「巨大eコマース企業と物流業界の現状に対するアンチテーゼ」ラストマイル Tonさんの映画レビュー(感想・評価)
巨大eコマース企業と物流業界の現状に対するアンチテーゼ
どこかで見た事がある巨大倉庫と配送サービス。業界の実情を濃縮した風景には既視感を覚える。カスタマーセントリックと言うマジックワードを使った自社の正当化。誰かが中心になったら、誰かは置いていかれてしまうのにね。
ビジネスのスキームが変わらない限り、人は幾らでも替えが効く。最後の岡田将生はまさにその代表。それを作った企業はすごいと思うが、人の感情はノイズでしかない。「仕事、真面目に頑張ったのになー…」と声にならない声を出す登場人物達に共感した。自分だって、いなくなったら周りが困るのは最初だけ。時間が経てば、違う人でも仕事は回っていく。
塚原さんと野木さんのタッグにて、アンナチュラルとMIU404のような、伏線と回収がよく練られている世界観は健在で満足。ただテレビとは尺が違うので、丁寧さよりスピーディ。アンナチュラルをイメージすると、少しずれてしまうかも。
満島ひかりがインタビューで、「映画の主題歌のタイトルを最初に聞いた時、私達はがらくた?と思ったけれど、歌を聴いて、映画で説明できない感情が音楽でプラスされた」と言っていた言葉が理解できた。米津は変わらず繊細で、この作品のテーマを捉えた良い歌詞を書く。例えるなら、美味しい料理の間を埋めるアンサンブルのワインのよう。
起死回生の一撃も、この巨大な社会のスキームの中では雀の涙程度の効力しかない。その世界の中で、どこか歪んでしまっている、壊れてしまっている僕らはどうしていけばいいのか?この映画はその課題に警鐘は鳴らすが、明確な答えは提示しない。ああ、明日も頑張ろう。
ありがとうございます。報酬を上げないと、今の日本の労働人口だと便利なサービスの継続は難しくなるんでしょうね。価格上昇と言う形で自分達に跳ね返ってくるけれど、仕方ないですね…
頑張った対価に少しでも満足感が得られる様だと良いですね。🐑の様なブラックフライデー要員の数は、常に配送には確保されててほしい、そういう構成にする努力も必要ですね。やっぱり報酬ですかね・・。