「親が恥ずかしかった十代だった全ての人へ」ぼくが生きてる、ふたつの世界 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
親が恥ずかしかった十代だった全ての人へ
ろう者の両親を持つ聴者の一人息子、いわゆるCODA (Child Of Deaf Adult : コーダ)の少年が青年になるまでの成長物語です。両親の耳と口になる少年に掛けられる周囲からの「えらいね」「頑張るんだよ」という励ましが彼にとっては抑圧の積み重ねである事が非常に細やかに描かれます。
「こんな家に生まれて来たくなかったよ」
という親にとって最も辛い言葉を投げかけられたお母さんの気持ちは、この歳になると痛切に響きました。
でも、これは別に CODA の物語ではないのだと言う事が徐々に分かって来ます。自分が中学生の頃、親と一緒に街を歩いている姿を同級生に観られる事はとても恥ずかしかったのを覚えています。親は、そんな思春期の子供の気持ちは理解しつつも少し寂しかったのではないかなと思うのです。そんな普遍的な「申し訳なかったな」の思いが本作の終盤を支えます。
また、本作では現実のろう者である忍足亜希子さんがお母さんを演じています。このお母さんがとてもよかった。手話の動きが滑らかなのは勿論ですが、発話はうまく出来ないが発声は出来るろう者の声が(当然ですが)本当にリアルでした。その手話と僅かな声にお母さんの思いが乗り移っていました。
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