「無償の愛」ぼくが生きてる、ふたつの世界 Noriさんの映画レビュー(感想・評価)
無償の愛
CODA、他の映画でメジャーになったから、少しは一般の人にも浸透してはいるんだろうけど。あのとき少し手話やろうかなと思ったが、時間を捻出して学ぶってなかなかどうしてできない。そして、私自身は聾者との接点を得ることのないまま、時は流れる。
お母さん役の忍足さん、もうアラフィフなのか。実生活では聴者の俳優さんと家庭を築いている。出会いはゲスト出演した舞台で、旦那さんはそこから手話を学び始めたとか。興味を持つ、もっとコミュニケーションをとりたい、っていうモチベーションの源泉は大事だよなぁ。その夫の兄が横浜ベイスターズの三浦大輔とか、一生懸命に努力ができるって、血筋や環境によるところが大いにあるな、と思った。
CODAもまた環境によって規定されるところが大きい。本作のように、20世紀の田舎(宮城県の沿岸地域)ではまだ周囲の理解も乏しく、経済的にも決して恵まれているとはいえない状況下で思春期を迎え。聾者の母を疎ましく思ったり、当たってしまうことがあるのも、未成熟な若者としては当然なのかな、と思う。お母さんの気持ちを思うと、凄く心が苦しくなるけれど、聾者・聴者に関わらず、多くの親が子の反発を儀礼として通過していくんだよな。振り返れば自分自身も親とぶつかっていたなと思い当たり、懺悔の念にかられる。
何も見出せないまま成人し、上京して。たまたま縁のあった居場所を見つけ働いて。何とか人生を軌道に乗せていく。人はそれぞれにあった居場所さえ見つけられれば、生きていくことができるし、何がしたいか分からなくても、大抵は何とかなるのかなと思う。そして、反発していた家族との間で培った手話が、東京での新たな絆を育んでいく。経験してきたことが、どこでどうプラスに働くかって分からないもんだよな。
時を経て、再び母と向き合い。母は変わらず愛情を注いでくれている。こんな母(両親)ばかりではないのは承知しているが、自身の親から受けた愛情について改めて思いを致した。