「耳聞こえない者同士の子供なんてとんでもねえって、じいちゃんとばあちゃんは大反対したの。そんでも明子は産んだの。あんたを。」ぼくが生きてる、ふたつの世界 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
耳聞こえない者同士の子供なんてとんでもねえって、じいちゃんとばあちゃんは大反対したの。そんでも明子は産んだの。あんたを。
最後の最後、僕は、母の後ろ姿を見つめながらの大とまさに同じ感情で心がいっぱいになった。障碍を持った両親のもとで生まれ、育てられた大が、どこかひねくれてしまうのも分かる。親ガチャにハズレてしまったようなものだもの。だけど、いつか親の、特に母の深い深い愛情に気づくときがある。見返りを求めない無償の愛に。そしてその時は突然なのだ。幼い頃からいままでのいくつもの母の姿が脳裏に鮮やかによみがえり、それまでの自分の感情や行いがどれほど親を傷つけていたか、そしてそれでも親が自分を愛してくれていたか、ほんと、すべて一瞬で理解し、悟る。だから大は、ああなってしまう。そりゃああなるさ。吉沢亮が、そのほとばしる感情を見事に体現してくれたおかげで、こっちも感情がシンクロできた。
それにもまして、母親役の忍足亜希子の演技が素晴らしかった。聾者であることに甘えず世の中に寄りかかろうとせず、自分のできる生き方を胸張って、恥じることなく、そして朗らかに過ごす人生に、大きな拍手を送りたい。
それから、「仕事っていうのは、実力より高めがくるから。でもね、それはチャンスだから逃げちゃダメ」ってタモリの名言を、俺っていいこと言うだろ?的に得意げに話すユースケ・サンタマリアが憎めない。そのくせあとで、、、いやそれはまあいいか。
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