ぼくが生きてる、ふたつの世界のレビュー・感想・評価
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自然体
悩んで育った自身の経験を文章にする事で、
自分を客観視する、
その姿勢が自然体だ。
そんな気がした。
美談でもない、
恨みでもない、
僻みでもない、
現実を現実として受け入れ、
そして寄り添うことが、身についている。
それはきっと聾者の両親を持つ五十嵐大の、
差別を受け、両親への不満に悩み、苦しみ
(どうして自分の親だけ、耳が聞こえないんだ!!)
そんな苦悩や怒りを乗り越えた先にある境地、
受け入れること、手伝うこと、
そして時にそれは自分を支えてもくれる。
だから主人公は、聾者の世界に居場所を見つけ、
時に寄り添い、
時に安らぎを見つけ、
障がい者を大きな包容力で受け止める。
「ぼくの生きてる、ふたつの世界」
聾者の世界にも、自分がいる、
健常者の大は、
余計なお世話・・・と、言われることもある。
しかし時には、聾者との橋渡しの役割も果たす。
聾者に出来ること、そして出来ないこと、
そこを補えばいい、
受け入れればいい、
それを主人公は自然に身につけている。
自然に受け入れている。
それは私たちにとっても必要なこと、
人間の一人として、
「お手伝いすることは、ありませんか?」
自然に言える事、
そして支える手を差し出す事、
主人公が苦悩し受け入れた姿がこそが、
「自然体」なのではないでしょうか?
それが「ふたつの世界」をひとつにして、
より豊かにする。
大ちゃんが成長する過程を演じた4人の子役たち、
3ヶ月位の赤ちゃん、
ハイハイ、伝い歩きをする1歳位、
小学生の大ちゃん、
中学生の大ちゃん、
みんな吉沢亮似のイケ面だったね。
5人で演じた事、
そこに真実味が色濃く出ていた。
私の知らない世界
聴覚に障害がある方を描いた内容であることのみの事前確認で鑑賞。
ストーリー的には、両親に聴覚障害があり、その間に生まれた1人息子の誕生から自立までを描いたもの。
自分の人生では関わったことのない内容であったため、こういう大変さがあるんだなと、1つ1つの出来事を見ていた。
全体として雰囲気は重めで、辛いことやうまくいかないことが続いていくような内容。
物語を楽しむというよりは、ドキュメンタリーを視聴するといったような感覚。
主に子供想いの母と思春期の息子に焦点があてて描かれている。常に息子のことを1番に考える母と、まわりからの冷たい視線を感じて不満が積もる息子。息子が社会人になったあたりを境に、徐々に母の愛を実感し、また両親から教えてもらった手話を活かして社会とのつながりを持つようになる。
ハラハラドキドキや考察をするのが楽しいタイプの映画ではないが、聴覚障害の世界とそこに住む家族の愛情をみることができた。
障がいは可哀想ではない
障害者家族における親子関係の脆さと修復のドラマを通じて伝えたかったこと
1 耳の聞こえない両親を持つ子が穏やかな心境に達するまでの軌跡を通じて、社会生活や人間関係のあり方を描く。
2 田舎で耳の聞こえない両親及び健常者だけど伝法な祖父母と暮らす主人公。彼は、ある日友だちから母の喋り方が普通ではないことを指摘された。彼は恥ずかしいという感情から母
や手話を避け、意思疎通も控えるようになる。そして、一方的な被害者意識を持つてしまい、あてもなく家を出て上京する。そして・・・。
3 主人公は、上京前日に母と出掛け人前でも自然と手話で会話し笑い会う。そこで彼はようやく気付く。普通に接することが大事だと。
4 本作では、一つの障害者家族の実話を通して、障害者を特別視することのない意識と気付きのみならず、健常者と同じように当たり前に生活できる社会の姿が大事であることが示された。そのための課題として、障害の状態に応じ聾唖教育など適時適切な教育の付与や職務経験や集まりの場など社会から孤立しない取り組みが必要であることも示された。劇中において、主人公の母親が親の無理解から適切な教育を受けられず、置かれてきた境遇は余りにも悲しく、東京で知り合った手話サークルのメンバーは生き生きしていた姿から明らかであった。
5 監督は、重めのテーマを含んだ個別ドラマを説教臭くなることなく、巧みな編集でサラリとまとめあげた。主人公の吉沢は好演。
観に行って良かった!
両親とも耳が聞こえないという青年。 自宅では手話、外では口と耳で会...
両親とも耳が聞こえないという青年。
自宅では手話、外では口と耳で会話。
周囲から特別扱いされることもあり、違和感も抱きつつ、大人になってゆく様子。
母は一途に息子思い、決して𠮟らず応援してばかり。
大人になって、ある時ふっと親の有難さに気づく息子、
静かに丁寧に描かれていました。
時代や地域の特徴も、一目でわかる隙の無さ、
(ゲーム機やブラウン管、語尾けさいん、仕送りに油麩や海藻)
感心しました。
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忍足亜希子さん(母親役)、だいぶん前に演劇の舞台で観させていただいたことがありました。
"嵐になるまで待って" 2002年、サンシャイン劇場、だったかな…。
その際も、舞台上での手話には圧倒されましたが
変わらないお姿、しみじみ感じます。
耳聞こえない者同士の子供なんてとんでもねえって、じいちゃんとばあちゃんは大反対したの。そんでも明子は産んだの。あんたを。
最後の最後、僕は、母の後ろ姿を見つめながらの大とまさに同じ感情で心がいっぱいになった。障碍を持った両親のもとで生まれ、育てられた大が、どこかひねくれてしまうのも分かる。親ガチャにハズレてしまったようなものだもの。だけど、いつか親の、特に母の深い深い愛情に気づくときがある。見返りを求めない無償の愛に。そしてその時は突然なのだ。幼い頃からいままでのいくつもの母の姿が脳裏に鮮やかによみがえり、それまでの自分の感情や行いがどれほど親を傷つけていたか、そしてそれでも親が自分を愛してくれていたか、ほんと、すべて一瞬で理解し、悟る。だから大は、ああなってしまう。そりゃああなるさ。吉沢亮が、そのほとばしる感情を見事に体現してくれたおかげで、こっちも感情がシンクロできた。
それにもまして、母親役の忍足亜希子の演技が素晴らしかった。聾者であることに甘えず世の中に寄りかかろうとせず、自分のできる生き方を胸張って、恥じることなく、そして朗らかに過ごす人生に、大きな拍手を送りたい。
それから、「仕事っていうのは、実力より高めがくるから。でもね、それはチャンスだから逃げちゃダメ」ってタモリの名言を、俺っていいこと言うだろ?的に得意げに話すユースケ・サンタマリアが憎めない。そのくせあとで、、、いやそれはまあいいか。
コーダの人生
母は強し
■あらすじ
東北の港町、耳の聞こえない両親のもと育てられた五十嵐大。
幼いころから、母親の通訳をし、手話も我流で少しずつ覚える。
しかし、成長するとともに、周りから特別視されることに違和感、戸惑い、
苛立ちを感じる。そして反抗期を迎え、母親の明るさすら、
うっとおしいと感じるようになる。
二十歳のときに逃げるように上京、一人暮らしを始めるが・・・
■レビュー
母親の強さ、愛情の深さに、感動。
思春期の反抗的な息子の態度であれ、すべてを受け止める。
そして息子を信じ、寄り添う。
20万円もする補聴器を買ったのも「大ちゃんの声が聴ける」って。。。
いや、聞こえてないじゃん!と笑いたくなった。
父親も息子の上京に背中を押すところに感動。
母親とのなれそめ、駆け落ちエピソードを話す姿は、
男同士ならではか。
ばくち打ちの祖父、そして毎日お経を唱える祖母にとっては、
孫の大が唯一の話し相手だったのかもしれない。。。
ラストの母親との電車のシーン、そして電車を降りたホームで母親から
「手話で話してくれてありがとう」という言葉に大が泣き崩れたシーンは
ぐっときた。
主人公の大を演じた吉沢亮さんも素晴らしかったが、
母親役の忍足亜希子さんの素敵な笑顔、前向きな姿勢に感動。
現実
私の両親は健常者だ。
だから、この主人公や原作者の気持ちを本当に理解することはできない。
私には想像だにできない多様な困難や苦悩があったことだろう。
でも、だからと言って、それをだらだらと垂れ流されてシンパシーを感じるほど、
私は善良ではない。
現実を離れてフィクションの世界を堪能したいのに、
ダメ息子を想起させられるシーンを延々と見せつけられる。
ウンザリだよ。
健常者だって多かれ少なかれ苦悩し乗り越えようともがいている。
そんなものは見せていただかなくても十分認識している。
障害者の子供だから許されると甘い気持ちなら止めてもらいたい。
一方で、障害の有無に関わらず、親の気持ちは痛いほど分かる。
そんなちっぽけなことでも嬉しいんだよね、と目頭が熱くなった。
とにかく前半で暗澹たる気持ちになってしまった。
ラスト近くでほんの少し盛り返したが、遅きに失した。
咽び泣くところでした。
まず驚いたのは、
子役の子が吉沢亮さんの子ども時代か
と思わせる顔のシンクロ率のおかげで
五十嵐大と言うキャラクターの人生を
隣でちゃんと観てたような気になれました。
そのおかげでラスト前の
コーダとして生まれた事で逆に
耳が聞こえる両親から生まれた子より
たくさんはは親と喋ってたんだなと思わせる所で
危うく映画館で咽び泣くところでした。
ろうの両親の子供として生まれた映画に
「コーダ あいのうた」や「エール!」があって
耳が聞こえない両親の対比で歌手になる夢と言う設定を
用いたと思うのだけど、
耳が聞こえると聞こえない人生だけでもう対比は充分に
成り立っているから、
大ちゃんはこんな両親の子に生まれたくなかったと言うけど、人生においては両親やろうの方と接してる時の方が穏やかで生き生きしてるように思えました。
中学時代から30代までを演じた吉沢亮さんは素晴らしいし、出て来ただけで華があるな!と思ったけど、
あの子役の子が吉沢さんの子ども時代を演じた事が
この作品の解像度をスゴくあげてくれたように思いました。
多くの人に觀てほしい映画
親子の関係が真に迫っていた
冒頭の3分くらいで、
これは覚悟して見ないと駄目だと思い、身を乗り出して鑑賞しました。
モノローグとか、テロップとか安直に説明を始めていく最近の日本映画だらけの中で、どんどん話を進めて観客を引き込んで行く演出に感服です。
吉沢くんも良かったですけど、わたしは両親の2人、特にお母さん役の忍足さんの演技に感動しました。補聴器買って喜んだり、吉沢くんと時には衝突したり、それでも笑顔で前向きで楽しそうなお母さん、なんと言えばいいのかわかりませんが「強い」でいいのか、とても良かったです。
最後、三浦友和さんの辺りから、パスタ、ローカル線、駅、サイレント、このあたりの10分くらい、泣かすような演出ではないのですが落涙しておりました。わたしの場合、母はわたしが22の時に死んでしまったので、吉沢くんと忍足さんのような、2人で外食した記憶がありません。楽しそうな食事シーン、メニューの選び方から羨ましくなりました。
作品では、もちろん、障害がある方々の生き方や健常者との関わり方なども大きなテーマになっています。でも、わたしとしては「家族みんなの愛」の方に感動しました。
今年のベストワンでいいんじゃないですか?。呉監督の作品は全部観てますけど、「そこのみにて」より好きです。
でも、吉沢くん、8年も帰らないのは、気持ちはわかるけどそりゃないよ。
でんでん、久々に怖かった。迫力満点、もんもんはリアルすぎる。
5人で飲むシーン、出来ることを助けてはいけないは、リアル社会では難しいと再認識。
いいストーリーだけどもったいない!
ようやく観る事ができた作品。
コーダがテーマだが、色々考えさせられた。よくできた作品。
ただ、脚本やテーマはもう少しコーダにスポットライトをあてても良かった。
大の成長記かと思うところもあった。
せっかく吉沢亮を起用しただけにもったいなさも感じる。
いい作品、テーマだけにもったいない。
親が恥ずかしかった十代だった全ての人へ
ろう者の両親を持つ聴者の一人息子、いわゆるCODA (Child Of Deaf Adult : コーダ)の少年が青年になるまでの成長物語です。両親の耳と口になる少年に掛けられる周囲からの「えらいね」「頑張るんだよ」という励ましが彼にとっては抑圧の積み重ねである事が非常に細やかに描かれます。
「こんな家に生まれて来たくなかったよ」
という親にとって最も辛い言葉を投げかけられたお母さんの気持ちは、この歳になると痛切に響きました。
でも、これは別に CODA の物語ではないのだと言う事が徐々に分かって来ます。自分が中学生の頃、親と一緒に街を歩いている姿を同級生に観られる事はとても恥ずかしかったのを覚えています。親は、そんな思春期の子供の気持ちは理解しつつも少し寂しかったのではないかなと思うのです。そんな普遍的な「申し訳なかったな」の思いが本作の終盤を支えます。
また、本作では現実のろう者である忍足亜希子さんがお母さんを演じています。このお母さんがとてもよかった。手話の動きが滑らかなのは勿論ですが、発話はうまく出来ないが発声は出来るろう者の声が(当然ですが)本当にリアルでした。その手話と僅かな声にお母さんの思いが乗り移っていました。
いい映画だった
観てよかった。ドーンと来た。若い監督たちの作品を連続して観てたけど、ベテランと言ってはなんだけど、呉美保監督の長編映画のキャリアだからできる105分の勝負を見せてもらった感じ。
まったく前情報なしで観たので冒頭からどこに飛んでく話かまったくわからず、かと言って音楽もほとんど鳴らないし、とある家族(ただしコーダの家庭)が映し出されて、人が成長し、人が亡くなったり、倒れたり、そこはドラマの外にあって淡々と時間は進む。人生のスケッチ。そして、これはコーダだからどうのこうのでなく、ただの地方に生まれ、地方に暮らすただの家庭の普遍的なスケッチを追いかけているうちに(やたらイケメンの子供の成長がイケメン繋がりで凄いなとか思いながら)、しばらく映らなかった母が東京で暮らす青年のもとで電話越しに声にならない声で息子の名を呼ぶのを聞いた時に泣き、ラスト前後に至ってはボロボロになって声が出るのを必死に抑えて泣いていた。卑怯である。忍足亜希子演ずる母親のああいう顔を僕らは見たことがあるのだと思う。実際の世界で。妙なドラマではなく、ただの生活のすみっこで、相手にはなんでもないのにこちらが感極まって、想いが浮かび上がってしまうとき、ただの相手の無垢な顔、普通の後ろ姿にいろんなものをのっけてしまう。あんな経験きっとある。そのアンチドラマな生活の本当のドラマをすっと描きだして見せてくれたこの作品に、ああ、映画を観たな、と思った。よかった。
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