「細部までこだわりが感じられた本寸法のエンタメ作品」ラストマイル 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
細部までこだわりが感じられた本寸法のエンタメ作品
監督・塚原あゆ子、脚本・野木亜紀子のタッグでTBSで制作されたドラマ、「アンナチュラル」と「MIU404」と同一世界線で繰り広げられるサスペンスでした。Amazonを模したアメリカ資本の超大手ショッピングサイト”DAILY FAST”社を舞台に、宅配荷物に仕掛けられた爆弾が次々と爆発し、それを一体誰が仕掛けたのかを探っていくサスペンスでした。予告編を観た限り、DAILY FASTに勤務する舟渡エレナ(満島ひかり)の様子から、Amazon的な搾取&独占システムを100%礼賛する胸糞悪い作品だとばかり思っていましたが、全くそんなことはなく、むしろそうしたAmazon的構造をきちんと描きつつ、フェアなスタイルで謎の解明を進めていく本寸法のサスペンス的な面白さもあり、非常に楽しめる一作でした。
満島ひかりと岡田将生という2人の主演に加えて、「アンナチュラル」と「MIU404」の出演者たちも登場し、キャストも豪華絢爛。元々ドラマ自体は観ていませんでしたが、本作に合わせて配信で観たら、こちらはこちらでとても楽しい作品でした。特に「MIU404」の綾野剛は、「地面師たち」で披露した不気味な役柄とは全く異なり、野木亜紀子脚本の「カラオケ行こ!」で魅せたユーモアたっぷりかつハイテンションなキャラクターで、本作的には脇ではありましあが、作品全体を明るく楽しくしていたように感じました。
また、ストーリー本体とは直接関係のない部分も上手に創りこまれていました。米津玄師が唄う主題歌が「がらくた」という題名で、Amazonはじめ通販サイトで売ってるものの大半が「がらくた」なんじゃないかと言ってる気もしたし、最後の爆弾から被害を防いだのが、倒産した日本の電機メーカー”HINOMOTO”=”日の本”の洗濯機だったりと、音楽から小道具に至るまで非常に良く考えられたお話になっていました。
今月は「ツイスターズ」や「フォールガイ」など、ハリウッドの本寸法エンタメ作品が面白かったですが、日本の本寸法エンタメ作品である本作も非常に面白く、幸せな8月でした!!
そんな訳で、本作の評価は★4とします。