「一言で言うと完璧」ラストマイル くらげさんの映画レビュー(感想・評価)
一言で言うと完璧
大手ショッピングサイトの物流センターから出荷された荷物が爆発。
その日センター長に着任したばかりの舟渡エレナは、先任マネージャーの梨本孔とともに事態の収拾に立ち向かう。
視聴者をミスリードする様々な情報、細部まで映像を見ないと、あるいはセリフをよく思い出さないと気づかない小さなものまで含めるとあまりにも膨大な伏線の数。
間違いなく面白い。
そして鑑賞を終え、解答が示された後になっても
「もしかしてやはりコイツは○○なんじゃないか?」と思わせるように謎が残る。
過去のTVドラマと世界線を共有するシェアード・ユニバース作品ということだが、
この映画単体でもストーリーが完結し、ドラマを見ていない人でも問題なく鑑賞を楽しめ、置いてけぼりにされない。
それでいてドラマファンならでは楽しめるようにも作られており、懐かしく、あるいは新しい喜びを感じられる。
エンターテイメントととしてのテンポの良さと
サスペンスとして謎に迫っていくスピード感が非常にマッチしている。
社会問題化している物流業界の問題点がテーマでもある。
残業代の未払い、再配達コストや低賃金、それに伴うドライバー不足、それに苦しむ運送会社。メンタルを壊す労働者の増加、自殺の増加。
「私たちひとりひとりの『欲しい』『もっと便利に』という欲望がそれを引き起こしているのではないですか?」
という問いかけがこの映画の根底にある。
それを描き切るにあたって出演者の演技も素晴らしい。
とりわけ満島ひかりさんの演技は圧巻の一言である。
舟渡エレナははじめから満島さんを意識したアテ書きだそうだが、
ともすればオーバーリアクションに感じるのは彼女が外資企業の責任者だからかな?と思わせるが、
後々考えたら、舟渡エレナの反応として全く過不足がない。
素晴らしい演技だったと思う。
エンターテイメントとして楽しく
サスペンスとしてハラハラ
見終わった後も考察のしがいがあり、
ドラマのファンは嬉しく、
ドラマを見ていなくても楽しい。
社会問題を提示して考えさせられる。
よくこれだけの要素をひとつの映画作品に落とし込んだものだと、驚愕を禁じ得ない。