思わず感情を爆発させるシーンでは、
観ている側も思わず拳を強く握ってしまう。

その前段で、一兵士の無事を故郷の家族が祈る場面があり、
最初はそのエピソードの必要性すら首を傾げたのだが、
肉親を気遣う心は庶民も将軍も同様と繋げる筋立ての巧みさに、
今度は大きく頷く。

しかし戦闘は日々進化し、新たな英雄を生み出す。

やはり前作の最後に登場した『李牧(小栗旬)』がそれにあたり、
彼は力押しを善しとしない、一兵卒の無駄な犠牲をも嫌う合理主義者。

その一方で目的の完遂のためには、敵軍に対し卑怯な手も平然と駆使する、
いわばニュータイプの軍師。

『信』がやはり新しい形の将軍を目指すのと、
対の形となるのだ。

「一将功成りて万骨枯る」とは、
一人の将軍の功名の陰には戦場で散った多くの戦士の命があり、
成功者や指導者だけがもてはやされるのを嘆く言葉。

が、頂点に立っても、そのことを弁えているのと
顧みすらしない者の間には数百倍の差がある。

本作では、前段で『信』を慕い死なせまいと奮闘する
数十人の仲間たちの姿を見せ、
最後に『王騎』が「大将軍」でいられる理由を本人に語らせる流れ。
幾十万もの死を背負い、ここに居る、との。

「大将軍」への行程は修羅の道なのを示すとともに、
主人公を自身がバトンを渡す相手と認めた、
師弟や親子に近しい麗しい関係性をも描く。

ジュン一