「過去に存在した侍と時代劇の侍」侍タイムスリッパー こめちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
過去に存在した侍と時代劇の侍
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この映画で、侍は本当に居たのだと不思議なことに実感してしまった。今まで、歴史や物語で侍を見てきて、侍がいたことは頭で解っていたけれどこんな感覚は初めてだった。それは主人公の極めてリアルな感じの侍の容貌と動作だ。後ろに後退した生え際の髪の毛、焼けた黒い顔は江戸終末の写真のようだ。彼が虚構の時代劇セットに現れる。今時代劇が廃れてしまったのは、映画やドラマがリアル志向となり、虚構で成り立っていた多くの時代劇は嘘くさくて見ていられなくなったからだ。この映画はその点をよく突いている。最後のシーンはとても恐ろしくてチャンバラとは実は生きるか死ぬかだと言うことを示している。チャンバラが見せるための演出でありそれに命をかけてきた切られ役の思いも描かれる。切られ役だった福本清三さんの言葉も語られる。主人公が会津の侍であることもよく考えられていた。会津の悲劇を当事者として悲しむ姿は痛ましい。平和な今の日本を喜ぶ主人公も泣かせる。巨大予算の映画でなくても十分楽しめる秀作だ。
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