「悪くはないけど、期待した浦野ではなかった…」スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはないけど、期待した浦野ではなかった…
「スマホを落としただけなのに」シリーズ第3弾。前作から早6年、ついに最終章ということで、ほどほどに期待しつつ公開初日に鑑賞して来ました。
ストーリーは、前作で韓国に逃亡したシリアルキラー・浦野が、韓国の反政府組織ムグンファから日韓首脳会談の阻止と韓国大統領暗殺を依頼され、持ち前のハッキングスキルでサイバーテロを仕掛けるが、その前に内閣官房サイバーセキュリティ室に異動となった加賀谷がたちはだかるというもの。
内容をほぼ忘れかけていた過去作を前日に一気見して、準備万端で臨んだおかげですんなりと作品世界に入ることができました。1作目から続く浦野と加賀谷の因縁の最終バトルを見届けたという満足感が得られ、鑑賞してよかったと思えます。ただ、前作から地続きの作品なので、シリーズファンにはうれしい反面、初見で理解するのは、ちょっとつらいかもしれません。
今回は韓国の反政府組織との繋がりで描き、日韓首脳会談阻止を目論むというスケールの広がりを感じさせます。序盤でのJアラートの遠隔操作の手際のよさ、それによってもたらされる危機がなかなかスリリングで小気味いいです。現実に起こせそうな社会不安を煽るとともに、相手を翻弄する浦野らしい手口を強く印象付け、この先の展開を期待させます。
それなのに、そこから浦野とお目付け&世話係のスミンの関係性を中心に描き、なかなかテンポが上がりません。スミンの美しさ、浦野に惹かれていく感じは決して悪くはないのですが、彼女の存在が浦野の負の魅力を著しく減じてしまっているのが残念です。この段階で本作の落としどころの方向性が見えてしまい、ちょっと落胆してしまいます。ストーリーが悪いというよりは、期待した浦野像ではないという残念感です。彼にはとことんイカれまくって最後も華々しく散ってほしかったです。それでも、浦野のバックボーンを描き、同情的に描いたことで、浦野の人間性はしっかり深掘りできていたと思います。
一方で、首脳会談の妨害に大量のドローンを投入するアイデア自体はおもしろいです。それを無自覚の第三者が操作している点も、ネットの先にある現実に思いを巡らせることのない現代の風潮への警鐘のようで興味深いです。ただ、これを予告で見せたのはもったいないです。他にも、全体的にミスリードがちょっとわかりやすく、二転三転する展開に前作までのキレがないように感じます。瀬戸千春のワイヤレスイヤホンにしても、加賀谷妻の動向にしても、ちょっと雑に感じてしまいます。また、浦野の恐怖を感じている麻美がいまだに黒髪ロングなのも解せません。兵頭にしても、高度なハッキングスキルを備えた公安のはずなのに、最も警戒すべき相手に気を許してスマホをハッキングされるわ、信用できない相手の銃口に背を向けるわで、もはや前作の兵頭と同一人物とは思えないポンコツぶりに目を覆いたくなります。
こんな感じで、期待とは異なるテイストに肩透かしを食らいながらも、物語の決着を見届けたという満足感は得られる本作。シリーズファンなら観ても損はないと思います。ていうか、予告がいちばんのミスリードで、完全にやられました。
主演は成田凌さんで、浦野の人間性を感じさせる演技が好印象です。脇を固めるのは、千葉雄大さん、クォン・ウンビさん、大谷亮平さん、井浦新さん、白石麻衣さん、佐野史郎さん、真飛聖さん、髙石あかりさん、田中圭さん、原田泰造さんら。中でも、韓国シーンに出演された、成田さん、大谷さん、佐野さんらの流暢な韓国語がすばらしかったです。