侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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常に笑い。最後のオチも良し
必見!リスペクト溢れる傑作!
幕末の会津藩士が決闘中に雷に打たれ(?)現代にタイムスリップし、行き着いた先が時代劇の撮影所で、チャンバラの切られ役として奮闘する話。
大変失礼な話ですけど、何度か上記のベタな設定を敢えて晒した予告編を拝見したり、聞いたこともない制作会社のテロップを映画冒頭で流された段階では、自主制作のいわゆるB級映画なのかな・・・と、不安が先に頭をよぎる感じでした。
しかし、鑑賞直後、数年ぶりに周囲の観客につられてではありますが、思わず拍手してしまった次第!
特に役者さんの熱量、気迫がすごかったです!
時代劇、そしてその殺陣(チャンバラ)、斬られ役、幕末の名もなき志士達へのリスペクトで裏打ちされたストレートで濁りのない脚本、演出は感涙ものでした。
基本コメディタッチなのでここだけはB級のノリ(笑)なのですが途中から上記の理由で引き込まれ、胸が熱くなり、時に主人公にシンクロし悲痛さえ味わい、最後はハラハラドキドキの連続、手に汗握ってました。
あと、エンドロールの制作陣で、一人で何役もこなした方が居て本当にご苦労と申し上げたいです。映画で助監督だった優子ちゃんも本当に助監督で俳優もされてたんですね。大和撫子っぷりが本当に素敵でした!
これは間違いなく日本映画の傑作であると断言します。監督や役者の名前だけ、制作規模の大きさだけの凡作に埋もれたりせず、どんどん上映館を増やしていただいて沢山の映画ファンにご鑑賞いただきたいです。
では。
【デラックス版】だったから途中ダルかったのかな?
【気になったところ】
・冒頭シーンの口パクとセリフの音ズレ
・冒頭シーン迫力出したいのわかるけどBGMがデカすぎて絵面より主張強い
・初めてテレビを見た時の感想「絵が動いておる!」より「小さな箱の中に人が!」の方が自然だったのでは。アニメ見たんじゃないんだから…
・台本の改訂稿があまりに説明的すぎ。テレビや書物から高坂が史実を知る方がまだ無理がなかった
・優子の妄想シーン(フェンシングやら西部劇やら)は長くて中弛みした。高坂が想像もできない話にあんな尺要らん
・コメディシーンはシリアスで淡々としてる方が笑えたのにオーバーリアクションや古臭いSEで萎えた
・無音シーン長すぎ。あの長さ無音にしたいならスローパンくらいして。緊張感続かず飽きる
・同時期にタイムスリップしたのに転移時間に年単位の大幅なズレがあることへの説明なし
【好きだったところ】
・登場人物全員善人
・白米の握り飯に感動している高坂
・テレビで時代劇を見て大興奮している高坂
・現代では庶民も美味しい菓子を食べられると知り豊かな国になったことを喜ぶ高坂
・師匠との稽古で斬られなければならないのに斬ってしまった時の、怒鳴るわけではない師匠の「アホ」
・殺陣の動き全体的にとても良かった。時代劇ファンも納得のレベルの高さ
・芝居だとわかっているのに死ぬ間際に走馬灯が流れるところ。走馬灯で高坂の人生がよりわかった
・終わりを迎えそうな時代劇というジャンルと、終わってしまった時代の侍の悲哀の重なり
・突然知らない時代で生きることになっても自分のできることで生計を立てたいと前向きに頑張る高坂の実直な人柄
・高坂が現代のものを受け入れる早さや髷をあっさり切る順能力の高さ。話の展開早くて助かる
・真剣勝負のあと優子が駆け寄ってキスしなくて本当に良かった。ハリウッド映画ならしてた
・最後の高坂のセリフの言い方が可愛くて良い締めだった
全体的に作品を作っているスタッフの情熱や愛が余すところなく反映されていて良かった。ところどころ粗さやテンポの悪さで観客の集中を途切れさせてしまうので、技量をブラッシュアップしていってほしい。自分は笑いより感動して泣いた場面の方が多かった。本作はカメ止めほど人気は出ないだろうけど、次回作に期待。山口馬木也さんの今後の活躍にも期待大。
使い古されたアイディアながら
幕末の侍が現代にタイムスリップ、ってめちゃくちゃ使い古されてそうなアイディアを、10人程度のスタッフで自主製作した映画。
なのに脚本が面白くて、惚れ込んだ東映太秦撮影所が全面協力。その結果、とても自主映画とは思えないしっかりした作品に仕上がってる。殺陣なんてマジものの迫力。
「カメラを止めるな」にも比較されるような、単館から全国への拡大公開の展開だが、あれよりもっとしっかりしてる。ただその分、演技も演出も落ち着き過ぎちゃってるところはあるのだけど…
注目すべきは、使い古されたアイディアながらもそこに会津と長州の確執を現代まで持ち込むことで生ずる緊張感と、劇中の時代劇の助監督かつヒロインでありながら、実際に本作の助監督や小道具を兼務した沙倉ゆうの。
9月下旬から全国拡大公開となりますので、是非!
祝!メジャー系全国公開決定! 真面目に笑えて泣ける傑作、こういうのをもっと観たい
侍が現代にタイムスリップ、斬られ役で俳優デビュー。
正統派SFコメディーだけじゃない。
時代ギャップネタできちんと笑わせながら、無骨な武士の淡い恋心、斬られ役修行などを真面目に描いているのがいい。
地味なヒロインも好演。
滅んでしまった侍と、すたれていく時代劇を重ね合わせているのもうまい。
また、中盤で、敵役もまたタイムスリップしていて、それも主人公が飛ばされた時代よりも古く、時代劇の黄金期の大スターとなって再会する展開が面白い。
そして、幕府の滅亡の現実に打ちひしがれ、苦しみながらも生きていくことを決意。
クライマックスは、真剣勝負の見事な殺陣で魅せてくれる。
オチも決まって、最近貴重な、気持ち良く観れる映画でした。
こういうのこういうの!
㊗️順次、全国ロードショー決定!
今まで数々ある似たような設定だな。なんて思ってたとこにいつも聞いてるラジオ番組に監督さんがゲストに来て「池袋と川崎でしか上映してない」ってことで、川崎市民としては行くでしょう!チネチッタ!(余談だけどチネチッタのマニアック映画路線とっても好き❤️)
「きっとうまくいく」、「カメラを止めるな」のように少数上映から口コミで火がつく映画を見つけるのが映画館に足を運んで鑑賞する醍醐味の1つ。
今回は正しくこれ!
こういうのあるから映画館で映画見るの止められない!
メジャーな俳優さんがいなくても莫大な予算をかけなくても内容(ストーリー)で魅せるめちゃくちゃいい作品!の良い例。
制作費が足りなくて、監督の大切な愛車売却してまで作りたかったってのがとってもわかる!
少しでも気になってる人いたら、しのごの言わずにとりあえず見て!最高!
上映終了後に拍手起こる映画に久々に出会った!
ラスト時代劇
予告を見て、超低予算のB級 映画ということで、ほぼ期待ゼロで見に行ったのですが、予想外に面白かったです。
侍の世が終わりつつある幕末から現代へタイムスリップしてきた侍が、時代劇が衰退しつつある現代において、「最後の侍」という、おそらく大型時代劇映画としては最後になるであろう映画に出演するという、劇中劇のシナリオになっています。
全体的に「最後に残されたものの責任」と言うようなテーマで、
主人公は、現代に残された最後の侍として、時代劇という形でも、かつて生きた侍の魂を現代に残したいという志で映画に出ています。
この映画自体も、監督の「時代劇斜陽の現代において、残された時代劇監督として、『時代劇映画を作るという映画』という形でも、時代劇があったということを残したい」という情熱のようなものをヒシヒシと感じました。
そのような斜陽の中で叫ぶ主人公のセリフ「今日がその日ではない」は、まさに監督の心の叫びでしょう。
映画自体の評価としては、特に目新しい設定でもありませんし、低予算で取られているためか驚くような映像や音楽があるわけでもありません。
ただ、時代劇映画が積み上げてきたものというか、笑いあり涙ありの『お約束』の集大成のような映画で、水戸黄門の印籠のように安心して見ていられる映画でした。
最近めっきり見なくなった時代劇をまた見たくなるような、時代劇が好きだった人に見てもらいたい映画です。
ただ、そういう意味では、時代劇を見たことのない若い人にはサッパリウケない映画かもしれませんね。
あと、最低限の幕末の歴史を知らないと意味不明だと思うので、海外でもウケなそうです。
時代劇愛は感じました。
笑いあり涙あり、時代劇愛にあふれた映画
最高のラブストーリー?
シネマロサでの単館上映で評判になっていることは知っていました
観る予定はなかったのですが、2021年の公開作品の中で劇場鑑賞回数が最も多い「サマーフィルムにのって」と実は共通点が多い?との噂を聞き興味を持ち鑑賞
映画愛、時代劇愛に溢れた作品でした
平日昼の上映でしたが、かなりの混雑
予想外の大爆笑、そして拍手
出演者の方々全て良かったです
主演の山口馬木也さん
これからは「秋山大治郎」に加えて「高坂新左衛門」で記憶に残りそうです
「サマーフィルムにのって」の巨匠ハダシ監督の言葉を借りると「最高のラブストーリー」かも(笑)
13日からは全国拡大上映で上映館が60館を超えるとのこと
「みんな楽しみに待っててね」って感じです
面白いけどツッコミどころあり
面白かったけれど、コメディではない意味でのツッコミどころが無かったわけではない。
主に気になったのは次の2つ
1つ目は、街のポスターを読み、江戸幕府が倒れて140年経ったことを知るシーン。
「140」のアラビア数字をなんで読めるんだと。まだ普及して無いだろと。
漢数字で書いてあったならよかったのに。
そんなこといったら、そもそも言葉自体が難無く通じてるのはおかしいだろという意見もあるだろうが、そこは気にならない。
なぜなら、冒頭の江戸時代のシーンで既に現代語でも通じる言葉で話をしていたからだ。
もし、言葉が通じないことを表現したかったら、難解なしゃべり方にして字幕もつけただろう。そうしなかったのは、昔でも今でも言葉が通じますよという暗黙の説明だ。
また、言葉が通じるかどうかは話の本筋ではなく、映画のテンポも悪くなるので、そこは許容できる。
時代は異なっても同じ日本語を話しているということもあるし、フィクションでは文化の違う者同士の言葉が難無く通じるのはよくあることでもあり、違和感はない。
しかしながら、アラビア数字は日本の数字ではなく、明治以降に普及した外来の数字であるので、江戸時代の侍がすんなり読めてしまうことには引っ掛かりを禁じ得ない。
2つ目は、主人公が雷雲に向けて刀を振り上げ、過去に戻せと叫ぶシーン。
なぜに君はタイムスリップしたきっかけが雷だと知っている?
雷に打たれてタイムスリップして現代で目を覚ましたことは事実だ。
だが、雷に打たれたことを彼は知り得たのか?
体に衝撃が走ったことは認識できたかもしれないが、突然のことでそれが雷のせいだとは気づけないはずだ。それなのに彼は雷に打たれたことで現代にタイムスリップしたと知っている。不思議だ。
もし、タイムスリップしたきっかけを知っているとするなら、たとえば対決相手が先に雷に打たれて消えてしまうことを目撃するといった、推測が成り立つシーンが無ければおかしい。
ただ、そのシーンを入れるのは困難だ。
なぜなら、それを見せてしまうと対決相手もタイムスリップしたことがバレてしまうから。
せいぜい、タイムスリップした時はこの場所でこんな雷雨のときだったなと嘆き喚くくらいだろう。
ほかにも、中盤がだれ気味で、最後の決闘の溜めは長すぎると感じた。
諸手を上げて賞賛できる内容では無いが、大筋では面白くおかしかったし、殺陣のシーンは迫力があって映画館の大画面で観れてよかったと思う。
おもしろい!
とりあえず、見るべし。
福本清三さんに捧げる作品とのこと。福本さんの言葉が、セリフに織り込まれていて、おもわずニヤリ。
「太秦ライムライト」の時も感じたが、子どもの頃は、夕方に時代劇の再放送を見るのが常だったので、時代劇の楽しさを改めて感じるとともに、時代劇の行く末を案じてしまう。
かなりの低予算だという話だが、それを感じさせなかった。
とにかく楽しく、おもしろいので、劇場へ。
11/13 追記)
川崎・チネチッタでデラックス版を鑑賞。追加シーンは、正直なところ、この映画の面白さにはあまり影響はしない。
11/11の浅草・東洋館でのイベントに参加し、終了後に出演者にサインをもらったり、少しお話をした直後で、スクリーンにその人達が出ているというのが非常に新鮮な感覚。
パンフレットに記載されていることや、上記のイベントで知った裏話を踏まえて改めて見ると、またいろいろと気づくことがあるので、そういう情報を得てから、改めて見るのもお勧め。
時代劇で泣き笑いしてスカッとします。
リピート癖がある人は見ないほうがいいです。
ぼくは絶対、リピーターになります。
これほどまっすぐで気持ちいい映画は久しぶり。
ストーリーは言えません。すごく話がおもしろい。
東映京都に行きたい。
リニューアル工事するそうでかなわない夢になります。
YOUTUBEチャンネルがいくつかあるので事前チェックは必須です。
FANTASIA映画祭(カナダ)の様子(動画)を見てから劇場に行くことをおすすめします。
観客の反応がすごいのですが、期待が膨らんでも裏切られないレベル。
※逆の意味でめちゃくちゃ裏切ります。まじで面白い。
この映画にめぐり合わせてくれたJWAVEとチネチッタには
本当に感謝です。映画スタッフ・監督には大感謝。
9月4日時点ではまだパンフレットは未完成でした。
9月13日以降に劇場が増えるのでそのころには販売されるかなぁ。
期待して15日の夜に連チャン(2回)しようか考え中です。
個人的な意見ですがマーベリック越えしました。
「カメラを止めるな!」を上回る大ヒット作品に化ける可能性大です!あっという間の2時間11分。面白さは断固保証します!!
現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いた時代劇コメディです。
自主制作作品でありながら東映京都撮影所の特別協力によって完成させました。上映後にはまるで試写会会場のような、観客からの万雷の拍手に包まれました。これはもう同じ自主製作の小規模公開から火が付いた「カメラを止めるな!」を上回る大ヒット作品に化ける可能性大です!あっという間の2時間11分。面白さは断固保証します!!
●ストーリー
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は家老から長州藩士を討つよう密命を受けますが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまいます。目を覚ますと、あたりの様子がどうもおかしい。そこは現代の時代劇撮影所でした。ぼうぜんとする新左衛門でしたが、そのあと行く先々で騒動を起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだことを知り、がく然とします。
一度は死を覚悟する新左衛門でしたが、行き倒れになっていた見ず知らずの新左衛門を寺に引き取り、寺男として働かせることにした西経寺住職(福田善晴)など心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していくのです。やがて彼は、助監督をしている山本優子(沙倉ゆう)の勧めもあって、磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩き、斬られ役として生きていくことを決意します。
剣の腕を頼りに時代劇の斬られ役として順調に撮影所で評価を高めていく中で、かつての時代劇の大スター風見恭一郎(冨家ノリマサ)が、久々に製作される時代劇大作に主役として復帰し、その宿敵の役に高坂を指名します。実は風見は高坂が狙った長州藩士だったのです。
●解説
繰り返しますがこの作品は、すこぶる面白いのです!実直な武士と現代の映画人が生み出す笑いや、立ち回りの緊迫感だけでなく、時代劇への愛がそこかしこからあふれ出していて、登場する俳優や殺陣師たちが言い放つ『時代劇を残したい』という熱い台詞に感動しました。
直近で『箱男』を見て悶絶しただけに、侍スピリットや個々のキャラクターも分かりやすく描かれた本作には余計に共感を感じたのです。
主演の山口馬木也の実直さ、宿敵風見役の冨家が放つ深い哀愁、高坂を助ける助監督山本優子への恋心などてんこ盛りですが、混迷もせず独りよがりでもありません。現代劇と時代劇をサラリと融和させ、娯楽映画に徹した潔さが作品の背骨になって、抜群に面白い作品となりました。もちろんコメディだからといって手抜きはありません。東映京都の熟練のスタッフと東映剣会が、逝去した福本清三さんの弔いを兼ねての全面バックアップ。どのシーンとっても緊迫した殺陣シーンを見せてくれました。
侍がタイムスリップというアイデアに新しさはなくても、斬られ役俳優に焦点を当ててバックステージものとしたところが秀逸です。廃れゆく時代劇に向けた撮影所の情熱と武士の意地が重なり、映画は熱い!文句なく楽しめます。映画はカナダの映画祭で喝采を浴びました。
●感想
特筆すべきは、笑いの中に涙があること。たとえば、新左衛門が居候先の西経寺で、ショートケーキを食べる場面。おいしさに驚いた新左衛門は住職夫婦に、誰でもこの菓子を食べられるのかと尋ね、「日の本は良い国になったのですね」としみじみ泣くのです。笑えるシーンなのに感動できるのは、セリフの内容が深いからです。
また、こんな可笑しいシーンもありました。新左衛門が殺陣師の剣会に入門を願いに出かけたあと、残された居候先の西経寺住職たちが、箝口令を敷くところが何とも可笑しかったです。住職が奥さんや助監督の山本らに、剣会入門がダメになる「落ちる」「スベる」なんていっちゃダメと念押ししたのにかかわらず、新左衛門が無言で帰宅したとき、余りに腫れ物をさわるかのような神経質になりすぎて、面々が「落ちる」「スベる」言葉を言っちゃうのです。あれって寅さんのファンならご存じでしょうけれど、失恋し落ち込んで帰ってくる寅さんを向かえるくるまやの一家の対応そっくりでした。久々に大笑いしました。
クライマックスでは、迫力ある長い立ち回りを披露してくれた山口馬木也にも注目。彼は、実は時代劇は最初、ちょっと嫌だったそうなんです。かつらは痛くて暑いし、現場の人は怖いから(^^ゞただ、新聞に自身の立ち回りを評価する記事が載ったことが救いに。立ち回りを大切にし演じ続けてきたそうです。
クライマックスのシーンでは、撮影も兼ねる安田監督が引きの映像で撮っているため、山口と冨家の息の合った動きの全体が見せられてよかったです。思わず力んでしまうほどの緊迫したラストですが、どうか皆さん肩の力を抜いて、ただ楽しんで見てほしいですね。
※一部劇場ではシーンを追加した「デラックス版」が上映。
「真剣」勝負の危うさ
幕末から現代の太秦にタイムスリップしてきた侍が時代のギャップに戸惑いながらも「斬られ役」として大成していくさまを描くコメディドラマ。
物語がサクサクと進んでいくテンポ感は見事なもので、2時間超の尺を感じさせない。にもかかわらず、いわゆる「使い捨て」の登場人物がいないことも非常に評価できる。それぞれの抱く意志とその顛末がほとんど余すことなく描写されている。
最大の見せ場はやはり終盤の剣戟シーンだが、面白いのは二人の剣の「構え」がちゃんと時代劇の文法に馴致されているところだ。高坂は「斬られ役」の師匠である関本に言われた通り、剣を後方ではなく上方に構えている。風見も同様だ。
歴史的怨恨を巡る文字通りの「真剣」勝負においても、彼らは無意識のうちに「侍」ではなく「役者」としての自分を選択してしまっていたというわけだ。となればその後の決着のつけ方についても納得がいく。
こういう細かい点を疎かにしなかったがゆえに本作はこれほどまでのリアリティを獲得できているといえるだろう。
時代劇の黄昏とも呼べるこの時代、敢えて時代劇を撮る意義とは何か?という劇中の命題を他ならぬ本作自身が証し立てているといえる。それくらいパワーのある作品だった。
とはいえ手放しに全てを肯定できるかというと、それも難しい。
気になったのはやはり終盤の「真剣」勝負のくだりだ。高坂と風見が演技に真剣を用いたいと申し出たのに対して、「誓約書があるから」という理由で監督もプロデューサーもそれを是認してしまう。唯一反対していたのは助監督の山本だけだった。しかし撮影が終わるまで、誰一人として彼女の声に耳を傾けようとしなかった。
もちろんここでの真剣の使用が単なるリアリティの強化を目指したものではなく、歴史的背景を踏まえた上でのある種の「落とし前」であることは自明だ。しかしその自明さは我々受け手にしか感知できないものである。
つまりあの現場の人々は単純にリアリティを強めるためだけに「真剣の使用」という危険極まりない手法に及んでいる。あまつさえ反対意見にも耳を貸さず、実際に決行させてしまっている。筆者自身がいわゆる「Z世代」だからなのかもしれないけれど、これはちょっとヤバいんじゃないか。
たかが映画の中の描写なんだからガタガタ抜かすな、と言われればそれまでなのかもしれないが、「映画を撮る映画」という、通常のフィクション以上に現実とフィクションの間を隔てる壁が曖昧なジャンルの作品だからこそ、こういう描写にはもう少しセンシティブに臨んでほしかった。
それこそ、勝負が始まる前に何かパンチライン的な一言を山本に紡ぎ出させれば、真剣を使用しないような決着のつけ方も可能な局面だったのではないかと思う。これだけ見事な脚本力があればそのくらい余裕だろう。
ウダウダと苦言を呈してしまったが、概して非常に完成度の高い作品だった。このたびシネマロサでの単館上映から一挙に全国へと大波及するとのニュースが入ってきたが、何も不思議はない。このまま『カメラを止めるな!』的なインディーズ旋風を巻き起こしていってほしい。
「低予算のインディーズ制作にしては」という注釈付きで良い映画
低予算ということですが、ルックについては全くチープに感じません。
設定はありがちなコントで、ずっとこのままの展開だと辛いなあと思っていたら、
中盤にツイストあり、この先どうなるのかと飽きること無く観られました。
役者はそれぞれ個性あり、演技も達者で楽しめます。
ここまでは良いところですが、演出ははっきりと好きになれませんでした。
コメディシーンがとにかくひどくて、
延々と被せて流れるコミカルなBGMが鬱陶しく、漫画的な大げさな芝居が寒いです。
絵面がすでにシュールなので、淡々とやってくれればかなり笑えるのに勿体無いと感じてしまい終始苦笑してしまいました。
コメディをちゃんと分かっている監督が撮っていれば世界的に成功出来たかもしれないと思えたので本当に惜しいです。
その点含めて映画の出来としては『カメラを止めるな!』の方が何倍も良かったです。
恐らくあれほどの成功は期待出来ないと思います。
コメディシーン含め、過剰に分かりやすくしてしまっているため、
まだるっこしく感じるところが多々あり、そのせいで上映時間が長くなってしまっているのもマイナスです。
90分ぐらいにまとまっていれば最高でした。
地上波で流すテレビドラマとして観れば秀逸、
というぐらいの期待度で観るとちょうど良いと思います。
今日がその日ではない
知ってる役者は出てないし、内容はお約束の範疇でしかない。
しかし、その積み方でこれだけ面白く、強度のある作品に仕上がるとは。
序盤から先の読めるベタベタのコメディ展開なのだが、不思議と笑える。
表情や台詞回しに動作、カメラワークにBGMやSE、その他すべてが噛み合っており、安心感すら覚えた。
かと思えば、横文字だけでなく伝わり難そうな単語には高坂がしっかり眉を顰める細かさも。
同じ殺陣を繰り返しても、しっかり芝居の重さが変わっているのが伝わるのも見事。
実戦と芝居の違いにもしっかり言及してくれる。
また、物語としてだけでなく、制作陣の時代劇愛もしっかりと刻まれている。
物語の最後には高坂が、侍としての想いに加えて役者や時代劇への想いを昇華する流れも素晴らしい。
その熱さのある展開へ、コミカルな流れを壊さず繋げた手腕にも唸らされた。
最後の殺陣、いや“斬り合い”の熱量は、本当に真剣を使っているかのよう。
細かなツッコミどころはいくつもあるが、どうでもいい。
単純なのに奥深く、笑えるのに沁みる。
登場人物はみな善人で悉く愛着が湧くが、やはり高坂のカッコよさと可愛さのバランスが絶妙。
優子や住職夫婦、風見などとの関係性も素敵。
こんなに拍手を贈りたくなる作品も久しぶりだし、だから映画はやめられない。
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