劇場公開日 2024年9月20日

「重ね合わせる。」ぼくが生きてる、ふたつの世界 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0重ね合わせる。

2024年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

半月ほど前、新宿ピカデリー来訪の際に観たトレーラーに出演されている女性。気になって帰宅後にすぐ調べたところ、忍足亜希子さんという俳優さんと知りました。フィルモグラフィーに『黄泉がえり』があり早速配信で鑑賞。この映画の感想はまぁいいとして、、呉美保監督が撮る忍足さんを楽しみに本作の劇場鑑賞を決め、公開初日の新宿ピカデリーへリピーター割引を使って参戦です。平日午前中の回ですが、当館3番目のキャパであるスクリーン3はかなり多くの客入りです。
そもそも、私が忍足さんに目を惹かれたのはろう者であるからではなく、純粋に彼女の演技力にあります。たった一度だけ見た本作のトレーラーの忍足さんに、自分の亡母を重ね合わせてしまい涙腺を刺激されたのです。と言うことで、鑑賞前に不安が一つ「感極まって、嗚咽を漏らしたらどうしよう」だったところ(久しぶりに)隣の席が埋まり、座られたのが自分よりも年長の女性。。ちなみにこの方、作品の前半で不意にバッグ内のスマホをチェックされたため、別の不安にもかられたわけですが、、その後は集中してスクリーンだけをご覧になっていました。危ねぇ。。。スマホやめてね。
で、本編観て気づいた当たり前のことですが、本作の主演は吉沢亮さん。と言うことで、(原作者であり)主役である大さんが赤ん坊時代以外、自意識が生まれだせばもう息子・大を通して母・明子(忍足)を見ていく構図になっていくわけです。そのため、泣くどころかむしろ「あああああ…」と頭を抱えたくなるシーンの連続。そうです、大に自分を重ね合わせて見て感じる「亡母に対する悔恨の念」。呉監督、やめてくださいよ、最高すぎるじゃないですか。。なお、中学生時代から大役に吉沢さんを充てるのはちょっと無理を感じましたが、やはり一番ややこしい年頃だからこそ、吉沢さんにやってもらうしかないわけでやむを得ないですね。吉沢さんもよく頑張りました。
そしてまた、忍足さん以外にも多くのろう者の俳優さんが出演されている本作ですが、どの方も本当に素敵です。息子の背中を押す父・陽介役の今井彰人さんに感動させてもらい、また東京で出会う智子役・河合祐三子さん、彩月役・長井恵里さん等にはろう者「当事者」としての説得力がある台詞や反応に改めて、如何に聴者がろう者を理解できていないかを何なら、めちゃくちゃ優しく教えていただけます。
そして終盤に起きた「あること」をきっかけに実家へ帰る大。久しぶりに母・明子と二人きりになり、母の横顔を見つめる大・・・からのシーンはもうご自分で観てください。その演出込みで劇場で観ないと絶対ダメですよ。勿論、スマホは絶対NGです!

TWDera