侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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凄く良かった
面白かった〜!映画館で見て良かった。手持ちのギフト券使えなくて、見るか一瞬悩んだけど笑 胸が熱くなりました。作り手の情熱をひしひしと感じました。
私が小学生くらいの時は、時代劇はすごく身近なものでした。病院の待合室のテレビ、蕎麦屋、定食屋のテレビは大体いつも時代劇。祖父母の家に遊びに行けば、おじいちゃんは必ず藤で編んだ椅子に腰掛けてテレビで時代劇を見ていました。両親も時代劇が大好きで、BS放送やwowowに加入して時代劇専門チャンネルを見ては楽しんでいました。大河ドラマは当然大好きで、昔の大河は今とは全然違ってもっとずっと堅い感じ。台詞回しも難しくて、私には何を言ってるのかさっぱり分からなかった。歴史の知識もないと楽しめないので、子ども心に、大人は凄いなぁと思っていました。それが不思議と、小学校高学年くらいになると、段々少しずつですが分かるようになるんです。父娘で見ながら、政治的な難しいシーンなどは「今のはどういう意味なの?」と聞くと、夢中になって見ている父にシカトされることがほとんどなのですが、たまに教えてくれることがあって、そういう時は嬉しかったなぁ。普段は父と母がするおしゃべりに子どもの私は全く着いていけないので、何となく大人扱いしてもらったような気分になれたのかも。年末は皆んな大好き、忠臣蔵。
私は監督より少し歳下ですから、監督の幼少期はもっと時代劇が盛んだったのだろうと思います。
昔、オペラ歌劇が面白いなーと思っていた時期に、宮本亜門さんが「オペラと時代劇はよく似てる。結末はどうなるか皆んな分かってて、最後皆んなスッキリする楽しさ」と何かの書籍で書かれていた記憶があります。(それから興味を持ってイタリア詩集を読んだりして、心臓を刺されて心臓から生クリームが飛び散る描写になんじゃこりゃ!と驚いたり)
そんな何十年も昔のことを懐かしく思い出しましたが、今作は全く新しい作品に仕上がっていました。タイムスリップものは擦り切れるほど使い古された手で、しかも流行らない時代劇。だけどすごく新鮮で、時代劇がまた違った魅力をもって生き生きと展開されて行く様は素晴らしかったです。
新しい時代劇の時代が始まる
神様、このような素晴らしい映画に出会えた事を感謝します。脚本も演技もすごいです。主演の山口馬木也さんが真剣使うと決めたときから纏うオーラの色が変わりました。まさに「死を覚悟した侍」の表情になり鳥肌が立ちました。
ずっとこの世界に浸っていたいと思うような映画です。ありがとうございました。
日本に生まれて良かった
素晴らしい映画でした。
「カメラを止めるな」的な爆発力は無かったけど、観賞後の満足感はハンパないです。
同じタイミングで、違う日時にタイムスリップするという発想と、時代劇と日本の歩みをオーバーラップさせるという発想の勝利でしょう。
歴史を作った先人達への感謝の念と、昔、家族で見てた時代劇へのノスタルジー。
ご年配の方々が客席に多かったのも、ほっこりしました。
ただ、残念だったのが…
そのご年配の方の誰かが、スマホをマナーモードにしておらず、たまに通知音が鳴ってるのが若干気になってはいたのですが、映画のクライマックス、真剣でのにらみ合い。にらみ合い!にらみ合い!!の緊張感フルMAXの時に、通知音が(^-^;
映画鑑賞マナーって大事だなーと再確認できたのでした。
変わるのも強さ変わらないこともまた強さ
侍が現代にタイムスリップして困惑するっていう設定自体は比較的今まででも良くあると思うが、これはそこを観て笑う作品ではない。主人公の高坂さんは戸惑いながらも周囲の助けもあって結構素直かつスピーディーに現代生活に溶け込んでいる。これはかなり大きな知的活動だと思うので彼は剣術の達人というだけでなくかなりインテリだと考えられる。この柔軟性がまずいい。真の強い男は頑固なだけでは無いのだ。またこの柔軟性が物語のテンポを良くしていて楽しい。
しかし風見の正体を知った瞬間に変わらなかった武士の心意気が表に出るくる。変わらなかった心をそれまで理性で抑え込んでいたことも彼の強さ。
風見は風見で苦労しながらも現代に対応してきたことが容易に観て取れる。しかも彼は高坂より30年前だったので孤独感はより強かったかもしれない。ほんの150年程前に日本のために命をかけた人々はこれ程までに高潔だったのかと頭が下がる。
個人的に1番好きなシーンはケーキを食べて泣くところ。日本がいい国になったという理由で泣くシーンは私自身襟を正す気分。
最後の殺陣シーンに象徴されるように譲れるところは柔軟に譲るが、譲れないところは命をかけて戦うという覚悟を持った男達(監督含め)の熱い物語。素敵な映画でした。
滅びゆく会津藩、滅びゆく時代劇
だがそれは今日じゃない!
個人的な事情として、会津で生まれ育った人間として、こういった映画の主役が会津藩士であることがとても嬉しかったです。なので☆は+0.5しちゃいます!
会津訛りに親しみが持てて(少し引っかかる部分もありましたが時代の違いということで…)誠実で実直な主人公の人柄が好ましく、現代へ順応する様子と侍として譲れない芯の部分などが伝わる素晴らしい演技でした。
会津藩の歴史を知るところは高坂さんの心情を思うと辛く泣けてしまいましたが、淡々とナレーションで語られるのみで悲劇的に描かれすぎていないところがとても良かったです。悲観的な歴史観を否定したいわけではないのですが(わたしが子どもの頃は実際に長州憎しのお年寄りも身近にいました)、風見さんの言葉がすべてだと個人的には思っています。
タイムスリップものはやはり現代の文化技術に対するリアクションに1つの醍醐味を感じているのですが、白米のおにぎりを食べて磐梯山の雪に例えるところがとても好きでニヤリとしてしまいました。会津の人間にとってやはり磐梯山は特別な山で、富士山にも劣らない名峰なのです。また、お茶菓子に出たショートケーキを食べて、日本が豊かな国になったことに涙を浮かべる姿にはこちらもほろりと泣けてきてしまいました。あの時代の人々が、一藩士に至るまで日本の行く末を案じ志を持って未来を信じ戦っていたことが伝わってきました。
また、時代劇が滅びゆく最中である事実に対して、「だが今日じゃない」と力強い言葉が聞けたのを嬉しく思います。祖父母と共に夕方の時代劇の再放送を見ていた幼い頃の記憶がよみがえり、ノスタルジックな気持ちと共に、これからも、細くとも、長く続いてほしい文化だと願わずにはいられませんでした。
いつか、高坂さんには現代の会津に来てほしいです。戊辰戦争の折、城は新政府軍の砲撃で穴だらけのボロボロになりました。復元された天守閣は当時のものとはまた違うかもしれませんが、会津の人たちの強い思いの結晶です。それはあの時代を必死で生きた高坂さんたちの魂と通じるところがあると思うのです。
鑑賞動機:あらすじ3割、評判7割
年に1本でいいから、こういう「化ける」映画があると楽しい。お仕事物としての部分と、時代物としての部分が綺麗に重なり合いつつ調和している。
高坂さんがまるで本当の侍であるかのように思えてきて、どんどんお話にのめり込んでしまった。後半の展開は意表をつかれたが、結局は前に進むために必要な通過儀礼だったように思った。
ありふれたネタを出発点にしながら、丁寧にストーリーを作っていて、コメディとシリアスの配分もよく、とても好感の持てる作品だった。
最後は…アンタもかーい。楽しかった。
2回目。変わらず面白い。状況を受け入れて馴染んでいく過程できちんと描写を入れて納得感を出すとか、ベタな笑いは住職夫妻に任せてるとか、山口、冨家両氏はやっぱり本物の侍にしか見えない(本物見たことないけどね)とか、ゆうこちゃんかわいいとか再度実感した。
「今日がその日ではない」は今年最高のセリフかも。
転生もののうまいとこを突いた作品
ちょっと前に予告編でたまたま見かけて今どきこういう年寄り向け作品もあるんだなーくらいに思ってたら、公開後こちらのサイトでめっちゃランキングや評価が高く、なおかつ最近になり流行語大賞ノミネートもありさすがに気になり、見たくなったのですがいかんせん昼一回のみの上映ばかりでやっとこさ時間をつくり見ることができました。結果、見に行って正解でした!
もはや使い古されてきてる転生ものですが、その中でもありそうでなかったような作品ですね。
個人的にはタイムスリップした序盤のくだりが自分的には最高潮の盛り上がりだったため、後半は中だるみしましたがそれでもあのラストの真剣勝負はとても見入ってしまう素晴らしい芝居でした。ラストも良かったと思います。
皆さん知らない方々ばかりでしたが主演の山口さんはじめ本当に素晴らしい間違いない演技力でした。
あと、とにかく優子殿がかわいすぎて釘付けになりました!あとで調べたらだいぶお姉さんでびっくりしました笑
自主制作でこのクオリティーの映画を作ったのはすごいなと思います。
それと始まる前のオープニングも自主制作ならではなのか、スポンサー会社が次々と紹介され、いつまで続くねん!って感じでしたが何よりびっくりしたのがエンドロールで安田監督が1人何役も裏方をこなし、ヒロイン役の沙倉さんも助監督や小道具を担当していたこと。出演しながらスタッフもやるなんてめちゃくちゃ大変だったかと思います。
素晴らしい作品でした。
これはもう流行語大賞取っちゃってほしいです!
誰も言ってないから言っておく
正直面白かった コメディと言われるとそこまで笑えるとこはなかったけれど(まぁベタベタなベタだったからかもしれないけれど) ただベタこそ至高であると再認識させてもらった作品でした
それと馬木也さん冨家さんのお二人 正直2軍の首位打者、1軍半的ポジションな方だと思ってました すいません侮ってましたごめんなさい(笑)
あと馬木他さんが新撰組隊士の扮装をされた時めちゃめちゃ様になってたのはさすが大治郎だなと思いました
あと一番ジーンとした場面は最後の殺陣より峰蘭太郎さんの袴の後ろの福本清三のネーム刺繍を観た時でした(誰も言ってないので言っておきます)
映画って本当に素晴らしい!
心の底からそう思える作品だった。
タイムスリップによって人生の目的を見失った男が、周りの人々の優しさや温かさに支えられながら、新しい人生を歩み出すまでの物語。
カルチャーギャップコメディだよ、の一言で説明できる間口の広さと、幕末からタイムスリップしてきたという設定を、最後の最後まで活かしきるストーリーテリングが見事!
武士としての経験を活かして、時代劇の斬られ役者として生きるところまでは予告で知っていたし、映画撮影の中で、自分がいた幕末の再現をさせられるところまでは予想ができた。
映画として大事なのは最後の盛り上がりだ。
主人公が役者として成功できるかどうか?
そんなことではない。
高坂新左衛門は自分個人の幸せのために生きている男ではない。
彼が最後に抱えるのは、自分一人が生き残ってしまったことに対する罪の意識だ。
物語の冒頭、彼は自分一人だけが違う時代に飛ばされたことに絶望し、途方に暮れていたのだが、物語の終盤では、同胞たちが無念の最期を迎えたことを知り、自分一人だけがのうのうと平和な時代に生きてしまっていることにやりきれない思いを抱えるようになる。
仲間たちは会津のために戦い、死んでいった。
自分は何もできなかった。
歴史は変えられない。過去には戻れない。
武士の格好をして、偽物の斬り合いでお茶を濁すことしかできない。
そんな自分に深い憤りを感じるようになる。
彼はその感情を宿敵である風見恭一郎にぶつける。
そう! 風見恭一郎が実にいい男なのだ!
終盤の高坂新左衛門がしていることは、風見にしてみればただの八つ当たりだ。
幕末の因縁を現代に持ち込まれても困るし、自分ひとりだけがおめおめと生き残ってしまったことも、風見の責任ではない。
けれど、風見は彼の思いを全て受け止める。
風見は、彼の幕末の宿敵であり現代の先輩だ。
30年早く現代にタイムスリップした風見は、人生のどこかで高坂新左衛門と同じ葛藤を経ている。
だから風見は、彼のやりきれなさを自分が受け止めてやろうとする。
風見は高坂新左衛門の唯一の敵であり、ただ一人の理解者だ。
こんなに人情に熱い敵役を、令和の時代に見られるとは!
時代劇ばんざい!
物語の結末は、真剣を使った真剣勝負。
台本なしのガチンコバトル。
決着が本当に素晴らしい。
高坂新左衛門は勝負には勝つが、信念を曲げる。
仲間たちの無念を晴らせない自分を、意思を貫き通せなかった自分を「情けない」と涙する。
曲げた理由は語られない。彼はただ涙するだけだ。
けれど、観ている側は彼が情けないだなんて誰も思わない。
生き方を曲げた彼に、良い選択をできた彼に、拍手を送りたくなる。
そのあとで彼はヒロインに引っ叩かれる。けれどそこには愛があることが誰の目にもわかる。言葉と行動が正反対。でも登場人物たちの心の中にあるものが手に取るようにわかる。
作り手の面白いように心が動かされていく。
これを映画のカタルシスと言わずして、何をカタルシスというだろうか。
展開は王道。観にいく人の期待は何も裏切らない。小気味よく挟まれるユーモアがなんとも心地がいい。
まごうことなき大傑作だ。
あと、蛇足にはなるが、高坂新左衛門の立ち振る舞いがとても良かった。
おじさんあるあるなのだが、無意識のうちに年下の人に横柄に振る舞ってしまっている自分を反省した。
年上でも謙虚に振る舞って良いし、そのほうが素敵なのだ。
映画鑑賞の後に入ったお店では、自然とそんな感じに振る舞うことができた。
キャスト全員愛おしい
2回観ました。日本アカデミー賞の作品賞始め、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、等、総なめにして欲しいくらいに素晴らしい映画でした。
所々に福本さんや時代劇へのオマージュが散りばめられ、時代劇愛が溢れていました。誰が観てもわかりやすく感情移入しやすい。
でも、一つだけ、どうしても心に引っかかるのはラストの真剣での立ち合い。そんな撮影が許されるわけもなく、誰も止めない。
思い出されたのは、昔あった、勝新太郎の息子が持った日本刀が演者の首にあたり死亡事件が起きたこと。亡くなられた方のご遺族の気持ちを思うと時代劇に真剣を持ち込むことの危なさを美化してはならない。
タテとわかっていながら
息子が面白いらしいよ、と言っているところへTVCMが流れてきたので
鑑賞。
タイムスリップ物は少々苦手なのですが、最後の真剣勝負には手に汗握ってしまった。
当時の武士の思いと、こういう切り合いを現代に再現させてくれて良かった。
今当たり前にあるものが、どれほど幸せなことか、改めて、、
日本の映画で久しぶりに、泣いて笑わせてもらいました。
主人公の山口馬木也さんがほんとにハンサムで、私普段日本のドラマみないので、この映画で初めて山口馬木也さんを知ったんですが、
このお侍さんが主人公かなってひと目でわかるくらい、侍の姿が似合ってた。
そしてほんとに演技がうまい、、!
日本の映画で、しかも低予算というので、
ちょっとハードル低めで見たからもあるけど、
ほんとに、役者さんの演技がすごすぎて、魅入っちゃいました。
ストーリーも、ほんとにお侍さんがタイムスリップしたらこんな感じだろうなと、思うくらいリアルな演技で、
お侍さんのタイムスリップなんて
もはやありきたり、もしくはB級的な設定だけど、主人公の演技が全てリアルに見せてくれる。
現代のいろんなものに驚いたり感動したり、
思わず笑っちゃうシーンも。
【私が一番好きなシーン】
主人公が初めてショートケーキを食べたときに、
・・今の日本は、こんなに美味しいものを、普通に食べられるようになったんだなぁ、、って、しみじみ泣くシーンに、
グッと心を掴まれ、泣いた。
いつも思ってはいるけど、今当たり前にあるもの、昔は無かったんだから、有り難いなぁって改めて思わせてくれた。
最後、どうラストにもっていくのかとおもっていたら、いやはやほんとに真剣な真剣シーンで、、(真剣って言葉はここからきたんだなぁ)
見ていてこっちも、生唾をのむくらい、
臨場感があって、最後までほんとに素晴らしかった。
主人公だけではなく、ほんと相手の侍の方含め、出演者みんながまとまってて、
低予算とは思えないクオリティと、
映画に対する愛を感じた。
ほんとに素晴らしい映画。
まだまだ上映館ふえますよこれは!
もっとたくさんの日本の人に観てほしい!
優子殿はよい娘じゃのう
あんな純朴そうな女優さん、見つけて世に出しただけでも功績は大きいよ!
正直序盤は少し無理筋だった。街を彷徨うシーンでは、誰にもすれ違わないしね。なんて人の居ない街なんだ!撮影所近隣とはいえ、流石になんにも思わないのはねぇ。だって真剣持ってるし、捕まるでしょ?・・・って書いてて今思ったけど、風見は戸籍とかどうしたんだろ?というような細かな設定は無視していくのが「時代劇」なのかもね。
そう、これはタイムスリップなんてSFチックな要素を盛り込んでるけど、「新感覚時代劇」なんだと思う。中盤風見が出てきてから俄然面白くなってきたよ。最後の対決シーンの緊迫感はすごい。これも映画の中で映画を撮るという、いわゆる「入れ子構造」だからこそ出せた味なのかも。BGMも序盤はミスマッチな感じがしたけど、後半良くなってきた。
そう、やはり、出だしがねえ、中々順調じゃなかったよね。江戸時代から来たのに、現状理解が早いし、時代劇というモノの理解もすんなり。結構ご都合主義的な設定だよね。
時代劇を愛する人たちが作った時代劇と言っていいと思うな。基本チャンバラ好きだよね!男子なら!そういう幼心を思い出させてくれました!結構後半手に汗握っちゃった。
有名俳優使わなくても、いい映画は、作れる!ってことだね。これは、見てほしいなあ
チャンバラ時代劇?が恋しくなった
130分という上映時間であるが、時間を感じさせないストーリーの展開。それほどメジャーでない役者さんたちが出ているが、演技も良かったし、笑いあり、涙あり、感動ありでとても満足した作品。しかも制作費が2400万程度ということなので、役者さん、監督さん、裏方さんたちが制作面においても苦労されて撮影されたと推察される。関わった人々の時代劇に対する熱き思いが、感じられた作品でもある。2024年の時代劇作品は、「身代わり忠臣蔵」「碁盤斬り」「八犬伝」「十一人の賊軍」などかあったかと思うが、私はこの作品が一番良かった。チャンバラ時代劇という表現が正しかどうかはわからないが、黒澤明監督、三船敏郎、仲代達矢が出ている「椿三十郎」「用心棒」のチャンバラシーンをまた観たくなった。
面白いって、こういうことか!
子供の頃から日本史が好きで、大河ドラマ、水戸黄門、暴れん坊将軍、仕事人シリーズetc.といった番組を好んで見る妙な子供だったが、そういう番組を見なくなって久しい。
時代劇は金と時間がかかる。一方で古くさい勧善懲悪な人情話に現代人はあまり興味がない。もうオワコンになってしまったのだろうか・・・。
幕末の武士が現代にタイムスリップするコメディをインディーズで作ったという。これはセットも役者も予算相応のペラペラなもので、笑いもスベっているだろうというのが当初の印象。ところが、あれよあれよという間に火がつき、拡大全国上映に。我が田舎街でも上映していると耳にして大変遅ればせながら、観てきた次第。
冒頭のシーン。闇夜で待ち伏せなのに話し声が大きい。声だけ別録りで当てているのが露骨にわかる。あー、やっぱりペラペラなのかなあと思っていると、主人公の会津藩士高坂は、あっという間に現代にタイムスリップ。太秦の撮影現場に闖入し、本番中に真剣で助太刀しようとするも、監督にあっさり叩かれて追っ払われる。本身を持った現役武士が・・・なんだなんだ・・・この展開は・・・。高坂の困惑ぶり、とんちんかんぶりが面白いじゃないか!
そこからの高坂の現代生活への適応過程で見せる表情、動作がいちいちオーバーで面白い。住職夫妻ではないが、TV時代劇を見てこんなに感情を爆発させる人を初めて見た。
黒船ポスターにめざとく反応、驚愕!暴れん坊将軍と聞いて脳内暴れん坊上様(笑)。
とにかく、わかりやすい。捻りがない。しかし、山口馬木也はじめ出演者の演技が上手いので、わかりやすさに安っぽさがなく、安心感すら漂う。
なんだろう、この安心感。かつての時代劇にあった「これは作り物ですよ。お決まりの事件と殺陣、最後はビシッと決まって、人情話の後日談があって一件落着ですからね」っていうあの暗黙の了解。それがこの作品にも漂う。
高坂の仇、元長州藩士の風見(冨家ノリマサ)の登場から、コメディ要素強めだった展開に変化が・・・。
道場で稽古をするシーン、並んで座って釣りをするシーン。時代劇お決まりのシーンを随所に挟みつつ、現代に生きる2人の武士の苦悩と葛藤がにじみ出る。
圧巻だったのは、真剣での決闘シーン。お互い向き合ってからの長いにらみ合いの間。観客が固唾を飲んで見守るが、動かない二人。一体何秒間、止まっていたのだろうか?これほどまでに引きつけられ、引き込まれたのは久しぶりだった。
殺陣師がつけた殺陣とは違うアドリブ=本気の斬り合いに雪崩れ込む二人。これは映画の中の映画。劇中劇。どういう着地点に持って行くつもりなのか?どちらかが死ぬなんてことにはならない筈なのだが・・・と思いつつ、圧巻の殺陣を堪能した。
朴訥で忠義厚い生真面目な会津藩士という主人公のキャラクター、時間差で同じ場所にタイムスリップするという奇抜な設定を考えついた安田監督の才能(米農家)。
山口、冨家はじめ数々の名脇役達の教科書通り、お手本のような名演技。
劇中だけではなく、制作として本当の助監督も務めた大活躍の沙倉ゆうの。
協力した太秦撮影所のスタッフ(協力ってレベルじゃなくて本気で撮ってますよね絶対)。
そして、最後の最後に3人目のタイムスリッパーを登場させるという見事なオチ。
劇場に詰めかけた老若男女(お年寄りから子供まで)が、笑い、息をのんだ130分。
エンドロールが終わるまで席を立つ人はなく、明るくなってから「面白かった」という声が至るところから聞こえてきた。
わかりやすくて面白いのに、ジーンとくるものもある。王道のパターンなのに、深い。
スターも出ていないし、ド派手なVFXもないのに、ちゃんとドキドキする。
映画って凄い。これは本物だ!
(2024年映画館鑑賞30作目)
今年の笑い涙大賞
皆さんのレビューを見て 暫く見なかった映画鑑賞となりました。見て良かったありがとう。
雷によってタイムスリップした武士が現代で生き抜いていくシビアさ満載の中、身の熟しを学び得ていく姿に感動。徳川を守る為仇討ちとなる相手が絶妙の役者仲間になったり、ここぞと何度も涙を流しては瞬時に笑いがやって来るので見終わりはスッキリとしました。日本はこんな良い国になった とショートケーキを頬張る姿に、国力の低下とか報われた感ない労働とか悲嘆しすぎだった自分を大反省させます。見て良かったほんとに楽しめました。願わくば助監督さんとの恋叶えてあげたかったかな、、、
死生観
本作は
過去と現代がつながるスリップもの
なのでやや、
既視感があるかなと見始めました。
よくある話かなと。
なんですが、
皆さんコメントされているように
主役の山口さんの素朴であり凛と
しながら礼節があり
へつらわない雰囲気が、
私の武士のイメージとマッチ。
時代劇は
中村吉右衛門の鬼平犯科帳が
好きなんですが、
理由は
池波正太郎の江戸庶民の風情感覚や、
人の生き様が作品に反映された
凄さに共感するからです。
庶民役も侍役もセットも脚本にも。
作品に流れる現代には無い死生観に
憧れを感じるのです。
あの時代、
帯刀する日本人は、
なすべき有事には、
命をかけ、奪う覚悟が
備わっていたのだろうと。
それは、
日々の鍛錬や経験から
得るものであろうから、
画面から感じることは少ないなと。
やっぱり現代人の匂いが
するんですよね。
そう、本気の作品以外では。
だから、
俳優の気配でそれを感じた時、
コレは面白いと。
内乱である戊辰戦争などをへて
現代に至る過程には、
想像できないような惨劇が
会津にはありました。
新政府の見せしめ的な扱いを
歴史として知っていれば、
その時代からきた会津人が
どのような心情になるのは
理解できます。
だから、
戊辰戦争の新政府による
殺戮な逸話のシーンを
インサートすれば
更に主人公の心情に納得が
深まったかなと。
新政府側の人間との確執が
見る側の歴史知識の度合いで
違うのがもったいない
それにしても
終盤の真剣のやりとりが
秀逸
歴史は本の中にあるのではなく、
たくさんの人が生きた元なんだな...
最後にもう一人
こっちきましたが
あれは、
いるかな?
溢れる殺陣愛
実は序盤はツッコミどころが結構あり正直なところ高評価レビューに釣られて見たのは失敗だったかなと思った。冒頭の2人の武士のやり取りが説明台詞っぽかったのと幕末の武士が言葉も含めて現代の事物にほとんど驚かず馴染むのが早過ぎるなど。1番気になったのはヒロインの演技力が申し訳ないが商業レベルではない事。他の方の演技力は何の問題もなかったのだが。
ただ、それやこれやも物語が進むと確かにどうでも良くなる。却ってヒロインの棒読みも愛しくなる。
時代劇愛というか特に殺陣愛が凄くて、それが画面からド直球でヒシヒシと伝わる。物語自体でなく作り手のその思いに感動しきりとなった。それが迫力満点のクライマックスの真剣勝負の殺陣に結実している。手に汗握るとは正にこの事。
ただ、やはり私には素晴らしい殺陣を披露されたお二方は侍ではなく現代の時代劇を愛する役者に見えた。現代に馴染んだ侍だからという見方も出来るだろうが、物語の巧拙でなく作り手の熱量が見る者の心を動かす作品なのだと思う。
最後にこの作品は是非映画館で見るべきだと思う。理由の一つは真剣の重みを音響で表現しているのでテレビで見たら、それが分かりにくい気がする事。もう一つは没入して見るのが難しいテレビで見ると序盤の掴みがやや弱いので人によっては盛り上がる後半へいく前に離脱しそうなところ。
映画好きなら是非是非映画館で上映されているうちにその熱気を味わって欲しい。
時代劇の衰退を会津と長州の因縁に重ねる
作品冒頭、会津藩士と長州藩士との切り合いから始まり、雷に打たれた会津藩士の主人公は現代に飛ばされてしまう。
そのまま、現代の時代劇役者として成功していくサクセスストーリーになるかと思いきや、実は冒頭に出ていた敵役も現代に飛ばされていて、時代劇役者として成功していた。
しかし、敵役は時代劇から遠のいており、今回久々の時代劇の共演者として主人公を誘うが、主人公は徳川幕府を終わらせた長州藩士で尚且つ時代劇から遠のいていた敵役を心底恨んでいく。
そこから、主人公と敵役の葛藤が始まる。
時代劇の衰退を描いた映画は、『太秦ライムライト』があったが、今作はそのテーマに加えて、会津と長州の因縁が重なって描かれていたことがとても面白かった。
この映画は、ぜひ会津の人にも知れ渡ってほしい。
また、少しくどい表現はあったが、所々笑いどころがあったのもこの作品の魅力だと思う。
主演の山口馬木也さんは、昔から時代劇では一際武士らしいオーラをまとっていた人だったけど、今作では現代の時代劇役者との違いが如実に表れ、いかにも江戸時代の武士が現代にまぎれたかのような異彩を放っていた。
今後も山口さんの武士の芝居には、目が離せない!
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