「改めて野木亜紀子さんの凄さを実感」ラストマイル kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
改めて野木亜紀子さんの凄さを実感
野木亜紀子さん脚本の作品はいつも楽しみにしている。「アンナチュラル」「MIU404」も大好きなドラマだ。その世界観を引き継ぎ、あのキャラたちも登場する映画となると期待が高まってしまう。
巨大通販サイトから発送した商品が爆発するテロが発生するという設定。その巨大通販サイトがアメリカ資本となるともうアレをイメージしてしまう。下請け業者への取引価格の引き下げや取引条件改善の圧力を継続的に行ってくる、あの大河の名を冠した通販サイト。配送業者もその圧力に苦しんでいる会社の一つ。だから、あのロジスティクスセンターと羊急便のやりとりがとてもリアル。あんなやりとりが全国で日常的に行われているんじゃないかと思ってしまう(実際行われている気がする)。とても嫌なものを見ている気分だった。
でも、あのセンターで働いている社員も、所詮は使われる側でしかない。稼働率を下げないこと、そして会社に利益を上げ続けることを「お客様の役に立つこと」と思い込まされてこき使われる。そんなことを改めて問題提起する。そんな脚本だった。でも、そこには人間性が介在しないわけじゃなく、実際は顧客の役に立ち、顧客が満足する姿を最前線で目の当たりにする人達の尊さを描いていて、野木亜紀子さんの脚本やっぱりスゲーな!と心の中でスタンディングオベーションが鳴り響いていた。
でも、これだけじゃなかった。捜査にあたる刑事たちとして「MIU404」の連中は登場させやすい。前半の捜査でちょっとした気づきを与える彼らの活躍にニヤニヤした。じゃ、「アンナチュラル」はどう絡ませる?と思っていた。難しいんじゃないの?と。それが最後に、犯人の行動の真意が明らかになる過程で、「アンナチュラル」のUDIラボの面々が活躍する流れが素晴らしかった。しかも犯人が爆弾テロを行う上での優しさ(ポリシー?)が明らかになる展開も。
そして、爆弾処理で前半の伏線も回収されてスッキリさせてもらった。サービスてんこ盛りの脚本じゃないか。いやー、野木亜紀子さんの脚本はやはり素晴らしい。期待していた中でこれだけ面白いと思ってしまうのだから。その凄さを再確認させてもらった映画だった。あのテレビドラマ2つを観たことない人にしたら面白みにかけるのかもしれない。それも仕方ない。本作の立ち位置は、あくまでファン向けの映画なんだから。